ミャンマー旅から生まれた深い絆

(内山)昨年の夏に東海大学が所有している望星丸という船で、ロシアのウラジオストクに行くという研修航海がありました。この研修には北海道大学を含む、いくつかの日本の大学とロシアの大学が参加しており、その時に山下さんと出会いました。私は航海工学科に所属しているため、海外への航海を経験するために参加しました。船内での公用語は英語になっており、プレゼンテーションやディスカッションをする機会がありました。英語自体に苦手意識はなかったのですが、スピーキングはあまり得意ではないですね。

(山下)私は中学に入学した時点では英語を全く話せませんでした。アルファベットすら知らなかったくらいです。しかし、母の薦めで英語部に入り、英語スピーチの大会に参加するようになりました。中学、高校と先生方に猛特訓していただいた結果、高校時代に県の英語スピーチコンテストで2連覇するほど上達しました。大学に入学して、もっと自分の能力を伸ばしたいと思い研修航海に参加し、内山さんと出会いました。たまたま2人でミャンマーをバックパッカーとして旅することになったのですが、タイのバンコクからミャンマーのヤンゴンまで26時間かけて過酷な陸路移動をしたのは忘れられない思い出です。ハプニングやトラブルに数多く見舞われ、ハラハラしてばかりの旅でしたが、その分、絆も深まり、いつのまにか家族のような存在になりました。

限られた時間で、それぞれの強みを発揮

(内山)ミャンマーから日本に帰ってきた後、10月頭に初めてコンテストのことを知りました。ちょうどアジアの特産品を売り込めというテーマがあったので、すぐミャンマーのタナカが使えるなと思いました。準備期間が全くありませんでしたが、2人とも得意分野が違うので、それぞれ役割分担をして準備できたことが大きかったと思います。私は理系なので、タナカの木からどれだけ日焼け止めが生産できるか、木の半径・長さ・ミャンマーにある木の本数から導き出しました。ミャンマーの木の本数もわからなかったので、森林の面積から計算して弾き出したり、あとは、船舶での木の輸送コストなども計算しました。地道に必要なデータや資料を調べたり、計算したりということが得意ですね。

(山下)私は人と話をしたり、自分が知らない分野に詳しい人から情報を提供してもらったりと、交渉能力があるのかなと思います。例えば、北海道大学の薬学部では、化粧品に詳しい先生に市販の日焼け止めの成分に含まれる物質で、環境に悪い物質をタナカに代替することができるのか、といった専門的な相談に何度も乗っていただきました。さらに、遠心分離機を使ってタナカの抽出液を作らせていただいたりもしました。農学部の先生には、専門的な分野からアドバイスをいただいたり、日焼けサロンでの人体実験の被験者まで買って出ていただきました。タナカの費用は北海道大学の経済学部の先生に一緒に考えてもらいました。また、自分の大学だけでなく、九州大学や富山大学、ミャンマーのヤンゴン大学、石垣島にある国の研究機関、筑波大学実験植物園の元園長先生、化粧品メーカーなど、20を超える機関の方々に依頼し、プレゼンテーションを作りこむ上で必要となる論文、資料、原木、素材、情報、人脈などを提供していただきました。準備期間が1ヶ月しかなかったので本当に大変でしたね。

インパクトのある写真や説得力のあるデータで聴衆を魅了する

(内山)聞き手に説得力のあるプレゼンを見せるということにおいて、データは欠かせないと思います。実現可能性にフォーカスしていたので、実際に結果を見せて、説得力のあるプレゼンテーションにすることで、聞き手にも受け入れられ、楽しんでもらえるのかなと思います。そのためにも日焼けサロンでの人体実験は苦労しました。オーストラリア人の友人を含む4人の被験者で試したのですが、日焼けサロンと日光からの直接の紫外線は種類が違うので、反応の出方も違い、実は2回日焼けサロンに行きました。また実験結果が当初の想定と違い、もともと考えていたプレゼンテーションのシナリオを全て変えるといったこともあり、焦りました。

(山下)聞き手に面白いな、変わったことをやっているなと思ってもらえるような内容にはなったかと思います。しかし、日焼けサロンでの人体実験の結果が出たのが本番一週間前で、そこからスクリプトができたのが4日前、2人で練習できたのは本番前日のみでした。そういった状況もあって、質疑応答の対策ができなかったことが反省点です。あとは、単純な英語力不足だったと思います。いろんな方に手伝っていただいたにも関わらず、質疑応答でうまく対応できなかったのでかなり落ち込みました。それでも、本選進出という結果を、私たちよりも喜んでくださる方々が多かったのでありがたかったです。

第8回大会参加学生へのメッセージ

(内山)今回、多くの方々に手伝っていただいていたので、結果を残さないといけないというプレッシャーに押し潰されそうになりました。しかし、この思いがあったからこそ、結果を求めて、一生懸命に取り組むことができたので、それが本選進出に繋がったのだと思います。人前で、ましてや英語で発表なんてことは、全く経験したことがなく、自分自身、苦手なことをやっているという自覚はありました。それでも自分たちで決めたことに対して本気で取り組むということがすごく楽しかったです。参加を迷っている方がいるのなら、臆することなく、挑戦してほしいと思います。

(山下)コンテストに参加して、まわりの学生の方々を見て、もっと頑張らないといけないなと思いました。また、本選で納得のいく結果を残すことができなかったことに対し、非常に悔しい気持ちがありました。しかし、情報収集をする、実験結果をもとに発表内容を組み立てる、大勢の人の前で自分たちの想いのこもったプレゼンテーションを披露する。それができたことが本当に楽しかったです。皆さんにも勝敗に関係なく、コンテストに出場して、是非楽しんでもらいたいですね。