震災から15年 福島の「光と影」を世界へ

学生が日英新聞で発信した震災復興発信プロジェクト

 神田外語大学では、福島県との包括連携協定(2023年9月締結)に基づき、学生主体の「震災復興発信プロジェクト」を実施しました。本プロジェクトは、東日本大震災・原子力災害から15年の節目に向けて、柴田ゼミの学生が福島県浜通り地域において、福島民報社の特別協力のもと現地取材を行い、その成果を日英2言語による新聞としてまとめ、国内外へ発信したものです。
 本記事では、その一連の取り組みについて紹介します。

▲ 柴田ゼミ
▲ 柴田ゼミ

福島の現場で学び、考えた「光と影」

 本プロジェクトは、福島県浜通り地域でのフィールドワークから始まりました。学生たちは1泊2日の行程で現地を訪れ、震災の記憶と現在、そして復興の最前線を自らの目で確かめました。
 初日(2025年8月25日)は、「福島の過去と現在」をテーマに、震災の記憶や復興の歩みを学ぶ行程が組まれました。参加した学生の多くは震災当時まだ幼く、当時の出来事を実体験としては知らない世代であることから、まずは現地での体験を通じて震災について理解を深めることに重点が置かれました。東日本大震災・原子力災害伝承館での展示見学や語り部講話、震災遺構である浪江町立請戸小学校の視察、中間貯蔵事業情報センターでの現状説明などを通じて、震災当時の出来事とその後の変化を立体的に捉えました。現地での体験を通じて、出来事を「知識」としてではなく「現実」として受け止める機会となりました。

▲ 東日本大震災・原子力災害伝承館
▲ 中間貯蔵事業情報センター

 2日目(2025年8月26日)は、学生が複数の班に分かれ、それぞれテーマを設定したうえで取材活動を実施しました。A班は「福島イノベーション・コースト構想/新産業」、B班は「特産品」、C班は「人口拡大/地域振興」をテーマとし、研究開発拠点や企業、地域で活動する人々への取材を通じて、復興に向けた取り組みを多角的に捉えました。福島国際研究教育機構(F-REI)をはじめとするさまざまな取り組みに触れることで、復興は単に元の状態に戻すものではなく、新たな価値を創出していくプロセスであることを体感しました。こうした経験を通じて学生たちは、震災の記憶や課題といった「影」だけではなく、未来に向けた挑戦や可能性といった「光」にも目を向け、福島の多面的な姿を捉えていきました。

▲ 福島水素エネルギー研究フィールド
▲ トロピカルフルーツミュージアム

日英2言語の新聞として制作

 フィールドワークで得た学びをもとに、学生たちは震災復興新聞『福島とともに(Together with Fukushima)』を制作しました。新聞では、各班のテーマに基づき、福島の過去・現在・未来を一体的に捉えた内容を構成しています。震災の経験や課題といった側面に向き合いながらも、研究開発拠点の整備や新たな産業の創出、地域で挑戦を続ける人々の姿など、「福島の今」を伝えることを重視しました。
 日本語版の制作にあたっては、フィールドワークで得た取材内容や気づきをもとに、福島民報社の協力のもと学生同士で議論と検討を重ねながら、「福島の光と影」をどのように伝えるべきかという観点から記事テーマや紙面構成を設計しました。さらに英語版の制作では、共同通信社や毎日新聞出版社の協力のもと日本語版の内容を基礎としつつ、海外の読者にも伝わるよう表現や構成を再構成することで、単なる翻訳にとどまらない形で内容を磨き上げました。
 こうして完成した日英版の新聞は、現地取材から記事制作に至るまでの一連のプロセスを通じて得た学びを統合し、学生の視点から福島の現在と未来を描き出した本プロジェクトの中核的な成果物となりました。

▲ 福島民報社による事後研修
▲ 共同通信社による事後研修

国内外へ広がる多角的な発信

 完成した新聞は、内堀福島県知事への贈呈(2026年1月26日)や瀬戸復興副大臣への贈呈(2026年3月4日)をはじめ、インドネシアのブディ・ルフール大学へのオンライン発信、3.11東日本大震災追悼復興祈念式での配布や展示など、さまざまな形で展開されました。
 さらに、本プロジェクトは新聞・テレビ・WEBなど多様なメディアに取り上げられ、国内外に向けた発信へと広がり、福島の現状を学生の視点で伝える取り組みとして社会的な関心を集めました。

▲ 内堀福島県知事への贈呈
▲ 瀬戸復興副大臣への贈呈

その他関連活動

 本プロジェクトでは、新聞制作や発信にとどまらず、学園祭「浜風祭」において福島県の特産品を販売する取り組みも行いました。来場者に対して、現地で取材した内容とあわせて福島の魅力や現状を伝えることで、学びの成果を体験的に共有する機会となりました。

▲ 浜風祭での様子①
▲ 浜風祭での様子②

 また、フィールドワークで得た知見をもとに、広野町産バナナを活用したクラフトビール「綺麗ALE」の制作にも取り組みました。地域資源の新たな価値を形にする試みとして、バナナを栽培する(株)広野町振興公社やビール醸造を手掛ける(株)大鵬との連携のもと仕込式を実施し、完成したビールは新聞とあわせて福島県や復興庁への贈呈などにも活用されました。「綺麗ALE」のラベルには、震災復興新聞のデジタル版を閲覧できるQRコードを印字し、手に取った人がその場で学生の取材成果に触れられる仕掛けとしました。これにより、紙面や対面での発信にとどまらず、本取り組みを広く届けることにつながりました。

▲ ビール仕込式での様子
▲ 震災復興ビール『綺麗ALE』

学生の視点で捉えた福島の変化

 本プロジェクトに参加した学生からは、「震災のイメージだけでなく、未来に向けた可能性を感じた」「実際に現地を訪れたことで、自分に何ができるかを考えるようになった」といった声が寄せられました。
 また、「福島は被災地という印象だけでなく、新しい産業や挑戦が生まれている場所だと感じた」「実際に訪れたことで、これまで持っていたイメージが大きく変わった」といった声もあり、現地での体験を通じた認識の変化がうかがえました。
 さらに、「復興は元に戻すことではなく、新しい価値を生み出していく過程であると感じた」「福島の現状と未来を、自分たちの言葉で伝えていきたい」といった意識の変化も見られました。
 現地での体験と対話を通じて、福島に対する見方は大きく変化し、復興を“自分ごと”として捉える意識が育まれました。

今後に向けて

 本プロジェクトは一連の活動としては一区切りを迎えましたが、ここで得られた学びや成果は今後の取り組みへとつながっていきます。プロジェクトに参加した学生たちは、活動の締めくくりとしてゼミの最終授業において、本プロジェクトで得た経験や気づきをどのように後輩へ引き継いでいくかについて意見を交わしました。学生たちの学びは、世代を超えてこれからも続いていきます。
 神田外語大学では、こうした学生主体の学びを通じて地域や社会と向き合いながら、その成果を国内外へ発信する取り組みを今後も継続していきます。

メディア露出(※一部引用)

<プロジェクト全体の密着取材>

J:COM(2026年3月8日(日)放送 YouTube公開版)

共同通信KYODO NEWS SITE

福島フィールドワーク前

2025 年 7 月 31 日(木)付け 福島民報

福島フィールドワーク後

2025 年 8 月 26 日(火)付け 福島民報

2025年8月29日(金)付け 共同通信OVO

浜風祭での福島特産品販売

2025年10月26日(日)付け 福島民報

震災復興ビールの制作

2025年11月20日(木)付け 福島民報

福島県へ新聞の贈呈・座談会

2026年1月27日(火)付け 福島民報

2026年1月29日(木)付け 共同通信OVO

2026年2月4日(水)付け スポーツニッポン

復興庁へ新聞の贈呈

2026年3月4日(水)付け 共同通信OVO

2026年3月5日(木)付け 福島民報

2026年3月6日(金)付け 読売新聞

2026年3月17日(火)付け 千葉日報