第8回 「黄金の果実」

今年のカリンは去年よりも豊作でした。

イングリッシュ・ガーデンで10月下旬ごろからひときわ目立っているのは、黄色い大きな果実です。小さなものでは子どもの握り拳ほど、大きなものではリンゴほどもある実が、あまりうなだれることもなく、何やら堂々と実っています。

これは中国原産のカリン(バラ科、リンゴやナシに近い仲間)です。日本でも古くから庭木として栽培され、特に長野県では栽培が盛んで、のど飴やカリン酒などの原料として用いられています。4月ごろには可愛らしいピンク色の花が咲いていました。 今年のカリンは去年よりも豊作でした。熟すと自然に木から落ちるため、高いところに実があっても「いずれ拾えるだろう」と私はのんびり構えています。というのもこのカリン、熟してもかちかちに固くて酸っぱく、ヒヨドリやムクドリも見向きもしないからです。ナシの実の中のガリガリした固い粒を「石細胞(せきさいぼう)」と呼びますが、カリンは果肉中にびっしりと石細胞があるため、生ではとても食べられません。けれど皮から発する芳香はすばらしく、実を1個置いておくだけで部屋中が甘く香ります。 毎日着々と拾ってためていたカリンを、ジャムにしました。 パンに塗って食べても美味しいのですけれど、小麦粉・卵・重曹・砂糖と混ぜて焼いたところ、中がきれいな茜色の、しっとりしたケーキになりました。  

カリン・ジャム

材料: カリン、水、砂糖 作り方: よく洗ったカリンを縦4つに切り(ものすごく固いので、ご注意を!)、種を取り除き、皮ごと3~5mm幅に切る。ホウロウのお鍋にカリンを入れ、ひたひたに水を入れて火にかけ、煮立ったら弱火にして30分煮る。火を止め、金属製の2mm目くらいのザルを使って煮汁と実に一旦分け、ザルでざっと裏ごしした実を煮汁と混ぜる。砂糖を適量加えながら煮て(砂糖の量は味見して決めるが、かなり沢山必要)、ぽってりした感じになったら火を止め、熱いうちに耐熱の蓋付きガラス瓶に入れ、冷めたら冷蔵庫で保管する。