第6回 「学生諸君、天晴れ!」

手の届くところの実がすべてない!

正直に言って、私は神田外語大学の学生を少し見くびっていました。講義の一環として庭に行き、「これがカリン、こっちはモモ、あれはリンゴ」と教えるまで誰も気がつかないので、私自身の「収穫量」には影響ないだろう、と高をくくっていたのです。

ところがどっこい、神田の学生は覚えが早い! イングリッシュ・ガーデンに今年新たに植えられた数本のリンゴの木には、初年度から小振りながら美味しそうな実がつき、熟すのが楽しみでした。しかしある時、いつものように庭を巡回していたところ、リンゴの木の下で私は愕然としました。 手の届くところの実がすべてない! ・・・天晴れです、学生諸君。ヒトたるもの、そうでなくてはなりません。生物学の講義内容は忘れても、食べられる実について覚えていれば、どこへ行っても生活できるでしょう。私が1個だけ入手したキャンパス産のリンゴは、果肉が引き締まり、水気が多く、甘酸っぱくて美味でした。今年「しまった、逃したぞ」と思った人は、来年頑張ってください。 リンゴ(バラ科)は中央アジアの山岳地帯近辺が原産地と言われ、そこから東西に広がりました。寒冷地で育ちやすく、現在も世界中の亜寒帯から温帯にかけて栽培されています。ヨーロッパではリンゴをズボンの腿あたりでごしごしこすって、皮ごとかじり、種だけプッと吐き出す人がよくいます。残念ながら神田外語大の学生は、まだリンゴの丸かじりが下手なようですね。
リンゴの木の下に、写真のような芯が落ちていました。これでは実がもったいないし、学内の美観上も良くありません。どうせなら、美しく種だけにしましょう。もっとも翌日この芯は、ネズミによってほとんど種だけにされていましたが・・・。