自然に育まれた幼少期と英語を肌で感じた中学時代

わたしの父は趣味で農作物を育てており、静岡県の実家の近くに大きな畑をもっています。小さい頃は週末になると畑へ行って野菜や果物を食べたり、カブトムシ捕りをしたりして過ごしていました。また、英語教育に熱心だった叔母にすすめられたことがきっかけで小学5年生のときに近所の英会話教室に通い始めました。通っているうちに英語を話すことが好きになり、中学生になってからも英語を楽しく身につけていきました。
中学2年生の終わり頃、学校からの案内でニュージーランドにある農場に1週間泊まる「ファームステイ研修」の募集があることを知り、大好きな自然と英語が掛け合わさった内容でしたので、わたしは迷わず手を挙げました。無事にニュージーランド行きが決まり、大自然の中、学んできた英語を駆使しながら、薪割りやホストファミリーの農作業を手伝いました。仕事の後には、蛍がいる洞窟に連れて行ってもらい、あの時見た美しい光景は忘れられません。
今思えば幼少期から中学時代までの経験が今の自分を形成しており、今回出場したプレゼンテーションコンテストに繋がっているのだと感じています。

プレコン挑戦のきっかけとなった偶然の出会い

その後、北海道大学農学部に進学し、土砂災害の研究室に所属して、地滑り災害に関する理論や対策の仕組みづくりを学んでいます。英会話サークルに所属することで英語も引き続き磨いてきました。プレコンのことは1年生の頃から知っていました。実はサークルの先輩に第7回大会でファイナリストになった山下愛子さんがいらっしゃり経験談をお聞きしていました。プレコンに興味は湧いていたのですが、山下さんの経験を聞けば聞くほど不安を感じてしまい、2~3年時は出場できませんでした。ただ、4年生になったときに「ここで出なかったら一生後悔する」と一念発起し、出場を決めました。
テーマ2を選んだ理由は、大学3年の春から実践していた「コンポスト」の経験を生かせると思ったからです。コンポストとは英語の“compost”からきており、家庭から出る生ごみなどの有機物を、微生物の働きを活用して発酵・分解させ堆肥を作ることです。大学生になって一人暮らしを始めると、生ごみを捨てることに対して抵抗を感じていました。実家の畑で、父が生ごみを捨てずに畑に撒いていたのを見ていたので、違和感があったのかもしれません。ネットで調べると簡単な器材を揃えるだけでコンポストを自宅でできることを知ったので始めることにしました。
第10回大会のテーマを見たとき「SDGs」や「自分たちができること」といったワードが目に入り、わたしが続けてきたコンポストを多くの人に提案してみようと思いました。

本選出場をつかみとった「百聞は一見に如かず」

プレコンにエントリーした際、対面でプレゼンテーションすることを目標にしていました。北海道から千葉へ移動し、多くの方に対面でプレゼンテーションすることで、少なからず達成感が得られると考えていたからです。ただ、今年も二次予選がオンライン開催となることが決まったため、ファイナリストになれなければすべて自分の部屋で完結してしまう。そう思ったため、二次予選に備え、さまざまな工夫をしました。見え方をよくするためにデスクライトをパソコンの後ろにもっていき、本を積み上げてパソコンの位置を高くして目線に気を配りました。また、マイクがちゃんと音を拾うか何度もテストするなど、減点されないよう自室での撮影環境を整備しました。そのため、本選進出の案内を受けたときは人目もはばからずガッツポーズしてしまいました。
プレゼンテーションの中身としては、実際に経験したことをそのまま提案している点が大きな特徴です。SDGs(持続可能な開発目標)の12個目の目標「つくる責任つかう責任」を背景に、コンポストを確信的に提案することができました。大きなプロジェクトを提案することは、内容が面白く且つ高い実現性があれば良いと思いますが、わたしは実際にやってみたことを等身大の経験で語ることが、何よりも説得力があって強いと考えていました。自宅でコンポストを行っている写真や、札幌市へ堆肥を寄付したときの写真を使うことで、リアリティをもたせたことが本選に進めたポイントだと思っています。

何かにチャレンジしたい人へ

わたしもプレコン出場を2年も躊躇してしまいましたが、今回チャレンジしたことで「後戻りできないラインを最初に超えること」が大切だと学びました。何かにチャレンジするとき「失敗したらどうしよう」という不安な気持ちが出てくると思いますが、その気持ちはいったん置いて、まずはチャレンジすると決めてしまってください。戻れない状況になれば、必死に考えるようになり、するとそれまで思ってもいなかったようなアイデアが出たりすることがあります。そうなればしめたもので、物事がどんどん進んでいくでしょう。そのラインを踏み越えることができれば、半分進んだことと同義ですので、不安な気持ちはいったん置いて、一歩踏み込んでみてください。
わたしは今後、研究所や大学の研究支援をする行政法人で業務にあたります。研究者のサポート役として、さまざまな研究を支え、社会に還元できる人間になりたいと思っています。これまでの経験が通じないことと多く出会うと思いますが、まずは踏み込んでみるという精神で、グローバルに社会貢献していきたいです。