第4回 「蜂たちの贈り物」

この春から、セイヨウミツバチの大量死・大量失踪が話題になっています。

ミツバチというと、まず思い浮かぶのは蜂蜜ですね。しかし日本で果実の受粉のために、わざわざセイヨウミツバチやセイヨウマルハナバチを輸入して使っていることを、今年の「ミツバチ騒動」で初めて知った人も多いのではないでしょうか。現時点ではまだセイヨウミツバチの大量死の原因は解明されていないようで、今後の研究結果が待たれるところです。

ところで私たちの身の回りには、どんな蜂がいるのでしょうか? この春から時々観察してみたところ、神田外語大学の構内には少なくとも、トウヨウミツバチ(日本在来種)、セイヨウミツバチ、トラマルハナバチ、クマバチ、それに名前は分からないもののヒゲナガハナバチの1種も飛来するようです。今の季節は芝グラウンドのシロツメクサの花や、イングリッシュ・ガーデンの真っ赤なパイナップル・セージ、青紫のブルー・セージの花で、これらの蜂が吸蜜する姿を見ることができます。大学構内では農薬散布を行わず、春から秋まで花が絶えないため、蜜を吸う昆虫にとって良い環境なのでしょう。 人間は美しさを求めて花を植えますが、そもそも植物が目立つ花を咲かせるのは、ヒトに見てもらうためではありませんでした。鮮やかな美しい花は、昆虫を呼び込む看板のようなものです。「ここに蜜があるよ!」というサインなのです。蜜という貴重な物質を昆虫に与える植物は、昆虫の身体に花粉を付け、同種の他の花の雌しべに花粉を運んでもらえます。昆虫側は蜜を求めているだけなのですが。 そして私たちもまた、蜂たちの意図せざる贈り物をいただいています。イングリッシュ・ガーデンの芝の斜面に、ブラックベリーが植えられているのをご存知でしょうか? 5月、白やピンクの可愛らしい花を咲かせていたブラックベリーは、ミツバチの熱心な来訪を受けて結実し、7月に入って次々に熟しつつあります。赤い実は未熟なもの、真っ黒な実は熟したものです。熟しても酸っぱいブラックベリーですが、蒸し暑い今の季節に食べると、すっきり目が覚める気がします。農薬が散布されていないおかげで、摘んでそのまま口に放り込めるのも嬉しいですね。「虫なんか嫌いだ」と言っている人もご一緒に、「虫の恵み」をおひとついかがですか?