第16回 「フェンネルとアカスジカメムシ」

フェンネルの花には、必ずと言っていいほど、アカスジカメムシがいます。

イングリッシュ・ガーデンには、何株かフェンネル(ウイキョウ、セリ科)が植えてあります。これは人の背丈を超すほど大きく育つ多年生のハーブで、原産地は地中海沿岸です。7月下旬には小さな黄色い花を咲かせていました。花には蜜がたくさんあるため、ミツバチなどもやってきます。小さな花が集まって(“集合花序”といいます)平たい台のようになっていますから、虫からは黄色い絨毯のように見えるかもしれません。

フェンネルの花には、必ずと言っていいほど、アカスジカメムシがいます。赤と黒の派手な縦縞模様のこのカメムシは、形といい色といいヨーロッパの楯の紋章を思わせる、なかなかお洒落な虫です。アカスジカメムシはフェンネルの花の上で、茎や若い実の汁を吸ったり、交尾したりしていますが、ただぼーっとしているように見える個体もいます。平たい集合花序の上でじっとしている派手なカメムシの行動は、一見、とても不思議です。昆虫を食べる鳥に丸見えなのですから。しかしカメムシの多くはとても臭いので、鳥も食べません。赤と黒の目立つ縞模様は、鳥に対する警告色(まずい、毒あり、危険、だから食べるな!というシグナル)なのかもしれません。ただアカスジカメムシの場合、近くに寄っても匂いらしい匂いはしないので、派手な警告色は見かけ倒しの可能性もあります。もっとも、つついて苛めれば匂いを出すのかもしれませんが、触らぬカメムシに祟りなし。そっとしておこうと思います。今日もアカスジカメムシは、フェンネルの花の上でのんびりした一日を過ごしていることでしょう。私も期末試験の採点を終えて、少しはのんびりしたいものですが・・・。
フェンネルは育ちきる前、初夏の若い葉を(ヒトが)食べます。私はスモークサーモンにフェンネルの若葉を散らしたサンドイッチが好きです。5月ごろの休日の昼食に食べると、何だか豊かな心持ちになります。お試しください。