リベラルアーツという地図を広げよう

グローバル・リベラルアーツ学部 講師 高橋 麻奈

新型コロナウイルスが、世界の小さな島国にもたらした危機
2020年4月、サイクロン・ハロルドが南太平洋の島国を襲い、甚大な被害をもたらしました。新型コロナウイルスが世界的に感染拡大していた頃であったため、外国から緊急物資の輸送が遅れ、支援物資が届かないという事態が起こりました。さらに、多くの国が依存していた輸入品の輸送が滞りました。元々子どもたちの栄養失調が深刻であったバヌアツでは、サイクロンの影響で状況がさらに悪化。地元のNGO 団体が、子どもたちに高カロリービスケットの配布などの援助をしていましたが、新型コロナウイルスの影響によって、その材料が外国から届かなくなりました。ソロモン諸島の首都・ホニアラでは、2000年代前半に紛争が終了してから急速な復興と都市化が進み、生活スタイルが変化していく中で、都市部の多くの人々が輸入食品に頼っていましたが、それらも入手が困難になり、価格が高騰しました。
太平洋の多くの島国は、国連が定めた「小島嶼開発途上国(Small Island Developing States)」に認定されています。これは、小さな島で構成される開発途上国で、地理的な特徴により、グローバルな経済的・環境的・社会的変化に対して、極端に脆弱である国家のカテゴリーです。大きな海に囲まれる太平洋小島嶼開発途上国は、遠隔性・海洋性・狭小性などの特徴から、世界の自然災害などの環境的変化や、経済的変化の影響を受けやすくなります。

リベラルアーツという世界地図を広げよう
新型コロナウイルスは世界を大きく変えてしまいました。しかし、これまで考えてもこなかったことが起こるというのが世界の現実です。リベラルアーツは、そんな世界を歩いていくための地図のようなものだと私は思います。GLA 学部で学ぶGlobal Liberal Arts for Peaceは、平和というゴールに向かってどんな道筋があるのかという全体像が見えるようになるための、そして、その道を進んでいくためには自分一人の力だけではなく、さまざまな人の多様な能力が必要だということに気づけるようになるための学びです。世界で仕事をするにはこうしたリベラルアーツの教養力がなければ、スムーズに仕事を進めることはできません。人としての柔軟性を身につけ、多様なものの見方ができるようになる力を育てるのがGLA 学部の教育です。

イマジネーションとクリエイティビティを養う
海外スタディ・ツアーやSUNYへの留学、そして神田外語大学での学びで培ってもらいたいのは二つの「そうぞう力」です。一つはイマジネーションの想像力。平和とは何か、人はどんなときに平和だと感じるのかなど、地球の反対側で暮らす人々のことやすぐ身近にいる人のことに思いを巡らすことができる力です。もう一つはクリエイティビティの創造力。世界をどのように変えたいのか、どうやって変えていくのかというアイデアを生み出す力です。どのような平和をめざすのか、どうやって実現するのか。そこにははっきりとしたゴールも、決められた道もありません。自分なりの地図を手に入れて、どの道をどのように進んでいくかを切り拓いていける力を手に入れること。それがリベラルアーツを学ぶ価値だと思います。
高橋 麻奈(たかはし まな)
埼玉県出身。専門は開発法学、ODA 政策、オセアニア地域研究。名古屋大学大学院国際開発研究科博士前期課程修了後(国際開発学修士)、日本IBM(株)、国際連合国際商取引法委員会(UNCITRAL)での勤務を経て、思い切って研究者の道に転身する。名古屋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(比較法学)。オーストラリア連邦議会特別研究員、オーストラリア国立大学客員研究員、名古屋大学男女共同参画センター特任助教を歴任。