第12回 「ローズマリーが咲きました」

ローズマリーは地中海沿岸原産の常緑灌木で、古くからヨーロッパで使われているシソ科のハーブ(香草)です。

イングリッシュ・ガーデンの一角、髭面のパーン(注)が口から水を時々吐き出している噴水の周囲に、ローズマリーが大きな茂みになっているのをご存知でしょうか。私はこんなに豪勢にローズマリーが生えているところを、他に知りません。

私は生物学が専門です。生物の正式な種名は「学名」と言われるもので、ラテン語、もしくは他言語であってもラテン語の文法規則に従って「二名法」という法則で命名されます。 たとえば私たちヒトには、Homo sapiens という学名がついています。前半の「Homo」は「人間」という意味、後半の「sapiens」は「知恵のある」という意味です(昨今の人間社会を見ると、「知恵のある」というのは嘘ではないか、と思えますが・・・)。 しかし学名の起源はギリシア語のこともありますし、大きなグループを示す言葉もギリシア語のことが多いのです(例えばエビやカニの仲間は、十脚目 Decapoda)。生物学科ではヨーロッパ古典語は教えてくれませんでしたから、独習したいと考えていましたが、どうすれば良いのか分かりませんでした。
ローズマリーは地中海沿岸原産の常緑灌木で、古くからヨーロッパで使われているシソ科のハーブ(香草)です。小さいながら可愛らしい青い花が、冬から春先にかけて咲きます。花の形を見ると、確かにシソによく似ています。 これは肉料理にも魚料理にも合います。好みの匂いかどうか、まずは葉を一枚摘んで揉みつぶし、香りをかいでみてください。大変強い、特徴的な香りがします(ただし、見分けがつかない人は絶対に食べないこと!)。私が時々作る簡単なお料理をご紹介しましょう。 蓋を開けたとたんに、ローズマリーの香りがただよい、幸福な気持ちになれる一品。 なおローズマリーを摘む時には、いずれ刈られる運命にある、通路に面した方から摘むようにしましょう。 (注) : 古代ギリシアの牧羊神。山羊の角と山羊の脚をもつ。C.S.ルイスの「ナルニア国ものがたり」に出てくるフォーンは、このパーンと同じです。

鶏肉のトマト香草煮込み

材料: 鶏モモ肉1枚(約300g)を唐揚げ用くらいに切る。タマネギ半個を適当にスライスする。トマト2個を、へたを取ってざくざく切る。ローズマリーは、15cm~20cmの先端部の枝を2~3本、洗っておく。他には、コンソメ・キューブ、好みでコショウ、白ワインか日本酒を少々、オリーブオイルを用意する。 作り方: 1)煮込み用の鍋にオリーブオイル少々を入れ、タマネギを炒める。そこにトマト、コンソメ・キューブを加えて煮る。 2)鶏モモ肉をフライパンで両面焼く。 3)2を1に入れ、白ワインもしくは日本酒を少し入れ、ローズマリーを入れて蓋をし、15分煮込む。5、6分煮たら、ソースの上に出ている肉を裏返して、万遍なく味がしみるようにする。