学びを深めるため選んだ日本

(ナターシャ)私はインドネシアの出身で英語は小学校から学んでいましたが、授業以上に映画や音楽から学んだ部分が大きいと思います。日本への印象は仕事熱心な人が多い国。こういった日本人のライフスタイルは小さい頃に読んだ漫画で知り、深く印象に残っていました。そしていつしか「漫画で見た世界に自分も住んでみたい」と思うようになり、大学で専攻した環境分野を日本でさらに深めていくことを決めたのです。日本は著名な科学者やノーベル賞受賞者を数多く輩出していますし、日本以上の留学先は無いと思いました。私もこの国で研究を深めていくと同時に、日本人の良いところをたくさん吸収したいと思っています。
(スマイヤ)私もインドネシアの出身で小学校から英語の授業がありましたが、週に1回程度だったため、英会話学校に通い英語力を身につけました。大学では2人と同じく環境学を専攻し、卒業後は環境コンサルタント系の企業に就職しましたが、より学びを深めたいと思い、日本への留学を決めました。小さい頃から日本の漫画やアニメが好きで、もともと興味がありましたし、研究者へのサポートが手厚いことも知っていたので、大きな決断でしたが日本で学びたいという想いは止まりませんでした。
(ハナ)私の出身地モロッコでは、フランス語が第2言語のため、英語の授業はありましたが優先順位は低かったです。私個人としては、英語圏の映画やテレビ番組が好きだったので、それらを楽しんでいるうちに英語を身につけることができました。大学では環境学を専攻し、卒業を目前に控えた頃、卒業して働くか、研究を続けるかで悩んだ末に研究を深めることを決意しました。いくつかの国の奨学金制度に応募し、その中で合格したものが日本の制度でした。モロッコからはるかに遠い日本へ留学することは勇気が要ることでしたが、日本文化の魅力は以前から知っていましたし、やりたいこともできるためチャレンジすることを決めました。

コロナ禍でも消えない挑戦心

(ナターシャ)プレコンを知ったのはインスタグラムの広告がきっかけでした。コロナ禍で思うようにいかないことが多々ありましたが、悪いことばかり考えていても始まらないと思い、何かにチャレンジしたい、とりわけ聴衆の前で自分の意見を話せるようになりたいと思っていたので興味が湧いたのだと思います。私たちは3人とも大学院で環境社会工学を学んでいるため、地球温暖化防止のテーマを選ぶのは自然なことでしたが、政府や企業がどういった対策を打てるか議論を重ねてきた私たちにとって、テーマのポイントである「個人」レベルでどのようなことができるかは考えたことがなく、非常に興味をそそられました。
(スマイヤ)2020年は大きく状況が変わった年でした。春は授業がなく、再開した現在でも対面授業はほぼありません。私個人としては対面の授業に価値を感じていたので非常に残念でした。そんな状況の中プレコンの話を聞きました。授業等でプレゼンの技術を学んでいましたが、実践できていなかったのでこの機会に身につけたいと感じました。大学の授業がオンラインになったことで非常に多くの時間があったこともあり、断る理由は無くすぐに参加を決めました。
(ハナ)コロナが日本で流行し始めた今年の2月頃、私は丁度モロッコに戻っていました。その間に状況が深刻化し、日本へ戻れなくなったため授業はオンラインで受講していました。日本とモロッコの間には8時間ほど時差があり、朝4時に授業を受ける日々が続き非常に苦労しました。やっとの思いで日本に戻っても外出できず、ステイホームに飽き飽きしていたところ、ナターシャがこのコンテストに誘ってくれました。日本で同様のコンテストに出場したことも無く、面白いと思い出場を決めました。

日常生活の中で大きな課題に取り組む工夫

(ナターシャ)増加する二酸化炭素排出量による気候変動に対し、日常生活の中で個人がどう取り組んでいくかを考えるのは非常に難しかったのですが、3人で何度も議論を重ね、知恵を絞りました。その結果、お店の環境問題対策に関するレビューが集まるプラットフォーム「グリーン・トマト」を提案できました。人々の多くがネット上のレビューを頼りに飲食店を決めるという確かなデータから着想を得たアイデアで、これを使うことで、個人が近隣にある飲食施設に関する環境についての評価や情報を手に入れられ、賢い判断ができるようになります。個人の影響力がやがて産業を動かすほどに拡大可能であることが、審査員から評価されたのだと考えています。
(スマイヤ)私たちのプレゼンにおける重要なポイントは、気候変動を解決する糸口を聴衆にどれだけわかりやすく示せるかでした。今回選んだテーマは私たちが日頃研究している分野であるため、聴衆を置いてきぼりにしないよう、出来る限り専門用語は使わず、情報が多くなり過ぎないように全体を構成しました。10分間のプレゼンで常に聴衆を引き付けられるよう、ジェスチャーやイントネーションに気を配るなど、非常に苦労しましたが、今回こういった努力が評価されたのだと思っています。
(ハナ)私たちは個人レベルで、どれほど大きな影響を社会に与えられるかに焦点をあて、内容を考えてきました。大抵の人は「個人でそんな大きい影響を与えられるわけない」と思うでしょうが、「グリーン・トマト」は個人の努力や影響を相互に結び付け、組み合わせます。それは産業界も巻き込み、さらに大きなものになります。このアイデアを考えていくうちに、「外食」という誰もが行うことを通じて、すべての人がこのプロジェクトに関わることができ、簡単に実施できるため、おもしろいと思いました。個人のライフスタイルを変えることなく、それぞれの観点で貢献することができるため、有効であると考えています。

自分を信じ一歩踏み出すこと ~高みを目指すみなさんへ~

(ナターシャ)プレコンにチャレンジすることは皆さんにとって素晴らしい経験になるはずです。何かにチャレンジし、ベストを尽くすことはとても楽しいことです。その過程を是非楽しんでください。賞を獲得することはおまけであって、本番までのブレインストーミング、リサーチ、構成作り、練習といった過程が貴重な経験となります。この大会を経験した後、成長した姿を想像して挑戦してみてください。
(スマイヤ)プレコンはチャレンジの場としても、自身の能力を測る場としても、素晴らしい機会になるため、是非多くの人に参加してほしいと思います。予選で審査員からもらえるフィードバックはプレゼン能力向上にとても役立ち、どこでも生かすことができます。これまで英語でプレゼンを行う機会は数多くありましたが、これほど勉強になる経験はありませんでした。将来にも必ず生かされると思っています。
(ハナ)とにかく自分自身を信じることが大切です。自分を信じていなければ、その不安がそのままプレゼンに表れてしまいます。そうなってしまうと、どれだけ内容が素晴らしいものでも、聴衆にとっては魅力的ではありません。自分を信じるにはとにかく練習を繰り返すこと。本番を迎える前に自信を持つ必要がありますので、練習を徹底してみてください。