「子どもが全ての大学に落ちてしまった……」
自分の子どもが受験勉強を一生懸命頑張ってきたのに、どこの大学にも合格できなかった時、親としてもとても悲しい気持ちになってしまいますよね。どんな言葉をかけていいのかわからなくなってしまうと思います。
ただ、このタイミングで親である皆さんが取り乱してはいけません。落ちた本人はこれから何を目指して、どのように動いていくべきなのか、ほんのわずかな時間の中で視野狭窄のまま選択を迫られるからです。
お子さんがつい、やけになって「もういい、就職する」「フリーターになる」など、心にもないことを言ったりしてしまうこともあります。お子さん自身が冷静になり、ベストだと思える選択肢をとるためには、親の冷静かつ温かいサポートが欠かせません。
同時に、親がしっかりサポートするためには、「子どもにどんな選択肢があるのか」「どのように接してあげる方がよいのか」、理解をしておく必要があります。
本記事ではその「選択肢」と「接し方」について詳しく解説していきます。
最後まで読んで、お子さんがベストな選択肢を取れるようサポートしてあげてください。
目次
1.大学全落ちした時に残されている6つの選択肢
大学全落ちしてしまった時の選択肢としては、主に以下の6つが挙げられます。
選択肢として真っ先に思い浮かぶのは浪人でしょう。進学志望ということを考えれば、基本的におすすめは「浪人」か「専門学校進学」のどちらかです。この2つの選択肢は将来の進路の幅が広がりやすいからです。その他の選択肢も含めて、それぞれ詳しく解説していきます。
1-1.浪人する
【メリット】
大学生になる夢を諦めずにすむのは大きなメリットです。
【デメリット】
基本的に予備校等に通うことになると思いますが、まとまった費用(100万円程度)がかかるのがデメリットです(自宅浪人はおすすめしません)。1年という時間を受験勉強だけにそそぐため、お子さんにとって体力的にも精神的にも非常に負担が大きいことも挙げられます。保護者の方の適切なサポートが欠かせません。
勉強の仕方や志望校の選び方が悪く、浪人を重ねてもうまくいかない人もいます。浪人をおすすめできる人とそうでない人について、以下の記事で解説しています。
1-2.専門学校に進学する
【メリット】
専門学校で学べば、就職に役立つ専門スキルを身につけられることがメリットです。将来やりたい仕事が決まっている場合は、無理に大学進学にこだわる必要がない場合もあります。大学進学志望であれば、専門学校から編入学を目指すことも可能です。浪人しないのなら専門学校への進学をお勧めします。
【デメリット】
デメリットとしては、大学卒(学士)ほど就職の間口が広がらないという点があります。また、大学編入学は2年次または3年次になるため、1年次から入学することはできないという点もあります。
専門学校や短期大学から、4年制大学の2年次もしくは3年次に入ることができる制度です。専門学校や短期大学の在学中(主に2年生の夏~冬にかけて)に、4年制大学の編入学試験を受験し合格すると、翌3月から大学2年生や3年生として4年制大学に編入学できます。
日本にある700校以上の大学のうち、約7割程度(国公立含む)が専門学校からの編入学を受け入れており、法政大学、駒澤大学、日本大学といった私立大学だけでなく、東北大学、名古屋大学、埼玉大学などの国立大学への編入学も可能です。また、9割以上の大学が短期大学からの編入学を受け入れています。
専門学校から4年制大学の3年次に編入する流れについては、以下の記事やイメージ図を参考にしてみてください。
1-3.就職する
【メリット】
会社員として社会的地位が確立されることがメリットです。進学した人よりも早く社会人経験を積むことができます。定期的に給与が入ってくるようになるので、ひとまず独立できるということも挙げられるでしょう。
【デメリット】
そもそも時期的にすぐに就職することが難しいという点が挙げられます。年度の途中からの入社を目指すことになり、就職先や収入面が限定されがちになる傾向にあることがデメリットです。大学や専門学校卒に比べると高卒を受け入れている企業は少なく、収入や昇給も低めに設定されている傾向にあります。
1-4.留学する
【メリット】
語学力が身につくだけでなく、異文化の人と接することで視野が広くなることがメリットです。海外に友人ができるため、そのネットワークが将来役立つこともあります。
【デメリット】
大きな費用がかかるのがデメリットです。特に中・長期になると100万円以上かかるケースが多くなります。語学留学にかかる費用は以下の記事を参考にしてください。
長期留学は専門学校や短期大学に入学する前にしておこう
2週間~1か月程度の留学であれば、専門学校や短期大学の長期休みを利用して行くことも可能です。ただ、2年間の在学期間中、休学せずに半年や1年の長期留学に行くのは難しいケースが多いです。中・長期の留学に行きたいのであれば、専門学校や短期大学に入学する前に行っておきましょう。専門学校や短期大学を卒業した後に長期の留学に行くと、就職活動で不利になりがちだからです。
日本の企業は「卒業見込み者のみ」を対象に募集することが多く、「既卒者」・「第二新卒」を募集している企業は、まだまだ少ないのが実情です。長期留学するなら、専門学校や短期大学に入学する前にしておきましょう。
1-5.アルバイトする
【メリット】
不安定ながらも収入を得られるので、何もしないよりは精神的に安心できるでしょう。
【デメリット】
アルバイトを続けてもなかなか昇給が見込めないことが多く、職歴にもならないため転職による収入UPも見込めないことがデメリットです。将来の収入が増えず、生活の水準が落ちがちになります。
1-6.家事手伝い
【デメリット】
収入もない上、学歴・職歴にもならないことがデメリットです。
前述の通り、基本的には「浪人する」もしくは「専門学校に進学する」という選択肢がお勧めですが、お子さんの意向をしっかりつかんだ上で選択させてあげたいですよね。次章では、傷心のお子さんとしっかり話し合うために、お勧めの接し方をご紹介していきます。
2.大学に全落ちしてしまった子への接し方のコツ
全ての大学に落ちてしまった時、言わずもがなお子さんは心に傷を負っています。まずはとにかく話を聞いてあげることに徹し、本人の感情が落ち着くタイミングが来るのを待つことが極めて重要です。焦る気持ちはわかりますが、落ちたばかりの時点で親の方から色々と意見を提示するのは逆効果です。人間は急激な変化や衝撃があった場合、以下のように反応すると言われているからです。
■急激な変化や衝撃があった場合の心の推移
大学受験の結果が出た段階では、お子さんは(1)もしくは(2)の段階にいることが多いと思いますが、この時に建設的な話をしようと思っても難しいケースが多いでしょう。進路選択の時間がなくやきもきするかも知れませんが、(3)や(4)の段階に移るまで辛抱強く待ちましょう。
また、(3)・(4)の段階になるべく早く移行するには、周囲のサポートが必要になります。(1)・(2)のタイミングにおいて、周囲の人間がしっかり話を聞いてあげることで、ネガティブな感情を自分の中に貯め込むことが少なくなります。
上記の前提のもと、傷ついたお子さんと接するにあたり、以下の3ポイントを押さえておくと良いでしょう。
- 温かく話を聞いてあげる
- 否定しない
- 親が答えを出さない
以下で詳しく解説していきます。
2-1.温かく話を聞いてあげる
傷ついたお子さんがネガティブな感情をためこまないように、お子さんの話を温かく聞いてあげましょう。お子さんにとって一番の理解者は親御さんである皆さんです。お子さんが「親に話しにくい……」と思えば思うほど、立ち直るタイミングは遅くなってしまいます。
心の推移において(1)や(2)のタイミングでは、お子さんの方もただ自分の話を聞いて欲しいと思うことが多いので、「気持ちを汲み取り、共感していますよ」という様子を表すために相槌をうったり、アイコンタクトを大切にしたりすることが効果的です。
このような「深いレベルで相手をよく理解し、気持ちを汲み取り、共感する」聴き方のことを「傾聴」と呼びますが、傾聴のポイントや方法について、以下の記事がとても参考になりますので、ぜひ併せてご覧ください。
(参考)あなたを聞き上手にする「傾聴」とは?身につける3つのステップ
なお、傾聴の具体的な効果には以下のようなものが挙げられます。
(お子さんが)自分の内面と対話できる
傾聴をすることでお子さん自身が話をするため、お子さんの中で曖昧な思考を言葉にすることができます。話せば話すほど、思考や感情が整理されます。
自己重要感が満たされる/高まる
傾聴を通して「相手の話を聴く」「話を肯定的な態度で受け止める」「話を聴いていますよと、話を伝え返す」ことで、お子さんの自己重要感が満たされ、高まることで、自発的に変化や行動を生み出せるようになります。
深いレベルで心を開ける
傾聴するほど、お子さんは心を開きます。話が悩みや問題、コンプレックスなど、心理的に深く、強いものに結びついている場合は特にその傾向があります。そのため親御さんの意見は脇に置き、辛抱強く傾聴することが大事になります。
2-2.否定しない
お子さんの言っていることが非現実的であったり、親御さんから見て甘いと思ってしまうこともあるかも知れませんが、頭ごなしに否定するのはやめましょう。
まだまだ心情の段階としては(2)の部分を脱しておらず、怒りや現状への固執を表しているだけかもしれません。
また、お子さんの結果を受け、知らず知らずのうちに親御さんもプレッシャーやストレスを受けています。そうなることで、親である皆さん自身も視野狭窄になり、発言もキツめになりがちです。発言する前に少し間をおいて、聞き手であるお子さんの捉え方を想像してから伝えるようにしたいものです。
お子さんが少し落ち着いて他人の意見を聞き、挑戦する心の準備ができ始めたら、親の立場からみて非現実的な意見や甘いと思う部分を指摘してあげても良いでしょう。
2-3. 親が答えを出さない
また、よくありがちなのが、親御さんが結論を出してしまうパターンですが、これもやめておきましょう。お子さんが納得して、自分の意志で選択する状況を作りあげてあげないと、結局その進路を選択した挙句「自分がやりたいことはこれではなかった」と辞めてしまいがちです。
私も進路相談を担当することが多くありますが、親御さんとお子さんで来校されると、9割くらいは親御さんがお話しされて、親御さんが問題を解決して、お帰りになられるケースをよく見かけます。まずはお子さんが自分の意思を話せる場を用意してあげることも、重要なポイントの一つです。
3.まとめ
今回の記事では以下についてお話してきました。
◆全落ちした時に、親が取り乱してはいけない
◆全落ちした時の選択肢は主に以下の6つ
- 浪人
- 専門学校に進学
- 就職
- 留学
- アルバイト
- 家事手伝い(非推奨)
◆基本的には浪人か専門学校進学がお勧め
◆お子さんの気持ちと声に心を傾けて話を聴く方が良い
全落ちしたからと言って、お子さんの人生が終わった訳ではありません。ぜひご家族の温かいサポートでお子さんの未来を支えてあげてください。もし大学編入学に興味を持たれた方は、ぜひ以下の記事も併せて読んでみてください。