成長につながったそれぞれの留学経験

(由地)私は中学、高校生のときに何度か海外に行くこともありましたが、大学生になってからも奨学金をいただきながら海外研修に参加したり、ボルチモアにある大学に留学をしました。留学では楽しい思い出ばかりだけでなく、ネイティブの学生と比べると英語ができなかったり、文化面ではマイノリティになることもあり、そういったことも初めての経験で辛く感じることもありました。しかし、海外を見ることで、日本と比較していろいろな視点を勉強することができました。次はその視点を持って行動をする、学んだことを目の前に人に伝えられるようになりたいなと思っています。

(黒住)私はデンマークの大学に交換留学で行きました。留学先では、私たちの生きたい日本社会を作るためのヒントが北欧にあるのではないかと思って、留学先で出会った日本人4人で北欧について語るブログメディアを立ち上げました。取材したのは政治団体の青年部に所属している同世代のデンマーク人やデンマーク在住の日本人などです。デンマークと日本の社会や考え方の違いもそうですし、逆に共感できる部分や日本の良さを感じてもらったりと、時間をかけて語り合う機会を持つことができてよかったと思います。

(相川)私は新しい感覚や人と触れ合いたいと思っていたので、多様性のある街、バンクーバーに留学しました。英語を話せるようになるために、現地の学生と交流を深めることを意識しました。そうすると自然と寮の友達と交流を持て、ご飯や散歩に誘ってくれるようになりました。大学から課された文献などを読むこともすごく大事ですが、私はそれと同じくらい友達とのプライべートな時間や課外活動を大切にして、そこで日常会話やよく使うフレーズを身に付けました。留学先ではインフォグラフィック(※1)を用いて社会課題を分析し、発表(プレゼン)するMap The Systemというコンテストに出場したりしました。

※1 インフォグラフィック…情報やデータを視覚的に表現したい場面で用いる手法

プレゼンに深みをもたらした多面的な視点と細部へのこだわり

(由地)今回、ジェンダーがテーマだったので性別も男女で構成したいと思い、さらにいろいろな視点を持っている二人に声をかけました。このメンバーを選んだのは私の誇りでもあります。実際にメンバー間でジェンダー・イクオリティの定義やワードチョイスなど、細かいところまでこだわって議論を重ねました。また、もともとジェンダーに興味のなかった相川さんの視点があったからこそ、興味の強い自分とは違う立場にいる人がどう思うのか、どう伝わるかが大切なのだとわかりました。その結果、一人では考えつかなかったアイデアやクオリティにまですることができて良かったです。

(黒住)いろいろな視点が入るというのはグループならではのことで、本当に良かったなと思います。3人で一つの結論に達しないといけないので、本気で互いに意見をぶつけましたし、一つのプレゼンに向けてみんなでアイデアを出しました。それぞれの役割もあって、私はジェンダー全体の問題としてのゴール設定や学問の世界で言われていること、事例を挙げるなど、ジェンダー論を勉強したりワークショップに参加したからこその意見やアイデアを出せたと思います。ワークショップ「GenderRES Day」の原案を発案したのも私でした。

(相川)黒住さんの0→1のアイデアの生み出しがあったことが大きかったです。由地さんも本番を迎えるまでのタスクの洗い出しやスケジュール管理をしてくれましたし、互いの苦手な部分を補い合えたからこそ、グループで大きな目標を達成できたのだと思います。私はスライド作成を担当しましたが、いかに見やすく、その中で伝えたいメッセージを伝えるのかにこだわりました。例えば、背景色でメインで使ったのはオレンジ色ですが、実はSDGs「ジェンダー平等を実現しよう」のカラーと全く同じ配色にしています。そういった配色のバランスやフォントの与える印象にも注意しました。普段見過ごしてしまいがちな小さなポイントを細かく調べることで、細部から全体のクオリティを上げられたと思います。

優秀賞受賞へと導いたアイデアとクリアなプレゼン

(由地)聴衆にうまく伝えるために、古くからある性別役割分担を逆転させた劇を最初にいれたというのは良かったと思います。私たちはパーセプションギャップというのをキーワードにしていて、男性と女性が同じ状況を見ていても見え方や認識が違います。だからこそ立場が逆になると違う見方を体感することができます。そこで違和感を持てば、お互いに歩みよれるのではないかという考えのもと「GenderRES Day」ができました。ワークショップの内容自体も4つのステージがあって、それぞれ何をやるのかビジュアルで示したことがわかりやすさに繋がったのだと思います。

(黒住)もともと私が原案を考えたときは、女性には女性の役割、男性には男性の役割をわかりやすく与えるというものでした。しかし、男女の役割を逆転させ、体感したことがない役割を経験することで、違和感や新しい発見が多いのではないかということを3人で話し合い、先生にも意見を聞いて決めました。また私個人としては、愛称として使えるキャッチ―なタイトルをつけたいと思って、「GenderRES Day」という名前は時間をかけて考えました。このタイトルはすごく気に入っています。

(相川)審査員の方に直接言っていただいたのは、やはり役割の逆転というアイデアが面白い、かつ内容もクリアだったということでした。また、ワークショップの流れや、それを通じてどういうことを伝えたいか、という情報がパッと見えてくるような流れるプレゼンだったと。見せ方は、自分がスライド作って気をつけていた部分で、発表を補助するいい役割をしたのかなと思います。個人的にはプレゼンは内容ありきなので、内容そのものが詰まっていた部分が良かったのだと思います。二人が詰めてくれたおかげです。

コンテストを終えて

(由地)私は単独プレーが多くて、長期的にかつ真剣にグループでプロジェクトに取り組んだのは今回が初めてでした。二人が自分とは全然違う考えを持っていたので、自分一人ではできないことをグループではできるんだなということを痛感しました。また、本選に出場して、あの大きな舞台で発表するためには愛着や自信、情熱を持ってプレゼンできないといけないと思います。プレコンに出場するということは、それだけ自分で興味のあることを一つ掘り下げて考える、いい機会になると思うので、是非皆さんにも楽しんでやってもらいたいなと思います。

(黒住)私は英語を使う機会として留学はしていましたが、コンテストに出場するのは初めてで大きな挑戦でした。自分の考えを英語で段取りをつけて発表する、そのための準備をするということが、今回できるようになったことの一つだと思います。興味のあるものに対して思っていることや伝えたいことを、自分たちで構成して、多くの人に伝えられるという場面は滅多にないことだと思います。また、それを英語で発表することは、世界の誰に対しても自分の意見に誇りを持って伝えることができるということだと思うので、すごく貴重なことでもあると思います。興味のあるテーマであれば参加する意義があると思います。

(相川)あれだけ大きな舞台でプレゼンできる機会はなかなかなく、あの舞台でプレゼンをしたいという思いと、できたときの達成感は、自分の人生でも初めての感覚でした。また、チームのメンバーと一生懸命、切磋琢磨して内容を詰めていく過程は本当に充実したものでした。個人一人では達成できなかったことが、グループだと達成できるようになるということ学べたことは自分にとっての財産となりましたし、優秀賞を取った喜びを分かち合える仲間がいるというのはとても幸せなことだと思いました。皆さんもこのコンテストに出場して後悔はないと思います。