大学生活

【中国】部活より、勉強と仕事
中国の大学生のアフタースクール

いまの中国では、同じ大学の学生同士でも、親からもらっているお金によってその生活には「格差」があります。自由にできるお金が違うので、遊び方も変わってきます。 それに加えて、社会的な事情もあります。たとえば、日本では、美術館や展覧会など文化的な施設は一般的に安く利用できます。でも中国では、展覧会に行くためにひと月お金を貯めなければならない、ということがあるのです。お金のない学生たちは、集まって自転車でピクニックに出掛けたりします。 また、大学では勉強目的のサークル活動はありますが、部活をあまりやりません。中国の大学生にとって関心があるのは、勉強か仕事かであって、部活は入っていないのです。やったとしても、日本のように一年中続けることはありません。 中国では、部活を学校が管理して行う場合が多く、「あなたは足が速そうだから陸上をやったら」という感じです。ですから、自主的に行うことは少ないのです。 青野 英美先生

【インドネシア】カフェに集まってみんなでお喋りするのが基本
インドネシアの大学生はどんな風に遊んでいるか

インドネシアでも、都市部の大学生のコミュニケーションは、ケータイが中心です。普及率は日本より高いので、一人で3つ4つ持っている学生も珍しくありません。学生同士だけでなく、教員との連絡にも使われています。 日本と違うのは、学生同士で飲みに行くことがない点でしょう。イスラム教徒が多い国なので、飲酒は基本的にいけないこととされているのです。バリのようなヒンドゥー教徒が多い地域でも、基本的に同じです。バリ人も普段、集まってお酒を飲む習慣はありません。 居酒屋に行くことは、大学によって禁止されている場合が多いのです。もっとも、そういう場所もほとんどないのですが。その代わりに、学生たちはプチャセーラといったカフェのような場所に集まります。日本で言えば、スタバに行く感じでしょう。そこで軽いスナックを食べながら、お喋りを楽しんでいるのです。 スヨト先生

【ベトナム】大学が将来の選択の幅を広げる
ベトナムの大学生は何のために大学に行くのか

ベトナムでは、大学を出ているかどうかが仕事の選択に直結します。ホワイトカラーの職業に就きたいなら、とにかく大学を出なければなりません。そうでないと、いわゆるブルーカラーの仕事を選ぶことになります。 都市部では、高校生の8割から9割が大学に進みます。田舎では、中学や高校を卒業して仕事に就く人たちも少なくありません。その場合はほとんどが農業関係の仕事です。 ベトナムの大学生にいま人気の業種は、女性では金融や大企業の事務、それから教員でしょう。ただ、事務系は、日本で言う総合職ではなく一般職です。 教員に関しては、幼稚園から大学まで学校の種類を情報科学系の仕事に人気があるようです。 チンミンハイ先生

【ベトナム】家庭教師や外資系企業が人気
ベトナムの大学生のアルバイト事情

ベトナムでは、最近までアルバイトをしている学生は多くありませんでした。しかもほとんどが短期のもの。日本の学生のように、1年を通してということはありません。 アルバイトが少なかった第一の理由は、自由になる時間があまりないということです。自宅から通っている学生は、大学が終われば家の仕事を手伝うのが当たり前です。第2の理由は、基本的に仕事が少ないからでしょう。飲食店などでのバイトはとても低賃金なので、ケータイ料金も払えません。 日本では、旅行資金を貯めるためにアルバイトするということがありますが、ベトナムでは現実的に無理です。 ただ現在はちょっと変わってきて、家庭教師などをする学生も少なくありません。外国人のレストランで働いたり、外資系企業で通訳としてアルバイトする学生も増えてきました。 チンミンハイ先生

【タイ】タイの学生がやらない2つのこと
タイの大学生の日常

グローバリゼーションによって世界の経済や文化は均質化傾向にあり、各国の大学生活も大きな違いはなくなってきました。 でも、日本の大学生がよくやっていることで、タイではしないことが2つあるのです。 ひとつはアルバイト。タイでは、学費も生活費も親に出してもらい勉強に専念するのが普通です。そのために、親の方は無理してでも教育費を捻出します。 もうひとつは、お酒です。たとえ二十歳を過ぎていても、学生は基本的にお酒を飲みません。隠れて飲む人もいるかもしれませんが、学生がお酒を飲むというのは、タイではいいイメージではないのです。 じゃあ、何をして遊んでいるのかと言えば、デパートやショッピングセンターに行きます。理由は、涼しくて座る場所もあるから。特にショッピングをしなくてもいいのです。 基本的にお金をかけないで遊ぶというのが、タイの大学生のスタイルでしょう。 ポンシー・ライト先生

【タイ】K-POPがいまの旬
タイの大学生が聴いている音楽

日本でも同じでしょうが、タイでもつい最近までは、外国の音楽と言えば西欧のポップスが主流でした。でも、いま若い世代に人気があるのは、K-POPです。でも、卒業して就職したら、今度は子どもの方が親の面倒を見るということになります。 大学を卒業して仕事を始めたら、給料の半分くらいは親に送金します。なかには、全部あげてしまう人もいます。もともと韓国のテレビドラマがヒットしたことがきっかけで、日本の韓流ブームのようなものが起きているのです。日本でも活躍しているピ(RAIN)、BIG BANG、少女時代、KARAなどはタイでも人気があります。なかでも、注目されているのは2PMというアイドルグループ。メンバーのなかにタイ人がいて、彼はオーディションに合格してこのグループに入りました。そういえば、モーニング娘。のなかにも、以前中国人メンバーがいましたね。こうした影響もあって、タイの学生たちも、多くの人がバンドをやったり、ダンスを練習したりしています。 サックポン・ワッタナスント-ン先生

【タイ】トレンドを追いかける若者はサイアム地区に集まる
タイの都会に住む大学生たちのショッピング

日本では、都会と地方の大学生で大きな違いが見られなくなってきました。でも、タイでは、都会と田舎ではライフスタイルがまだだいぶ違います。 バンコクのような都会の大学生は、外国文化にあこがれています。いまは韓流ブームが起きているので、韓国風がトレンドなのです。そうした流行の最先端を求める人たちは、サイアム地区に集まります。そこは間口が狭い小さなお店がずらっと並んでいて、60パーセントはアパレル関係で、あとはパブやカフェなどがあります。 ここに来ると、最新の韓国風のファッションやグッズも手に入るのです。 流行のものは値段も高かったりするので、大学生が全部揃えられるわけではありませんが。ただ、見てまわるだけでも楽しいので、おしゃれに興味のある人が集まって来ます。 サックポン・ワッタナスント-ン先生

【スペイン】大学4年間で、その道のプロになる実力をつける
スペインの大学生はどんな目的で大学に通っているか

一般的にスペインの大学生は、一年生のときから将来やりたい仕事を意識していると思います。 4年間勉強して、その道のプロになれる実力を身に付けていこうとするのです。 大学には、キャリアセンターのような、就職の相談にのってくれる施設がありません。ですから、大学を出たら自分で勤め先を探します。国立大学が多いのですが、基本的にスペインの大学はみんな同じレベルなのですたとえばわたしの出身地のハエンの大学より、首都のマドリードの大学の方がいいということはありません。あとは、自分の能力です。大学で何を経験したか、どう勉強したかが問われます。新入社員だから一番下から始めなければならない、ということでありません。大学で身につけたことの評価によって、ポジションが決まっていくのです。 カマチョ・ハビエル先生

【スペイン】集まって屋外でお酒を飲む
スペインの学生たちはどんな風に遊んでいるか

スペインの大学生は、月曜日から金曜日までは勉強します。平日はあんまり遊びません。金曜日と土曜日の夜に遊びにいくのが習慣です。 週末になると友だちが集まって、コンビニのようなところでお酒を買って、外で一緒に飲みます。これをボテジョンと言います。ボテージャ(瓶)という単語からできたことばです。居酒屋のようなところには行かず、外で飲むのが習慣です。お店に行かないのは、学生はお金がないからです。アルバイトしている人は少なく、生活費は両親からもらっているのが一般的なのです。 余談ですが、わたしはスペインにいたとき一回もお酒を飲んだことがありませんでした。ボテジョンのような習慣に興味がなく、図書館で本を読むというタイプだったのです。日本に来て日本人の女性と結婚したら、親戚の人が集まってお酒を飲む機会が多く、それでわたしもお酒を飲むようになりました。 カマチョ・ハビエル先生

【スペイン】「本の日」には、本が少しだけ安く買える
スペインの大学はとにかく勉強するための場所

スペインでは、大学は勉強するための場所という認識が強くあります。ですから、部活もありません。そういうわけで、大学祭も、その他のお祭りもないのです。 強いてあげるならば、「本の日F(Dia del Libro)」というのがあります。『ドン・キホーテ』を書いたセルバンテスの命日(4月23日)に開かれるもので、大学だけでなく全国で行われる行事です。この日は、本が少し安く買えます。大学の書店でも割引の値段で本が買えます。そうは言っても5%か10%程度で、しかも基本的に古い本なので、そんなに有り難くはありません。カタロニア地方では、本と一緒にバラの花を贈る習慣があるようです。その他では、有志が集まってちょっとしたイベントをするくらいでしょう。講師を呼んで講演会をしたり、フラメンコの発表をしたりという感じです。ただ、研究発表の場はあります。が自分の書いた本を発表する会などは、よく開かれるのです。 カマチョ・ハビエル先生

【ブラジル】大学はキャリアアップを実現させる場所
ブラジルの大学生は何のために大学に行くのか

ブラジルの大学は「狭き門」です。日本と同じように、私立と国公立の大学がありますが、私立はお金がすごくかかります。それに比べて国公立大学は、すべて無料です。当然、競争率はとても高くなります。大学・大学院への進学率は近年上がってきましたが、それでも14%くらいです。大学はキャリアアップのための場所という認識が、ブラジルにはあります。 フルタイムの仕事をしながら勉強している人も少なくありませんし、家庭をもっている人も、10年ごしで大学卒業をめざしている人もいます。ですから、年齢的にもさまざまな人がいるのです。そんな状況ですから、みんなそれぞれの目標を持っています。 たとえば法学部に入った人は、全員がまず法律関係の職業をめざします。 文学部なら教員になろうとか、入学したときから将来の方向を決めている場合がほとんでしょう。 カルラ・マリア・カマルゴ先生/今里 カズエ先生

【ブラジル】議論というコミュニケーションの方法
ブラジルの大学生はどんなことでも意見を言い合う

ブラジルでは、どんな大学であれ、入学した時点で大学生はエリートです。ですから、学内外でさまざまなことについて議論をします。授業のことであれこれ意見を言ったり、国の政策に対しても「わたしはこう思う」と自分の考えをはっきり言います。ディベートではありませんが、どうしても議論するということになってしまうのです。大学生になると、いろんな種類の本を読むことになりますし、その結果、多く知識を持つようになります。それに加えて、こうしたクリティカルな会話を経験しながら、だんだん大人になっていくのでしょう。でも議論に対しては積極的ですから、学生たちはなんでも議論するようになっていくのです。別に相手を言い負かそうというものではありません。学生たちにとって、それは楽しい時間なのです。 カルラ・マリア・カマルゴ先生/今里 カズエ先生