活躍するKUIS在外公館派遣員たち(Vol.53/エチオピア)

“活躍するKUIS在外公館派遣員たち”というテーマで、赴任中または帰国後の様子を紹介するシリーズ第53弾。

元在エチオピア日本国大使館派遣員の中山 あか莉さんをご紹介します

中山 あか莉さん/写真中央(英米語学科2020年3月卒業)

二年間の業務のこと

在エチオピア大では官房班に所属していました。業務内容はコロナ前は主に便宜供与やそれに係る配車手配、宿舎留保、空港送迎が中心でした。コロナ直後はエチオピア航空やボレ空港とのやりとりを、落ち着いてからは館員の休暇取得等の庶務を中心に行なっていました。

コロナが始まる前の半年間は、規定に従って休暇の取得をしたり、便宜供与のためにホテルや旅行代理店と日々やりとりをしていました。初めての社会人経験、初めての海外生活でストレスを感じることも多々ありましたが、全てが目新しいエチオピアでの日々は刺激的ですごく楽しかったです。エチオピア大にはAU代表部も併設されており、代表部の派遣員から仕事のことのみならず、エチオピアの歴史や文化、お土産やさん、レストラン、ホテル等、便宜供与で要人から質問され得る事を少しずつ覚えていきました。

その後着任後半年でコロナが本格的に始まった当初はエチオピア航空とのやりとりが日々の中心業務でした。エチオピアはアフリカ大陸の交通の要所であり、コロナの影響で多くのアフリカ諸国がロックダウンし商用便がストップした時には、各国からチャーター便がエチオピアへ集まり、ボレ空港から商用便に乗り換え帰国をするといったようなオペレーションが多数発生しました。その時一番頭痛の種だったのが空港での乗り継ぎに関してです。コロナの影響を受けてボレ空港の乗り継ぎ規定が定まらず、確認するたびに日々ルールが変更され、下調べをしてきたのにエチオピアに到着した日に急に規定が変わって乗り継ぎが出来なかった、あるいは、ボレ空港の空港スタッフが到着地の入国規定をきちんと理解していないために搭乗拒否に遭って乗り継ぎ出来なかった、といったような予測不能の事態が昼夜問わず起き、その度に警備領事班の方々の後方支援としてエチオピア航空や空港とやり取りをしました。

コロナから一年ほど経って少し落ち着いてきたころ、今度は北部で紛争が発生しました。日々の庶務業務と同時進行でエチオピア航空と密接にやりとりをし、北部と首都アディスアベバを繋ぐ国内便の運行状況のチェック等を行なっていました。

コロナ禍での生活のこと

コロナがエチオピア国内でも本格化すると緊急事態宣言が発表され、レストランやジム、その他商業施設の多くが営業を停止し、その最中に起きた市内での暴動の影響で国内で一斉にインターネットが遮断され、ストレスマネージメントが必要な状況が暫く続きました。もともと娯楽施設も少なく、日本でしていたような余暇の過ごし方が出来ないエチオピアで苦しい状況が続きましたが、その時に人の暖かさを感じました。エチオピア人は世話焼きで他人への関心が強い人が多い印象です(見ず知らずへの相手へもそのように接するので、鬱陶しさを感じる場合もあるようですが…笑)。その時期は電話とSMSのみ使用できたので、現地職員の同僚と電話をしたり、メッセージで励まし合うなかで、相手を思い遣り思い遣ってもらえる時、どれだけ心が救われるか学びました。異国でも孤独感を感じる事がなかったのは、彼らが新参者でも簡単に輪の中に招いてくれる優しさがあったからだと強く感じています。

二年間で学んだ一番大きなこと

一番は関心を持つことの重要性です。
元々、自分の中で何か変わるかもしれないという曖昧な期待を持って挑戦した派遣員でした。その”何か”がはっきりしないまま、”アフリカ””エチオピア”という、私の今までの人生には要素の一つもなかった場所に飛び込むことになりました。どの国でも内定が決まった場所に行こうと心構えがあったとはいえ、正直先進国に行く派遣員のことを羨ましく思っていなかったと言えば嘘になります。関心がなかった場所に行って生活しなければならなくなっため、(聞こえは悪いですが)関心を持つしかない状況になりましたが、受け身だった私にとってはそれが好機でした。

民族紛争、宗教、貧困、どれも派遣員になる前は考えてみたこともありませんでした。飢餓や環境問題なんて対岸の火事で私は私の目の前の生活や余暇や将来の仕事や賃金のことが関心でした。勿論、それらは今だってすごく大切なことです。しかしエチオピアで実際に目にしたり、ニュースで見たり、現地職員から意見を聞くなかで、それらの問題が今実際に起きているのだ、と感じるようになりました。現実味を帯びたという感じです。

どの問題も私一人にはどうしようもないことですが、せめて知ろうと思うようになりました。とはいえ現状で出来ていることと言えば、買い物でフェアトレード商品があれば選んだり、募金をしてみたり、ゴミを少なくするために買うなら出来るだけ長く使える物にしよう、といった問題解決にはあまりにも微々たる貢献ですが、目先のことだけではなく周囲に関心を持ち、どうしたらもっと良くなるだろうか、と考える意識がついたのは人間的に大きな成長だと感じています。

外務省在外公館派遣員に挑戦をしようとしている人へ

周りから多大なるご支援をいただいて非常に充実した二年間を過ごすことが出来ましたが、在学中に派遣員になっていたら現地で感じたこと、考えた事、もっと知りたい事について研究出来たため、もう少し早いうちに挑戦しても良かったとも思います。今現在何かしたいけど何をしたらいいか分からない、と悩んでいる方がいらっしゃいましたら、挑戦していただけたらと思います。私のように、エチオピアの場所すらわからないまま着任しても、現地で感じることは無限大ですので気になることや、やりたいと思えるような事が見つかるかもしれません。人生において非常に有意義な二年間になると思いますので、迷っている方は飛び込んでみるのもよろしいかと思います!

エチオピア連邦民主共和国(Federal Democratic Republic of Ethiopia)

【外務省HP/一般事情より】
1. 面積:109.7万平方キロメートル(日本の約3倍)
2. 人口:約1億1,207万人(2019年:世銀)
3. 首都:アディスアベバ
4. 民族:オロモ族、アムハラ族、ティグライ族、ソマリ族等約80の民族
5. 言語:アムハラ語、オロモ語、英語等
6. 宗教:キリスト教、イスラム教他