ベトナム人に寄り添った企業を目指して~日本で学ぶきっかけ~

私はベトナム出身で、英語は中学校から勉強を始めました。高校卒業後にベトナムの貿易大学に進学したのですが、将来について考えたときに貿易関係の職に就くのは違うなと思いました。ちょうど、そのときに日本法人のファストフード企業がベトナムで初めて店舗を開き、事業を展開するということだったので、その企業に入社しました。フィリピンで4ヶ月ほど研修をうけたのですが、その研修でのやり取りが全て英語だったので、その環境の中で、少しずつ英語が話せるようになりました。2年半、店舗のマネージャーとして、採用を担当しました。採用、人材育成の仕事をする中で、教育・人材業界に興味を持ちました。当時の上司が日本人で、教育・人材について勉強したいのであれば、日本で勉強した方がよいとアドバイスを受けたことが日本で学ぶきっかけとなりました。ベトナム人は言語の問題だけでなく、仕事をする上でのスキルが足りないといった問題も多いため、海外で自信を持って仕事に取り組める人が少ないです。だからこそ、私はベトナム人を対象とした言語とスキルを学べる会社を起業したいと思っています。そのためにも教養を身につけなければならないと思い、世界で通用する教養を学ぶことができる南山大学を選びました。

母国ベトナムの特産品を知ってもらいたいという強い思い

最初に先生からコンテストを紹介していただいた時は出場するか迷いました。しかし、テーマを見たときに、母国ベトナムの特産物であるボーケット(※1)を使ったプレゼンができると思い、すぐに出場を決めました。ベトナムの文化だけでなく、このサステナブル(※2)な商品を皆に紹介したいと強く思ったからです。そして、どこに売り込むかと考えたときに、私の大好きなフィンランドがとてもサステナブルで有名な国なので、相性がいいのではないかと思い、フィンランドに決めました。フィンランドを深く調べていくと、ボーケットの「焼いて使用する」「使用できるまでに時間がかかる」といった特徴も、フィンランドのサウナ文化や時間がゆっくりと流れている風土にマッチしていました。プレゼン資料を作る上では、ボーケットの情報を探しても、ベトナム特有なものなので、なかなか情報が見つからず苦労しました。そのため、ボーケットを販売しているベトナムの友達にアドバイスをもらったりと、周りの人にサポートしてもらうこともありました。

※1…ベトナムのサイカチというマメ科の植物。ベトナムでは昔から香りを良くし、サポニン成分を多く出すために表面を焼いて、煮出した液を使って洗髪する。プレゼンではサウナとの相性だけでなく、安価であることや環境への優しさなどをアピールし、森林の多いフィンランドへの売り込みをプレゼンした。
※2…良い社会と自然環境を保ち続けることを目指した取り組み。継続的な環境保全。

コンテストを通して学んだ“伝え方”の大切さ

決勝に進出することができたのも大学のプレゼンテーションの授業がとても生きたからだと思います。審査員の方々と話す機会があったのですが、その中で、ジェスチャーが良かったと言っていただきました。このジェスチャーについては、特に大学で磨かれました。これは先生から”No matter what you say, how you say it matters.”というアドバイスをもらったからです。つまり、コンテンツの伝え方が一番大事だということです。私はいつもコンテンツが一番重要だと思っていたのですが、ジェスチャーやアイコンタクトなど、初めて伝え方の大切さを学びました。またプレゼンの構成等についても授業内で学んでいたので、考える上で特に苦労はしませんでした。逆に反省点としては、質疑応答とフック(つかみ)が弱かったことです。質疑応答は対策があまり出来ておらず、緊張もあったので、うまく回答できませんでした。フックについてもあまり効果的なものが考えられませんでした。もともと私は10分間で多くの情報を伝えたいと思っていたので、イントロのフックを短くせざるを得なかったのが、原因だと思います。

勇気をもらう側から与える側へ

私は自信が持てないタイプの人間で、ベトナム人1人で大会に出ることに、かなり勇気が必要でした。しかし、第6回大会の最優秀賞を獲得したチームにベトナム人の方がおり、その方々のプレゼンを見て、凄く刺激や感銘を受けて、自分も同じようにプレゼンしたいと思い、頑張りました。結果として決勝戦に進出することができ、今年度、南山大学に入学してきたベトナム人の後輩が私のプレゼンを見て、プレコンに出場してみたいと思ってくれているようです。将来、私のプレゼンを見てくれた人に勇気を与えられたらいいなと思っていたので、それがとても嬉しいです。プレコンは自分のアイデアを皆に伝える絶好のチャンスだと思うので、是非みなさんには自信を持って参加してもらいたいです。