第21回 「ミツバチたちは大忙し」

夏も盛りになり、暑すぎて庭に出る気がしない日が続いています。

少し前、まだこれほど暑くないころ、私は庭でミツバチの「追っかけ」をしていました。花壇に咲いている色々な花を、彼らがどう利用しているか知りたかったからです。

これはヒルザキツキミソウ。きれいな花ですけれど、日本に定着してしまった外来種の1つです。雌しべの根本に深いくぼみがあるのがお分かりでしょうか。あるときヒゲナガハナバチがここに潜り込むのを見たので、「はは~ん、蜜はここにあるんだな」と思い、花を1輪分解してくぼみの中をなめてみました。うん、甘い。蜜があります。
ほら、ミツバチがこのくぼみに頭を突っ込もうとしています。身体は花粉だらけ。ヒルザキツキミソウの雌しべにこの花粉がくっつきます。
蜜を吸い終わって出てくるときに雄しべを登るものだから、さらに花粉まみれになっていますね。これを他のヒルザキツキミソウの花に(ハチ自身の意図と関係なく)運ぶ、というわけです。
こちらは花壇に植えられたヒナゲシ。5月から6月にかけて一面に咲いて、とてもきれいでした。派手な花は昆虫に対して「食べ物があるよ!」と知らせる看板のようなものですから、蜜もたくさんあるのかしら、と思って1輪分解してみました。ところが、花びらの根元部分をなめてみても全く甘さを感じません。これではハチに来てもらえず、受粉できないような気がしますけれど、ちゃんと実はなっています。ヒナゲシは何でハチを惹き付けているのでしょうか? 観察していて分かりました。
ヒナゲシを訪れたミツバチは、雄しべに取り付いて花粉をかきよせ、身体の毛に付いた花粉も集めて、後脚の花粉団子を大きくしていたのです。花粉にはアミノ酸や核酸などの栄養分が含まれているため、蜜と並んでミツバチにとっての重要な食物です。 ちょうど我々人間が、買いたい物によって行く商店が違うように、ミツバチたちも欲しい資源(蜜、花粉)によって訪れる花を使い分けているようです。