平和へのPitch!GLA学部一期生の「平和の定義」をつくる

■授業紹介Part2

グローバル・リベラルアーツ入門Ⅱ
グローバル・リベラルアーツ入門は1年次の必修科目です。「平和のためのグローバル教養(Global Liberal Arts for Peace)」の意味を学び、今後3年間の学びを自ら方向づけていくためのオリエンテーションという役割をもっています。GLA学部で学ぶ、探究と知識の基礎を学び、2年次からの専門教養科目と研究演習へと橋渡しをするために、多様な学問分野の教員が授業を担当するオムニバス形式の授業です。教員がそれぞれの専門分野から考えるヒントを提供し、対話やアクティビティを通して、学生が自立的に学習する力を上げていきます。

グローバル・リベラルアーツの入門編

GLA学部では、Humanities(人間と文化)、Societies(社会と共生)、Global Studies(グローバル・スタディーズ)の3分野で幅広い教養を学び、それぞれが思い描く「平和」を実現するための豊かな教養を身につけていきます。「グローバル・リベラルアーツ入門」はその入門編として1年次の前期と後期に置かれています。後期科目の「グローバル・リベラルアーツ入門II」では、言語・社会・地域研究・国際関係の各学問領域から、グローバル時代の「平和」について多角的に学んできました。今回取材したのはその第14回(全15回)の授業。これまで学んできたことをまとめる「総合リフレクション(振り返り)」の回です。
授業が始まる15分前には、すでに多くの学生たちが集まって来ていました。教室はGLA Commonsです。学生たちは手早く机や椅子を片付けて、広々としたオープンスペースをつくり、10枚ほどのパネル式ホワイトボードを用意。普段の授業ではテーブルごとに集まりますが、今回はテーブルを取り払い、より広く、自由な形で対話とコミュニケーションができる空間になりました。16:30になると全員が中央に集まり、いよいよ授業のスタートです。
最初に、第14回・15回を担当するコーディネーターの阪田恭代先生と高橋麻奈先生から、授業の狙いと進め方の説明がありました。

・これまでの授業で学んできたことのまとめとして「GLA一期生にとっての平和の定義」をつくることがゴール。
・学生が総合MCとファシリテーター(進行役)として授業の進行をする。
・GLA学部の多くの専任教員が参加し、学生と一緒に議論に加わる。
GLA Commonsでの授業が始まりました。

平和へのPitch!

「平和へのPitch!」と名付けられたこの日の授業は、通常とはかなり違うやりかたで進行するようです。高橋先生によると、今回の授業は学生たちの発案によって実現したもので、阪田先生、高橋先生にとっても初の試みということでした。
「GLA学部は定員60人の少人数ですが、グローバル・リベラルアーツ入門を除く多くの授業では、それを2~3クラスに分けて授業を行っています。今回のような授業形式で行うことになったのは、『全員でディスカッションできる授業をやりたい』と学生からの提案があったことがきっかけです」。(高橋先生)
提案に賛同した阪田先生と高橋先生は、11月に授業の企画をスタート。最初に「どんな授業をやりたいか」というアイデアを全員から募集し、同時に企画・運営を担当する推進メンバーも募り、学生と一緒に内容を詰めていきました。この日MCとファシリテーターをしていた10人の学生は、その推進メンバーたちです。
Pitchには「アイデアの投げかけ」という意味があります。学生たちは、第1回の授業でまず自分にとっての「平和とは何か」を考えました。その後の授業で学んださまざまな学問分野の視点をもとに、もう一度「平和とは何か」を考えること。さらにそれを全員でディスカッションし、ひとつの意見としてまとめて定義し、GLA学部一期生のメッセージとして世の中に「Pitch」すること。これが、今回の授業の目的でした。

授業の企画を考えてきた学生10人が、総合MCとファシリテーターとして授業を進行していました。

8つのテーマから、平和を考える

平和を定義するためのアプローチとして用意されていたのは、「紛争・安全保障」「日常(衣食住)」「経済」「哲学・思想」「平等・人権」「医療・保健」「自然・環境」「その他」の8テーマ。学生たちは、自分が一番しっくりくるテーマに自由に集まり、それぞれのテーマを軸に「平和とは何か」をディスカッションして定義づけていきます。そして、共通項が多いものをグルーピングして絞り、最終的にひとつの定義へとまとめていくのです。

  • <哲学・思想>

    「宗教って自我を超えているものだよね。無我の境地という言葉もある」「幸福と平和ってつながっているのかな?」

  • <自然・環境>

    「平和を考える時に、視点を変えることも大切だと思う。自然からの視点、動物からの視点とか・・・」

  • <日常(衣食住)>

    「思いやりってちょっと『上から目線』が入ってない? 『尊重』というほうが良いんじゃないかな」

  • <紛争・安全保障>

    「紛争って国と国の争いだけじゃないよね、テロとかもある」「お互いが理解し合って、全員が笑顔でいられる状態が平和だと思う」

  • <平等・人権>

    「選挙のためには法律とかが必要だよね」「法律を持ち出してくると、国によって基準が変わってきちゃうよ」

「愛ある共生」

議論が深まり、8つあったテーマがグルーピングされ、絞られていくにつれ、次第に重要なキーワードが浮かび上がっていきます。2つの大テーマに絞られた最後のラウンドからは、全員が中央に集まり、これまでのディスカッションで出てきた「尊重」「相互理解」「自由」といったキーワードについて意見を述べ、総合MCがそれをまとめていきます。
その中であきらかに多くの学生の心に響いていたのは「共生」というキーワード。そこからさらに議論を深め、最終的に全員で決めた平和の定義は「愛ある共生」という言葉でした。もちろん、ここで終わりではありません。個別の課題でも「平和とは何か」について自ら定義することを求められ、批判的に検討し、「考える」という作業を続けていきます。それがGLA学部の「平和」の探求です。

活発な議論の末に、「愛ある共生」がGLA学部一期生の平和の定義に決まりました。

世界に貢献できる人材をめざしていこう!

授業の締めくくりとして、総合MCの2人は全員に呼びかけました。
「今日はたくさん議論して、たくさんのキーワードが出てきました。そもそも『平和』とは何かがはっきり定義づけられていないのは、『平和』がそれぞれの人の、いろいろな思いの中で語られているからだと実感できたと思います。今回みんなで『私たちの平和の定義』を決めましたが、来週の授業では、『自分にとっての平和の定義』を考えることになります。その時にはこの『愛ある共生』という定義を自分なりに伸ばすのも良いし、崩しても良い。平和とは何かを徹底的に考えることが、とても重要なんです」

「今回GLA学部の一期生全員で議論して、私たちの平和の定義を決めることができたのは、とても嬉しかったし、有意義な時間になったと思います。GLA学部のみんなでひとつのことを考えるというのは、これまでなかなか機会がなかったので、一度きちんとやりたいと思っていました。今日はいろんな人の、いろんな面が新たに見えました。あと3年。みんなで考えたこの定義を胸に、何らかのかたちで世界に貢献できる人になれるように、がんばっていきましょう。お疲れ様でした!」

自然に沸き起こった大きな拍手と共に、グローバル・リベラルアーツ入門IIの第14回は終了しました。GLA学部生の「平和へのPitch」は、これからも続いていきます。期待しています!

<Student’s Voice>

総合MC担当 髙野好右さん

今日の授業は、平和の定義をひとつにまとめることがゴールではなくて、GLA学部一期生全員でひとつのテーマに取り組んで、各人の意見にふれることを大きな目的においていました。自分だけで考えるとどうしても偏りが生まれるものですが、他の人の目線でものごとを考えることも、それほど簡単ではありません。今回の授業で、自分以外の考え方をたくさん知ることができたことは、とても大きな意味があることだと思うし、今の自分が興味をもっていないことを知る機会になったと思います。同じ夢をもつ仲間たちです。一緒にひとつのことに取り組む機会を、これからも積極的につくっていければいいなと思います。

<From the Professor>

阪田 恭代教授

入学してから9カ月。学生たちの成長には目を見張るものがあります。GLA学部の学生たちは、世界の平和に貢献したいという大きな目標をもっているだけではなく、こんな風に学びたいという意欲も強いので、私たち教員は学生たちの意欲を後押しするように心がけています。今回の授業は、そんな学生たちの思いがよく表れたものになりました。今日のような授業スタイルができたのは、ACTIVE(行動する空間), BORDERLESS(境界なき空間), CANVAS(創造する空間)をコンセプトにしているGLA Commonsという教室があることも大きな要素です。今後もこの自由自在に使える空間を活用して、新しい学びを学生たちと一緒につくっていきたいと思います。

高橋 麻奈講師

今回の授業は、議論のファシリテーションを学生たちに担ってもらうという、私にとっても初の試みでした。「全員で議論し、最終的にひとつのメッセージにまとめたい」というのは、学生たちの強いこだわりです。とにかく「やってみる」こと、そして、全員と議論をするという「プロセス」そのものが、とても大切なポイントでした。学生たちは2年次から始まるゼミに向けて、「どの分野から平和を考えるか」「どんな方向から世界の平和に貢献していきたいか」を考え、研究の主軸を決めなくてはいけない時期です。これまでの授業と、今回の授業で得た数多くの視点が、そのヒントになってくれればいいと思います。

世界を変える、 旅に出よう。

グローバル・リベラルアーツ学部

世界のすべての国、すべての人々が、新型コロナウイルスの克服という、まったく同じ課題に向きあい、解決のために努力を続けている。社会の仕組みや私たちの日常は大きく変化した。そして今後も、予想を超えて変わっていくだろう。私たちは後ろ向きになってはいけない。変化を受け入れるだけでも足りていない。前を向き、行動し、自分たちで変化を作り出さなければいけない。 世界が変わる瞬間に立ち会えていることは、この時代に生きる私たちに与えられた大きな機会なのだ。
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