第17回 「ザクロ」

イングリッシュ・ガーデンのブドウのアーチのすぐ脇にザクロの木があることは、あまり知られていないようです。

先日ザクロを片手にぽちぽちとつまんで食べながら庭を歩いていたところ、「どこにあるんですか?」と複数の人から訊かれました。イングリッシュ・ガーデンのブドウのアーチのすぐ脇にザクロの木があることは、あまり知られていないようですね。

ザクロは西アジア原産で広く栽培され、中国では結婚式の時に飾るおめでたい果物だということです。 ザクロは一時期、女性ホルモンであるエストロゲンが含まれているとされて、女性対象の健康食品として人気を呼びました。更年期には女性の卵巣から分泌されるエストロゲン量が減少し、さまざまな症状を引き起こしますし、肌の張り・艶もなくなり、心疾患リスクなども高まりますので、「すわエストロゲン!」と飛びつく心理は分からないではありません。
しかしエストロゲンは動物が生産するホルモンであり、植物は生産しないはずです。もっとも、エストロゲンと似た働きをする(哺乳類の細胞内のエストロゲン受容体と結合する)イソフラボンは、大豆に含まれ、「植物性エストロゲン」と言われることもあります。 ではそのような物質が、ザクロに含まれているのでしょうか? 少なくとも平成12年4月6日付の国民生活センターによる自主調査テスト結果では、ザクロを用いた健康食品複数種類に、1)エストロゲンは含まれておらず、2)既知の「植物性エストロゲン」も検出されず、3)エストロゲン受容体と結合する物質も検出されなかった、ということが分かっています。少なくともエストロゲン供給という 観点からは、ザクロにはあまり効用がなさそうです。 人はいつまでも若くいられるわけではありません。「女性は少しでも若い方が良い」というステレオタイプの価値観なんか蹴飛ばした方が、気楽に年を取れる気がします。赤い宝石のような実を一粒一粒食べるゆったりした時間だけで、ザクロからもらうものは十分ではないでしょうか。