第2回 「サクラ、ミノル」

頼もしい緑が生い茂る桜。この緑の葉むらを、ちょっと観察してみてください。

4月にキャンパス内をピンクや白の雲のように彩った桜は、1ヶ月半ですっかり頼もしい緑になりました。
この緑の葉むらを、ちょっと観察してみてください。赤や黒の小さな丸いものが点々と見えませんか? そう、今は桜の実の季節なのです。

私たち日本人の多くは、桜は花を愛でるもの、という固定観念を持っているかもしれませんが、鳥の考えは違うようです。キャンパス内にはお花見の主力とも言うべきソメイヨシノの他に、葉が先に出て少し大ぶりの白い花を咲かせるオオシマザクラ(伊豆諸島などに多い野生種)も多数植わっています。このオオシマザクラの花は香りがあり、私は大好きですけれど、ヒヨドリたちも大好きです。それは花に蜜があるためで、ヒヨドリたちは梢で花をつみ取っては、蜜を吸って落とします。 鳥たちが好きなのは、花の蜜だけではありません。黒く熟した小さなサクランボは、ヒヨドリやムクドリの大好物です。私も今の時期、ちょいちょいといただいています(手の届く範囲内ですが。それより高い所の実は、やはり鳥のものでしょう)。ソメイヨシノよりもオオシマザクラの実の方が、少し大きくて食べごたえがあるようです。 黒い実はダークチェリーを野性的にしたような味、と言ったら良いでしょうか。ジューシーで甘酸っぱく、少し苦みがあり、口の中にふわりと桜の香りが広がります。今年はオオシマザクラのサクランボで、シロップを作ってみました。 出来上がった濃厚な赤紫色のシロップは、氷水などで割って飲みます。私は少し酸味が欲しかったのでレモンの絞り汁を加え、ソーダ水で割ってみました。赤く落ち行く夕日を見ながらベランダで飲む、泡立つ深紅のサクランボ・ソーダ。贅沢な初夏の宵でした。

オオシマザクラのサクランボシロップ

材料: オオシマザクラの実(黒く熟したもの)をカップ1杯、水少々、砂糖大さじ2杯。 作り方: ホウロウのお鍋に洗った実と水と砂糖を入れ、火にかける。煮立ったら弱火にする。ここで待つことしばし。液体にうっすらと赤い色がつき、実が少しふやけた感じになってきたら、木しゃもじで実をざくざくつぶす。この時飛び散る果汁は、白い服に付いたら絶対に落ちないので、お覚悟を。