航空業界に興味のあるみなさんの中には、こんな疑問や悩みを持っている人もいるでしょう。
キャビンアテンダントとグランドスタッフの仕事は全く異なります。キャビンアテンダントは出発から到着までの「機内の仕事」を担当するのに対し、グランドスタッフは出発までと到着後の「空港での仕事」を担当します。
この記事では、当ブログを運営する神田外語学院出身の現役キャビンアテンダントやグランドスタッフの方に話をうかがい、
- キャビンアテンダントとグランドスタッフの仕事内容(業務内容、1日の流れ、仕事の魅力など)
- キャビンアテンダントとグランドスタッフの違い
- キャビンアテンダントに向いているタイプ・グランドスタッフに向いているタイプ
を解説します。最後まで読めば、キャビンアテンダントとグランドスタッフの違いがよく理解できるはずです。
※この記事における「グランドスタッフ」は、「空港内で旅客サービス業務に従事する人」を指します。
目次
1. キャビンアテンダントとグランドスタッフの仕事
キャビンアテンダントとグランドスタッフの仕事は全く異なります。
キャビンアテンダントは「出発から到着まで」の「機内での仕事」を、グランドスタッフは「出発まで」と「到着後」の「空港での仕事」を担当しています。
1-1.キャビンアテンダントの仕事
キャビンアテンダントの仕事内容
キャビンアテンダントの仕事は、主に「機内サービス業務」と「機内保安業務」の2つです。
■機内サービス業務
飲み物や食事の提供、機内販売、機内アナウンスなどを担当します。
■機内保安業務
キャビンアテンダントの最も重要な仕事は、「保安要員」として機内の事故を防ぎ、旅客の安全を守ることです。機内の設備の確認や、旅客の安全確認、緊急事態時の対応などを行います。
1日の流れ
国内線を担当する場合は、以下のような流れです。
一般的な会社員とは違い、勤務開始・終了時間は担当便によって毎日変わります。このように早朝から出社する日もあれば、夕方から仕事が始まる日もあり、生活は不規則になりがちです。
仕事の魅力
キャビンアテンダントの仕事の魅力をいくつか紹介します。
■たくさんの人と出会える
飛行機は性別・年齢・国籍・習慣が異なる様々な人が利用します。そうした人々と毎日接する環境のキャビンアテンダントの仕事はとても刺激があります。
■英語を使う機会が多い
国内線も含めて多くの外国人が利用するので、英語を使う多くの機会があります。定型的なやりとりだけでなく、旅客と英語で雑談することもあります。
■国内外の様々な場所に行ける
国内線・国際線ともに宿泊を伴う乗務があるため、現地を観光したり食事を楽しめる機会もあります。普段はなかなか行けないような場所を訪れられるかもしれません。
※キャビンアテンダントの仕事内容の詳細は以下の記事で解説しています。
1-2.グランドスタッフの仕事
グランドスタッフの仕事内容
グランドスタッフの仕事は、「出発便業務」と「到着便業務」の2つに大別できます。
■出発便業務
チェックインカウンターでの搭乗手続きや預け入れ手荷物の取り扱いのほか、出発ロビーや搭乗ゲートでの案内業務を担います。搭乗時刻になっても現れない旅客を探して空港中を走り回ることも多々あります。
■到着便業務
到着した旅客の乗り継ぎ便案内や車いす利用者などのサポート、手荷物の受け取りエリアでの対応などを担当します。
1日の流れ
グランドスタッフの1日は、以下のような流れです。
グランドスタッフもキャビンアテンダントと同様に、担当便によって勤務開始・終了時間が毎日変わります。羽田空港など24時間運用している空港では、深夜まで勤務することもあります。
仕事の魅力
グランドスタッフの仕事の魅力をいくつか紹介します。
■「空港の顔」として働ける
飛行機の旅には、予約部門や整備士、客室乗務員など多くの人が関わっていますが、基本的に旅客が初めて顔を合わせるのはグランドスタッフです。旅の第一印象を左右する「空港の顔」として働ける魅力があります。
■たくさんの旅客と出会える
キャビンアテンダントと同様、日本全国、世界各国の旅客を相手に接客ができます。これは航空業界ならではの魅力です。
■チームで仕事をする達成感がある
飛行機を時間通り出発させるには、チェックイン、出発ロビー、搭乗口など、各現場のグランドスタッフ同士での協力が不可欠です。全員でチームとして一丸になって、一便一便を安全に、定刻で飛ばすという達成感を味わえます。
※グランドスタッフの仕事内容の詳細は、以下の記事で解説しています。
2.キャビンアテンダントとグランドスタッフの比較
続いては、キャビンアテンダントとグランドスタッフを要素ごとに比較解説していきます。
2-1.就職倍率
就職倍率(推定値)を比較します。
キャビンアテンダント
推定約20倍〜
エントリーシート提出者(一次選考参加者)を母数として、業界全体では推定で約20倍~と言われています。ローカル系航空会社はもともと採用予定人数が少ないため、100倍程度となったこともありました。
ちなみに、大手航空会社の2021年度採用予定人数はANAが約460名、JALが約400名です。それぞれ1万名近くがエントリーすると考えられます。
グランドスタッフ
推定約15〜20倍
エントリーシート提出者(一次選考参加者)を母数として、業界全体では約15~20倍と推定されます。採用者数は年度や会社によって差がありますが、羽田空港は発着枠の拡大などで増加傾向にあります。
2-2.就職時に求められるもの
就職時に求められる資格や語学力を比較します。
キャビンアテンダント
■資格
就職時に求められる特別な資格や免許はありません。
■身体条件
身体条件はほぼないと考えて問題ありません。「身長160cm以上が基準」という話を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、日系航空会社では身長に関する条件は示されていません。
※身体条件についてはこちらの記事でさらに詳しく解説しています。 キャビンアテンダントになるには?元CA教官が条件・進路対策を解説 (3章) |
■語学力
多くの企業が「TOEIC®600点以上または同程度以上の英語力が望ましい」としています。
これは、一般的には英検2級程度と言われているレベルです。TOEIC ®運営団体のデータによれば、2018年度の大学生の平均スコアは567点ですので、今は英語が苦手だという人も、しっかり勉強すれば問題ありません。
(参考)
JAL 客室乗務職 募集要項
応募資格
(中略)
(4)TOEIC600点以上、または同程度の英語力を有することが望ましい。
(参考)TOEIC® Program DATA & ANALYSIS 2019 まとまる | 一般社団法人国際ビジネスコミュニケーション協会
※キャビンアテンダントに求められる英語力については、こちらの記事で詳しく解説しています。 TOEIC600点?キャビンアテンダント就職に必須の英語力を解説 |
グランドスタッフ
■資格
キャビンアテンダントと同様、就職時に求められる特別な資格や免許はありません。
■語学力
「英検2級、もしくはTOEIC®550点程度以上の英語力が望ましい」とされています。
(参考)
JALスカイ 募集要項
応募資格
(中略)
英語能力:英検2級、もしくはTOEIC550点程度以上の英語力を有する方が望ましい。
但し、就職後の現場では、トラブル対応や様々な案内など、キャビンアテンダント以上に英語力を求められるという実態があります。TOEIC®スコアだけでは測れないような幅の広い英語力が必要です。
■その他
体力や精神力が必要です。グランドスタッフは基本的に立ち仕事で、空港を走り回ることも多々あるからです。さらに、トラブルやクレーム対応も日常茶飯事なので、それらに対応できる精神力も必要になります。
※グランドスタッフに求められる英語力については、こちらの記事で詳しく解説しています。 グランドスタッフに必要な英語力とは?勉強法や空港放送の例文も紹介 |
どちらも「人間力」が求められる
英語力のほか、キャビンアテンダントやグランドスタッフは「人間力」が重視されます。
「人間力」とは、ウィット(機転)、想像力、リーダーシップ、傾聴力など、さまざまな要素を融合したものです。また、第一印象で性格が良いと思われる人、人柄がよく誠実な人が求められる傾向があります。
2-3.学歴
学歴条件はキャビンアテンダント・グランドスタッフとも同じで、高等専門学校・専門学校・短大・大学・大学院卒が対象です。理系・文系は問われません。高校卒業後すぐに就職することは基本的にできません。
2-4.勤務形態(休日)
勤務形態を比較します。
キャビンアテンダント
シフト制の勤務で、休日もそれに応じます。企業にもよりますが、4日働いて2日休みという「4勤2休」サイクルが基本になっています。その他、企業によって年次有給休暇などがあります。
勤務時間は担当便によって異なるため、早朝4時出社ということもあれば、昼過ぎから出社というパターンもあります。そのため、生活は不規則になりがちです。
また、月の半分程度は地方や海外就航地でのステイ(宿泊)です。自宅に数日帰れないこともよくあります。
グランドスタッフ
キャビンアテンダントと同じくシフト制の勤務で、休日もそれに応じます。企業にもよりますが、4日働いて2日休みという「4勤2休」サイクルが基本です。
勤務時間は担当便によって早番・遅番があり、キャビンアテンダントと同様に生活が不規則になりがちです。
2-5.給料
キャビンアテンダント
初任給は約18万円~です。
地上での訓練(数か月)を終えて乗務が始まると、これに加えて乗務手当などが付くようになります。
JAL 客室乗務職 新卒募集要項より
初任給188,000円(左記に加えて乗務時間に応じた乗務手当や各種手当あり)
※キャビンアテンダントの給料については、こちらの記事で詳しく解説しています。 キャビンアテンダントの給料はどれくらい?企業・学歴・年齢別に解説 |
グランドスタッフ
初任給は約18万円~です。
ANAエアポートサービス 求人情報より
基本給:186,100円(大卒22歳初任給モデル 諸手当含まず)
(引用元)ANAエアポートサービス株式会社 求人情報 2023年度新卒入社正社員募集[PDF]
2-6.所属会社
実は、キャビンアテンダントとグランドスタッフは所属している会社が違うケースがあります。
キャビンアテンダント
航空会社に所属しています。
例えば、全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)などです。
グランドスタッフ
ハンドリング会社に所属しています。
ハンドリング会社とは、グランドスタッフの業務を専門的に請け負う会社です。航空会社のグループ企業もありますが、航空会社と直接関係ない企業もあります。
具体的には、以下のような会社があります。
ANA系:ANAエアポートサービスなど
JAL系:JALスカイなど
独立系:スイスポートジャパンなど
つまり、例えばJALのグランドスタッフになりたい場合は、「JAL」ではなく「JALスカイ」などのハンドリング会社に応募するということを覚えておきましょう。
ただし、スカイマークなど、航空会社がグランドスタッフを直接雇用している例もあります。
2-7.就活スケジュール
キャビンアテンダント、グランドスタッフとも、一般的な企業と同じように、エントリーシート(応募書類)や面接での選考です。スケジュールは年や企業によって異なりますが、グランドスタッフの方が全体的に少し遅い傾向です。
参考までに、両者の2020年採用は以下のようなスケジュールでした。
大手航空会社キャビンアテンダント
4月上旬:エントリーシート締切
6月頃〜:面接(複数回)、身体検査など
7月頃〜:内々定通知
大手航空会社系グランドスタッフ
4月下旬:エントリーシート締切
6月頃〜:面接(複数回)、健康診断など
7月頃〜:内々定通知
2-8.キャリアパス
どちらも一定期間勤務すると、管理職などとして現場以外の仕事ができるようになります。
キャビンアテンダント
会社によりますが、10年〜15年程度働くと、管理職としてオフィスで働けるようになります。オフィス勤務となった場合は基本的にフライトはありませんが、数か月に一度程度、客室乗務員としての資格維持のために乗務する場合があります。
グランドスタッフ
会社によりますが、早ければ3年〜5年程度で部署異動となり、現場を離れてオフィスで管理や統括の仕事をするケースもあります。異動がない会社もあります。
2-9.男女比
キャビンアテンダント、グランドスタッフの両方とも、女性比率が非常に高いのが特徴です。
具体的なデータはありませんが、両方とも女性が9割以上の比率と考えられます。大手航空会社では全体で数千名が所属するキャビンアテンダントのうち、男性は数十名程度と言われています。
(参考)
JALスカイ(JAL系ハンドリング会社)
Q.男女比率はどれくらいですか?
A.女性93%、男性7%の比率となっています。(2022年2月現在)(引用元)よくある質問 | 採用情報 | 株式会社JALスカイ
ANAエアポートサービス(ANA系ハンドリング会社)
男女比率 3:7(引用元)数字でみるANA AS|ANAエアポートサービス株式会社
※編集註:いずれも会社全体の比率です。運航管理や貨物取扱いなどにあたる人も含むため、旅客担当のグランドスタッフの男女比ではありません。
ここまでに解説したキャビンアテンダントとグランドスタッフの違いを踏まえ、3章ではキャビンアテンダントやグランドスタッフに向いているタイプを解説します。
3.キャビンアテンダントもグランドスタッフも適性に大きな違いはない
自分はキャビンアテンダントとグランドスタッフのどちらに向いているのか気になった方もいるかもしれませんが、どちらも適性に大きな違いはありません。
特に以下の3つが共通しています。
3-1.普段から時間に正確
普段から自分で時間をしっかり管理でき、時間通りに動ける人は、航空業界にも向いていると言えるでしょう。公共交通機関である飛行機は、時間の正確さが求められるからです。現場の時間管理が甘いと、大きな遅延やトラブルに直結してしまいます。
3-2.傾聴力や判断力に長けている
飛行機の運航には天災などのトラブルが常につきまとい、そのたびにキャビンアテンダントやグランドスタッフには臨機応変な対応が求められます。そうした中で、旅客一人ひとりが求めていることをしっかり聞き、正確な判断をする必要があるからです。
3-3.外国語に抵抗がなく、語学が好き
英語などの外国語が好きな人も向いています。第1章などでも触れているように、外国人旅客も多い航空業界では、英語で対応しなければならない場面が度々訪れるからです。接客能力向上のため、自ら進んで外国語を勉強する積極性も大切です。
※キャビンアテンダントの適性は、こちらの記事で詳しく解説しています。 ※グランドスタッフの適性は、こちらの記事で詳しく解説しています。 |
4.キャビンアテンダント・グランドスタッフをめざすなら神田外語学院
キャビンアテンダントやグランドスタッフをめざすなら、神田外語学院の国際エアライン科がおすすめです。
神田外語学院では、毎年多くの学生を航空業界に送り出しています。
日本航空 竹内 杏里さん
国際エアライン科 2016年3月卒業
ANA成田エアポートサービス 安藤 美紀さん
国際エアライン科 2014年3月卒業
4-1.就職活動の土台となる「人間力」を向上させる授業
教員の多くはJALやANAなどの大手航空会社の元客室乗務員で、学生一人ひとりを手厚くサポート。授業も、就職活動の土台となる「人間力」を向上させるためのカリキュラム構成です。その一部を紹介します。
イメージコンサルティング
1年次は、表情や所作、身だしなみなどの外面について、周囲に好印象を与えるように磨いていきます。2年次にはマナー・プロトコールの資格取得を通じて、国際人としてより深みのある人間に成長していくことを目指します。
時事研究
広い視野を持ち、社会の関心を高めることにより社会で円滑なコミュニケーションを取れるようになることを目的としています。毎回、時事問題に関するプレゼンテーションを行います。
美しい日本語講座
採用試験では「お客様に信頼される美しい日本語」が求められています。美しい日本語を身につけ日本語検定の取得を目指すほか、合格するエントリーシートの作成トレーニングも行います。
4-2.共通英語科目で必要な英語力を強化
また、1年次から毎週1コマ90分×9コマ(=13.5時間)の英語共通科目で総合的な英語力の強化を図ります。
生きた英語を学ぶ国際コミュニケーション英語(EIC)
必修共通科目の国際コミュニケーション英語(EIC)では週5回、外国人教員から英語で英語を教わることで、「読む」「聞く」「書く」「話す」の英語4技能を強化します。
授業は20名以下の少人数の習熟度別クラスで、日本語禁止という環境で行われています。授業以外の時間でも留学生と英語で会話ができるECL(English Conversation Lounge)などを活用することで、生きた英語を自分のものにすることができます。
就職活動に必要な英語力をクリアするTOEIC®対策講座
TOEIC ®対策の授業が週2コマあり、習熟度に合わせたクラス編成で着実なスコアアップを目指すことができます。神田外語学院2年生のTOEIC ®平均点は611点(2023年3月卒業生実績)。グランドスタッフやキャビンアテンダントの応募条件となる「550〜600点」をもちろん上回っています。
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神田外語学院に興味をお持ちの方は、教育の特長について紹介している以下の記事もぜひご覧ください。
5.まとめ
この記事の内容をまとめます。
■キャビンアテンダントとグランドスタッフの仕事は全く異なる
■キャビンアテンダントとグランドスタッフには以下のような違いがある
■キャビンアテンダントもグランドスタッフも適性は大きく変わらない
■どちらも特にこの3つが大切
・普段から時間に正確
・傾聴力や判断力に長けている
・外国語に抵抗がなく、語学が好き
キャビンアテンダントとグランドスタッフには、共通する部分も異なる部分もあります。しっかり把握して、将来の進路を考えてみてください。
※キャビンアテンダント・グランドスタッフを目指している方には、以下の記事もおすすめです。