GLAという世界を創るのは私たち「グローバル・リベラルアーツ学部 1期生インタビュー」第1話 山本一(やまもとはじめ)さん

第1話 山本一(やまもとはじめ)さん

令和3(2021)年4月に開設された神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部(以下、GLA)には、約60人の1期生が入学しました。それぞれの想いを持って「平和のためのグローバル・リベラルアーツ」を学ぶ新たなコンセプトの学部に飛び込んだ学生たち。6月末からの2週間、ブリティッシュヒルズ合宿で行った学生インタビューの第1回は、山本一さんです。

異文化の刺激が開いた世界への扉

世界に関心を持つようになったのは、高校生の頃です。入学した高校が第一志望ではなく、部活にも入らず、のんきに過ごしていました。すると母親が「何もしないなら、留学でもすればいいじゃない?」と勧めてくれました。正直、積極的に自分から留学したいと思ったわけではなかったんです。

留学をして現地の学校で学び、ホームステイすることで日本とは全然違う価値観に触れました。それまでの海外旅行とはまったく異なる経験です。スロベニアとニュージーランドに留学しましたが、国によって価値観が異なるので、興味が世界へと広がっていきました。

留学は東京都江戸川区の制度を利用したので試験があったのですが、高校の先生が指導してくれました。帰国後はその先生が顧問を務める国際交流の部活に入り、留学生との交流など活動の場と人のつながりがどんどん広がっていきました。

人脈が豊かになったことがきっかけで、地元のことにも目を向けるようになり、江戸川区の「子どもの権利条例」の制定など国際交流以外の活動にもチャレンジできました。人のつながり、人脈は本当に大切だと感じています。

“志の高さ”という可能性を秘めたGLA

GLAに入るきっかけは、インドへの旅行でした。日本と何もかも違うインド。自分の価値観をかき混ぜられて、頭が追い付いていかない。貧しい人々が寄ってきて、物乞いをされて、財布も盗まれました。そんな体験をして、ああ、こういう貧困を抱える世界の問題解決に関わりたいと強く思ったのです。

GLAのメリットはまず外国語大学だから英語を伸ばせることでした。でも、それ以上に1期生だから、入学生の志が高いのではと思いました。高校時代からさまざまな人と関わり、人脈をつくってきたことで活動が広がった経験があったのでGLAに入ればきっと人脈が広がると思ったんです。先生方も興味深い方々が集まっていましたからね。

入学試験は令和2(2020)年10月のAO総合型前期を受け、SDGsに関する日本語のプレゼンテーションが試験科目でした。テーマは「質の高い教育をみんなに」を選びました。貧困の問題は教育が行われなければ改善されないからです。プレゼンは楽しかったです。緊張はしますが、楽しんでしまえば、その感情が見ている人に伝わる。自分が思っていることも伝わる。だから、受験生の後輩からプレゼンについてのアドバイスを聞かれると「とにかく、プレゼンは楽しめ!」と言っています。

プレゼンが終わると少し間を置いて、リフレクションの時間があります。採点をする大学の先生方にプレゼンの振り返りを伝えるのですが、貧困を改善する教育の実現のために自分がすべきことの視点が足りなかったと説明しました。先生方が良かった点について評価してくれて、それをきっかけに一緒に議論して、リフレクションはとても良い時間でした。

新しい気づきや考えを生むGLAの議論

GLAに入学して、自分が目指していることに近い志を持った学生がたくさん集まっていると感じました。そして、僕には考えられないレベルの活動や経験をしている人がたくさんいる。自分も負けてはいられない、行動しなくちゃと強く思いましたね。

そんな学生たちと一緒にいると、正直自分が埋もれていると感じることがあります。高校のときは、なりふり構わず行動していました。GLAに入ると、僕よりもどんどん行動し、発言する学生がいるから、ちょっと周りに流されている気がしています。言い訳になるかもしれませんが、コロナ禍の影響で世界にも飛び出せません。そんな今の自分には満足していませんね。

1年前期の授業で好きだったのは「グローバル・ディスカバリー」です。海外スタディ・ツアーで学ぶ4つの国や地域からひとつ選んで、生の声を聞こうというもの。僕はインド料理店に行って、インドの方にお話を聞きました。事前にテーマを決めて、調査をする。やっぱり現場に行くのが好きだし、受け身の授業だけでは頭に入ってくる知識も限られます。グローバル・ディスカバリーは五感で感じられる授業で、とても印象的でした。

それと、GLAはディスカッションが盛んで、「グローバル・リベラルアーツ入門」など議論をする授業も多いです。自分では思っていたけれど言葉にできなかったことを、他の学生が発言する。自分にとって新しい気づきになって、新しい考えが生まれてくる。本当に面白い体験です。GLAでは何を発言しても大丈夫という環境がある。みんな聞いてくれる。英語でも、日本語でも。その環境は高校時代にはなかったですね。

理解を助けてくれた合宿という環境

ブリティッシュヒルズでの合宿が発表されたときは、「フリーの時間が2週間で3時間かよ!」というのが一番の本音でした。一方で、缶詰になることで、集中力が高まって、いろいろなインプットにつながるという期待はありました。

合宿で学んだのはリトアニアとエルサレム。正直、自分の力不足で全然分からないと思うことはありましたね。内容が難しくて、英語も理解できない。でも、クラスメイトと一緒にいるから、分からないことがあれば気軽に聞けたのは良かったです。

1日の締めくくりにリフレクションがあったのも良かったと思います。最初は「夕食の後になぜ、授業があるんだ!」と思いましたが。授業が終わって、いったん、落ち着いて、それから友達と日本語で確認し合う。理解できなかったことをその日のうちにインプットできるのですごく助かりました。

リフレクションでは、同じことを学んでも捉え方が人それぞれだと理解できたことも面白かったです。ひとつの情報を受け取っても、人によって全然捉え方が違いますから。

住民の熱意に驚いた双葉町での時間

福島第一原子力発電所の事故が起きた当時はまだ幼かったですが、その大変さを感じる機会はありました。

僕の家族の知り合いが、子どもに自然を体験させるキャンプを企画していました。平成23(2011)年の原発事故で会場として使っていた群馬のキャンプ地の放射線量が高くなってしまい、開催地を線量が比較的低い会津若松に変更しました。そこでは、原発事故によって日頃、屋外で遊べない福島の子どもたち向けにもキャンプを開いていました。

僕もそのキャンプには参加したので、被災した子どもたちと一緒に過ごし、原発事故の影響を感じる機会はありました。母親は群馬で除染作業に参加していたので、その作業の大変さを聞くと、事故の現場周辺ではどれだけ膨大な量の除染が必要なのだろうかと、子ども心に考えてしまいましたね。

今回、GLAの研修で双葉町に実際に行き、街を見て、被災した住民の方々にお話を聞きました。10年前の状態がそのまま続いている。つらいと思ったし、自分はこの問題に何もできていないと思いました。でも、住民の方々は「何ができない」ではなく、「今、これをやろう」と考えている。その熱意に正直、驚きました。

東京電力の方々のお話を聞くと、皆さんすごく頑張っている。でも、住民の方々の不安は拭い切れない。これまでの10年間を奪われ、そしてこれからも奪われていく。住民の方々は、そう思っていらっしゃると感じました。

双葉町に行き、改めて現地の空気を感じることの大切さを実感しました。リトアニアやエルサレムとリモートでつないで勉強をしたけれど、双葉町に行ったからこそ、やっぱり海外の現地にも行きたいと思いました。

GLAで“化学反応”が起きればいい

合宿が終わって、これから何をするか、まだ頭の中が整理できていません。時間をかけて考えればいいと思っています。正直分からなかったことだらけです。でも、キーワードを得ることができたので、そこから自分で調べたり、学べたりできたらいいなと思います。そういう意味では、オンライン留学だったので現地に行けない物足りなさはあったけれど、良い経験だったかなと思います。

今回、Zoomで画面越しにオンライン留学の授業を受けて、もっともっと現地の人たちからダイレクトに学びたい、できれば現地に行きたい、すごくそう思いました。今後はどんどん行動していきたいですね。

双葉町の東日本大震災・原子力災害伝承館で、東北大学で学ぶインドからの留学生と会う機会があり、僕が「インドに興味がある」と伝えると、「国際交流のサークルを立ち上げたので参加しないか」と誘ってくれました。そのサークルにはインドだけでなく、アフリカや中国からの留学生もいるとのこと。思いもよらない出会いでした。福島、そしてブリティッシュヒルズに来て本当に良かった。やっぱり行動が大事です。

GLAは60人弱の少人数です。新しい学部で学生の志も高い。新しいアイデアがどんどん出てくるはず。先生方も「もっと、暴れていいよ」と言ってくれていますから、もっと暴れて、面白いことをすれば、GLAらしくなる。

そして僕はGLAで完結したくはない。GLA、そして大学という枠から飛び出し、未知の世界へと飛び込んでいきたい。GLAにいる人それぞれが、化学反応を起こしてその貴重な経験をシェアできたらより世界が広まって最高だと思います。(了)

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