卒業生セミナー【サッカーチームでの仕事と高校・大学での学びの重要性】を開催しました

(写真左から)
小田晋太朗さん(イベロアメリカ言語学科スペイン語専攻卒業:ジェフ市原・千葉 通訳)
小林俊也さん(イベロアメリカ言語学科ブラジルポルトガル語専攻:レノファ山口通訳)
高木耕先生(イベロアメリカ言語学科ブラジルポルトガル語専攻 准教授)
勝田道徳さん(イベロアメリカ言語学科ブラジルポルトガル語専攻卒業:柏レイソル通訳)
大友春利さん(イベロアメリカ言語学科ブラジルポルトガル語専攻卒業:VONDS市原・通訳兼事業補佐)
2019年12月7日(土) 2019年度幕張新都心ビジネスセミナーのプログラムの一環で高校生・大学生対象に現在Jリーグのチームなどでスタッフや通訳として働いている本学卒業生による「サッカーチームでの仕事と高校・大学での学びの重要性」をテーマにしたセミナー【サッカーチームでの仕事:言葉に魂を込めて共に戦う】を開催しました。参加者からの活発な質問の他、セミナー終了後も卒業生に対する個別の質問などが多くあり、非常に参加者の関心が高いセミナーとなりました。当日のセミナーの内容の一部を紹介します。

主催:幕張新都心ビジネススクール実行委員会
協力:神田外語大学キャリア教育センター・神田外語大学同窓会

(テーマ1)高校・大学時代の学業への取り組みと卒業後のキャリア構築

留学をして語学を学ぶだけでは不十分、自発的な行動が目標達成の近道

小田晋太朗さん(イベロアメリカ言語学科スペイン語専攻:ジェフ市原・千葉 通訳)

大学時代にスペイン・バルセロナへの1年間の留学を経験しました。留学中はスペイン語の学習に加え、空いている時間にバルセロナにサッカー留学をしている日本人プレーヤーのスペイン語通訳のサポートを行うことにより、自身のスペイン語通訳能力の向上にも努めました。留学終了後には、自らサッカー通訳が必要なフィールドへアプローチし、実戦経験を積むことでスペイン語の通訳能力だけでなく人脈の構築も出来たと考えています。卒業後、最初は民間企業への就職を行いましたが、学生時代の経験なども評価していただき2019年シーズンからジェフ市原・千葉で選手の通訳として働いています。2019年シーズンはオーストラリアとベネズエラの選手の通訳を担当しました。実際の仕事ではスペイン語だけでなく、監督と選手の間の通訳では英語を使用することが多く、英語は必須と考えてもらえればと思います。 学生へのアドバイスとしては「自発的に目標に向けて行動に移すことが結果に近づく」ということですね。

サッカービジネスに必要なビジネススキル・会社員としての経験を活用する

大友春利さん(イベロアメリカ言語学科ブラジルポルトガル語専攻:VONDS市原・通訳兼事業補佐)

高校時代はサッカー部に所属、サッカー漬けの高校生活でした。私の在籍していた高校はほとんどの学生がスポーツ推薦や指定校推薦などで進学するのですが、私は筆記試験を受験して大学進学をしたいという思いがあり、高校卒業後、浪人生活を経て大学に神田外語大学に進学しました。
大学在籍中に1年間のブラジルへの留学を経験し、卒業後、最初はブラジルに工場を持つ消費財メーカーに3年間勤務。その後、2014年ブラジルW杯の際にブラジルで通訳業務の依頼があり、ブラジルに渡航、現地にてテレビ局のポルトガル語通訳のコーディネートなどを担当。帰国後、サッカーイベント会社にてスクールの運営やスポーツメーカーのマーケティング代行などに従事。退職後は都内にあるスポーツウエア生産管理会社で商品デザインや商品企画の仕事を担当し、現在はVONDS市原で通訳兼事業補佐(フロント業務)として働いています。

通訳以外のサッカーの仕事
私が所属しているVONDS市原は市民クラブでスタッフも限られているため、一人のスタッフが複数の業務を担当しています。現在はチームの通訳の業務が50%、残りは以下のような仕事です。
《通訳以外の業務内容》
・SNSの管理(Twitter、INSTAGRAMの投稿、管理)
・チームHPの作成/更新(WORD PRESSというソフトを使いHPを作成しています)
・チームグッズのデザイン、業者への発注業務
・サプライヤーとのやりとり(例:ユニホームへのロゴの貼り付けなど、発注・納期管理)
・チームのチラシやスタジアム看板、横断幕の作成など(イラストレーターなどのソフトを使用)
・営業のフォロー(資料作り、イベント時の客先とのやりとり等)

サッカー業界においてはフロント側にサッカー以外のスキル、例えばイラストレーターでグッズのデザインを作成したり、ホームページの作成をしたりする能力がある人材を探すのは簡単ではないので、将来、業界に興味がある人も会社員としてのスキルを向上させるということが役に立ちます。サッカー通訳は狭き門です。しかしながら、すぐにそのチャンスが来なくとも、様々な職業で身に付けた経験はスポーツ業界では役立つはずです。
「通訳をやりたい」と自ら発信し続けること、そうすることでチャンスが突然やってくることもあります。また、Jリーグに注目がいきがちですが、それ以下のリーグ(JFLや地域リーグ)でも外国人選手や監督が活躍しています。通訳なしで戦っている外国人選手も多数いますが、通訳のみを雇う資金がないこともあります、そういった時に+αで何かできることがあると、今の私のような形で話を頂くこともあります。繰り返しになりますが、すぐにチャンスが来なくとも諦めず、語学の勉強と新たなスキルを身につけて機会を待つことも大切です。

サッカー通訳の仕事はジョブ型雇用、この仕事は自ら探しにいく努力が必要

勝田道徳さん(イベロアメリカ言語学科ブラジルポルトガル語専攻:柏レイソル通訳)

高校時代に一度ブラジルに留学の経験がありました。大学入学後も3年生の時に1年間ブラジルのジュイス・デ・フォーラ連邦大学に1年間交換留学生として留学しました。留学から戻った後はクラスメイトや後輩と定期的にポルトガル語を学ぶ勉強会を実施しポルトガル語の能力の向上に取り組んでいました。在学中から「卒業後はポルトガル語を生かして働く」ということを考えていたため、卒業後、すぐにブラジルに渡航、現地で日本語とポルトガル語を生かして働く仕事を探しましたが、最初はあまりうまくいきませんでした。その後、クラブW杯で通訳の依頼などもあり、いくつかのサッカー通訳の仕事を得た後、現在は柏レイソルでポルトガル語の通訳として働いています。仕事を探すにあたっては自らフリーの通訳としての名刺を作り、片っ端から配るなどの行動を起こしました。「通訳」というスキル(JOB)を生かして働くということは新卒一括採用の就職とは違い、会社に入ったら会社がお金をかけて通訳の勉強をさせてくれるといったものではないことを理解しておく必要があります。

休学してのブラジル留学と在外公館派遣員の経験を活かしサッカー通訳の仕事へ

小林俊也さん(イベロアメリカ言語学科ブラジルポルトガル語専攻:レノファ山口通訳)

高校は文武両道で学業と部活動を両立する校風でした。「プロサッカー通訳になりたい」という思いから、語学を学ぶために神田外語大学に進学しました。大学進学後は1年間大学を休学し、ブラジル・サンパウロに留学しました。留学終了後、さらにキャリアを構築する必要があると考え、在外公館派遣員制度の試験を受験、2年間ブラジルの在サンパウロ日本国総領事館での勤務を経て2018年に帰国、今シーズンからレノファ山口で通訳として勤務しています。
留学生活においてはただ授業に参加するだけではなく、課外活動に積極的に参加することが留学の効果をさらに高めることが出来ると考えています。私の場合はブラジルでブラジル人に日本語を教えるという活動を通して現地でのコミュニティに加わるという取り組みを行っていました。

(テーマ2)現在のサッカー通訳の仕事

通訳の仕事(通訳業務の内容と割合)

サッカー通訳の仕事は大きく分けて「グラウンド周りの仕事」と「グラウンド外の仕事」に分かれます。グラウンドの仕事とは「練習前のミーティングの通訳、練習中の通訳、そして試合の通訳」です。グラウンド外の仕事は「選手の空港への出迎え、家族のケア(子供の小学校のおしらせを伝える、家族を病院に連れていくなど)、選手のグラウンド外のケア(銀行への付きそい、病院、教習所への付きそいなど)があります。またこの他に選手の食事になどにも同行することもあります。大体、午前中はグラウンドで練習、午後はグラウンド外の選手のサポートを行うことが多いですね。割合としてはグラウンド内の仕事が50%、グラウンド外の仕事が50%という感じです。

働き方について

シーズン中は日曜日が試合で、翌月曜日がオフとなっていますが、オフの日に外国人選手はプライベートの用件を済ませたいと考えるため、月曜日も外国人選手から通訳のサポートを受け、結果、月曜日も仕事となることもあります。この通訳の仕事を行っていく上では選手の依頼をただ受けるだけではなく、チームのスケジュールと自身のスケジュールを調整し、選手とうまく交渉しながらスケジュール管理をする能力も必要となります。とはいえ、前日に急にお願いをされるということもあります。決して1年を通して土日完全週休2日という仕事ではないのでワークライフバランスを1週間や1か月という期間で取りたいという人には向いている仕事とは言えません。目標を持ってチームの勝利や昇格に貢献したいというモチベーションが必要です。

通訳者のスタイル

監督と選手、双方からのメッセージ・アドバイスをどのように伝えるか、どのタイミングで伝えるか、すべてを伝えてよいのか、ということについてはそれぞれの通訳が試行錯誤しているところです。特に決まったルールがあるわけではありませんが、通訳によってそれぞれのスタイルがあります。チームに年長者の通訳が加わった場合は前の通訳とスタイルの違いを感じることもあります。いずれにしても伝える上で重要なのはどのような場面なのか、そしてどのように伝えるのかという伝え方ですね。実際にサッカーの試合などではグラウンドにおける選手と通訳の場所の取り方などに注意して試合を観ることが多いです。さらには監督と通訳との話の中である選手のプレーについて褒めるようなことがあった場合は、通訳を求められているわけではありませんが、後で選手に監督がほめていたプレーなどについて伝えることもありますね。自動翻訳などの進歩に伴い、通訳はどのように変化していくかということですが、意外と怪我の症状を伝えると言ったデータが蓄積されているものについては機械翻訳が効果を発揮するのではないかと思いますが、場面が刻々と変わる状態での通訳は自動翻訳が難しい分野かと思います。

(テーマ3)参加者からの質問

部活動について

(大友さん)学生時代はサッカー部での活動に没頭する日々でしたが、そこで耐える、最後までやりきるという能力を磨いたことが、そのことが受験勉強や大学での学びに繋がったと考えています。部活動に向けたエネルギーをうまく学業に転換することが出来る可能性があることが部活動経験者の強みだと思います。

英語を学ぶモチベーションを上げる方法

(小田さん)「英語を学んで何の役に立つのだろう」と思ったときに、「英語を学んだらこういう世界が待っている」と想像することが学びのモチベーションを上げる一つの方法かなと思います。

英文法が苦手なのですが

(小田さん)ベストな解決方法かはわかりませんが、大学でスペイン語を学び、一からスペイン語の文法を学んだことが学ぶ過程において英語とスペイン語の文法の比較をすることが出来、結果的に英文法の力の向上に繋がりました。また高校生の時に使った文法の参考書は今でも参考にしているので大学に合格したからといって捨てることなく活用して下さい。

図書館の利用

(勝田さん)大学時代は図書館を良く利用しました。図書館を利用する効果の一つとして図書館へ行くと同じように学んでいる学生がおり、自らの学びに刺激を与えるという効果があります。図書館だけでなく、大学の施設は有効に利用することをお勧めします。

新聞を読むことや海外でのボランティア活動を通して情報感度を上げる

(勝田さん)ブラジル留学中は現地の新聞をよく読み、情報を自ら取りに行くという行動をとっていました。このことがポルトガル語を話す際に「話す内容がある」という状態を作り出せます。またブラジルでブラジル人に日本語を教えるという活動を通して現地のコミュニティを作り出すことが出来ました。

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