第43回グローバル・スタディーズにて 吉川元国連大使による特別講義「外交と国益について考える」を開講

2025年6月18日(水)に行われた第43回グローバル・スタディーズにて、吉川元偉客員教授・元国連大使による特別講義「外交と国益について考える」が開催されました。

冒頭、当日の日経新聞の社説を取り上げ、日米交渉でよく聞く「国益」とは何かという問いが投げかけられ、講義がスタートしました。

本講義では、「外交」の目的について幅広い視点から解説されました。外交の目的を理解するうえで重要な要素である「国益」について日米交渉の実例から議論されました。

まず、相互関税を事例に、貿易における利益・不利益の仕組みを詳しく説明し、「国益」は誰にとっての利益なのかという観点を学生との間で質疑応答を繰り返しながら解説していきました。
次に、日本の防衛に関するトランプ大統領の対日要求を検証し、日米安全保障条約はトランプ大統領が言うように不公平なのかという問題に迫りました。

吉川先生からの講義を受け、学生たちは外交に対する新たな視点や外交の複雑性を再認識しました。
最後に、『あなたにとっての「国益」は?』という問いに対し、学生たちは積極的に自らの考えを述べました。

吉川先生は、日本のソフトパワーを世界に発信していくことが、結果として「国益」の拡大にとつながるのではないか、と述べられました。

参加した学生の感想

《外国語学部 英米語学科学生》
現在、トランプ大統領の発言や動向が国際政治に影響を与え続けている中、日米安全保障条約の在り方についても報道で取り上げられることが増え、両国関係への関心の高まりを実感しています。そうしたタイミングで、吉川元国連大使の講義を通じ、外交官の視点から日米安全保障条約について直接お話を伺えたことは、大変貴重な機会となりました。
私自身、中学生の頃に社会科の授業で日米安全保障条約について学んだ際、どちらか一方にとって不平等なのではないか、という素朴な疑問を抱いたことを思い出しました。しかし今回の講義を通じて、その背景や国際社会の中での意義について理解を深めることができ、大きな学びとなりました。

《外国語学部 スペイン語専攻》
今回の授業を通して、「国益」について改めて深く考える貴重な機会となりました。これまで私は、国益は主に経済力を強めるという視点で捉えていましたが、実際にはそれだけではなく、国家としての安全保障や国民の平和な暮らしを守ることも大きな国益であるということを学びました。
日米安全保障条約に関するお話については、この条約が日本の平和と安全を維持するためにどれほど重要な役割を果たしているのかを知ることで、普段あまり意識していなかった国際的な関係や軍事的な枠組みの意義についても考えるようになりました。
今後は、今回学んだ内容を踏まえて、ニュースや社会情勢をより主体的な視点で捉え、自分なりに「国益」とは何かを考え続けていきたいと思います。また、平和の重要性や国際協力の在り方についても視野を広げ、継続的に学んでいきたいと感じました。
また、国際社会の一員として、将来、さまざまな国の方々と関わりを持つ立場になることを考えると、日米関係の重要性とその多面的な側面を改めて認識することができ、学びへの意欲も一層高まりました。

吉川元偉 先生

元国際連合日本政府代表部特命全権大使 神田外語大学グローバル・コミュニケーション研究所 客員教授 1951年、奈良県生まれ。 国際基督教大学教養学部社会学科を卒業後、1974年に外務省に入省。国際連合日本政府代表部特命全権大使・常駐代表、在スペイン日本国大使館特命全権大使、初代アフガニスタン・パキスタン支援担当大使、経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部特命全権大使等を歴任。英語、フランス語、スペイン語の3カ国語を話す。

神田外語大学グローバル・コミュニケーション研究所における「グローバル・スタディーズ」とは

本学グローバル・コミュニケーション研究所ではリベラル・アーツ(教養)を推進する一環として、その柱の一つであるグローバル・スタディーズをオムニバス形式で開催しています。 この講座で学ぶことの本質は、机に向ってテキストの問題を数多くこなすことではなく、日ごろ耳にするキーワードや日々起こりうる事象に対し、如何に関心が持てるかの感性を鍛えることです。この感性は勉強や本だけでは補うことはできないと考え、グローバル社会で実際に活躍された経験豊かな方々に講師をお願いし実施しています。本学4年間でこの講座をとおし、物事に対して不思議・疑問(wonder)をいっぱい(full)に感じ、互いが議論できれば、大学生活もよりwonderfulになることでしょう。 神田外語大学グローバル・コミュニケーション研究所 久保谷富美男 先生(客員教授)

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