短大と専門学校、どちらに進学しようか迷っていませんか?
短大も専門学校も多くが2年制で一見同じように見えますが、教育内容や卒業後の学歴、男女比率などに大きな違いがあります。
この記事では、
短大と専門学校の違い
それぞれのメリット・デメリット
短大・専門学校のどちらに向いているか
を解説していきます。この記事を読めば、あなたにとって短大と専門学校のどちらが向いているかわかるようになると思います。
※短大と専門学校のどちらに向いているか先に知りたい方は3章へ!
目次
1.短大と専門学校の違い一覧
短大と専門学校の違いを項目ごとにまとめ、表にしました。
1-1.教育内容
短大
専門分野について深く研究し、仕事や生活に必要な能力を育成すること主な目的としています。教養分野と専門分野のバランスが取れた教育課程です。
短大は元々、女性のニーズに合わせた教育機関として発展してきました。そのため、女性への社会的ニーズが高い「幼児教育」や「食物栄養」等の分野が比較的多くなっています。
専門学校
専攻分野に関することを主体として学びます。特定の仕事の実務に必要な知識や技能を身につけられる、実践的な教育機関です。分野に応じた就職を目指し、資格試験対策にも力を入れています。
1-2.学費
入学金、授業料、設備費などを含めた学費の総額は以下の通りです。
※いずれも教材費は含みません。
短大
公立短大2年制:約100万円~
私立短大2年制:約200万円~
専門学校
私立専門学校2年制:約250万円~
公立専門学校は自治体等によって大きな差があります。年間授業料が12万円程度と、非常に経済的な学校もあります。
[参考]京都府立看護学校 2018年度 学費等
(1)入学金 5,650円
(2)授業料 118,800円(年額)
(3)その他諸費用 教科書代、実習交通費、実習教材費及び実習衣等はその都度学生が実費負担(引用) 学校案内/京都府ホームページ
1-3.修業年限
短大
一般的には2年制ですが、看護系など3年制のところもあります。
専門学校
大半は2年制です。学校によって1~4年制のところもあります。
1-4.卒業所要単位
短大
2年制課程は62単位以上、3年制課程は93単位以上です。
専門学校
2年制課程は62単位以上、4年制課程は124単位以上です。
1-5.時間割
短大
必修科目以外は自分の好きな授業を選択することができ、自由に時間割を組むことができます。金曜・土曜に必修科目がなければ、月曜~木曜に授業を詰め込んで、毎週金・土・日曜の3連休を作るということも可能です。
専門学校
多くの場合、時間割は最初から決められています。時間割を自分で組むのが面倒という人にとっては、手間が省けるので楽かもしれません。
1-6.就職率
2019年3月卒業者の就職率は、短大は98.6%、専門学校は96.6%でした。ほぼ同じ割合と考えて問題ありません。
(データ)平成30年度大学等卒業者の就職状況調査(4月1日現在):文部科学省
1-7.卒業後の進路
短大
2019年度卒業者を見ると、81.1%が就職、8.5%が進学などとなっています。
(データ)文部科学省 令和元年度学校基本調査
専門学校
データはありませんが、一般的な専門学校の場合は就職がほとんどと考えられます。就職先については、看護学校であれば医療系、調理師学校であれば飲食店など、専門分野に応じた業種・職種の割合が高くなります。
但し、当ブログを運営する神田外語学院をはじめとした語学系専門学校では、大学編入学や大学進学(1年生から入学)、留学などの割合も高くなっています。神田外語学院の場合は、毎年約30~40%の学生が大学編入学または進学、留学しています。
1-8.卒業後の学歴
短大
「短期大学士」の学位が授与されます。高卒者よりも就職先の幅が広がります。
専門学校
2年制以上の場合は「専門士」、4年制以上の場合は「高度専門士」の称号が付与されます。
「専門士」:高卒者よりも就職先の幅が広がります。
「高度専門士」:多くの場合、大卒と同じ扱いになります。大学院への進学も可能です。
1-9.就職時の初任給
ほとんどの場合、短大卒業者と専門学校卒業者は同じ待遇です。
[参考]全日本空輸(ANA) 客室乗務職2021年採用
給与(2019年度)
(中略)
短大・高専・専門卒 月額172,417円(職務調整手当30,000円を含む、別途諸手当あり)
試用期間中は141,598円(別途諸手当あり)
1-10.入試難易度
短大
学部・学科ごとに入学定員が明確に定められており、基本的に入試成績順に合格が決まります。難易度は4年制大学と比較すると全体的に易しいと言えます。参考までに、4年制大学の偏差値は最高で80ですが、短大の場合は最高58です。
(参考) 大学偏差値一覧から調べる | Benesse マナビジョン
◆過去問
一部の短大は赤本があります。また、多くの短大はウェブで過去問を公開しています。
専門学校
入試が高頻度で行われていることもあり、基本的には「落とすための試験」ではありません。多くの場合、学校が定める一定の水準を満たせば合格になります。短大よりも易しいと考えてよいでしょう。
◆過去問
市販されていませんが、学校で直接貰える場合があります。また、ウェブ上で過去問を公開している学校もあります。
1-11.入試方式
短大
主に一般入試と推薦入試があります。このほかに、センター試験利用入試(共通テスト利用入試)を実施する短大もあります。また、一部の私立短大ではAO試験等を実施しています。
(参考)公立短期大学|大学入試センター
専門学校
短大と同様、一般入試、推薦入試、AO入試などがあります。試験を課さず、書類選考のみの学校も少なくありません。
1-12.男女比
短大
男子11.6%、女子88.4%と、女子比率が非常に高いのが特徴です。
専門学校
男子44.4%、女子55.6%(専修学校全体の割合)です。全体で見れば半々くらいですが、専攻によって偏りがあります。語学系や製菓系は女子が多い傾向です。
1-13.その他
その他、学生生活に関する点をまとめました。
長期休暇は?
短大
年間の長期休暇の合計は120日前後です。
夏休みは8月上旬~9月下旬、冬休みは12月末~1月上旬、春休みは2月上旬~4月上旬です。2か月弱もある夏休み・春休み期間中は、長期インターンシップや短期留学に行く学生も少なくありません。
土日を含めると、休みの数は年間で200日程度もあります。
専門学校
専門学校にも夏休み・冬休み・春休みがありますが、全体の日数は60~70日程度で短大の半分くらいです。夏休みは8月頃に1か月程度、冬休みは年末年始、春休みは3月上旬~4月上旬です。
サークルや部活は?
短大
スポーツ系・文科系とも充実しています。ほとんどの場合、キャンパス内に体育館またはグラウンドが設けられているため、学内で活動できます。
専門学校
都心の学校の場合、選択肢は比較的少ないでしょう。特にスポーツ系の場合、活動場所はキャンパス内ではなく、公共施設などを借りるケースも多いようです。郊外の学校では大学並みに種類が揃っているところもあります。
短大・専門学校とも、インカレサークル(学校に関係なく参加できる大学間のサークル)に入ることもできます。但し、2年次は就職活動などに時間を割かなければいけないので、実質的な活動期間は1年程度になってしまいます。
2.短大と専門学校のメリット・デメリット
短大と専門学校を比較した場合のそれぞれのメリット・デメリットを解説します。
2-1.短大のメリット・デメリット
短大のメリット
専門学校では取れない資格が取れる
短大でなければ取れない資格があります。例えば、小学校・中学校・高校の教員免許(二種)は短大では取れますが、専門学校では原則的に取れません*。
*全国で唯一、横浜高等教育専門学校では小学校教諭二種免許が取得可能です。
(参考) 文部科学省 – 教員免許状を取得可能な大学等
(参考)教員免許・保育士資格の取得なら横浜高等教育専門学校
進学先の選択肢が少し増える
短大卒の場合、専門卒に比べて編入学できる大学の選択肢が広がります。例えば、京都大学、上智大学、立教大学などは短大卒者の編入学を受け入れていますが、専門卒者は受け入れていません。
※編入学を受け入れている大学(抜粋)についてはこちらの記事をご覧ください。 ※大学編入学の流れについてはこちらの記事をご覧ください。専門学校からの編入を解説した記事ですが、短大の場合も流れは同じです。 |
また、1-8で触れましたが、短大を卒業後に専攻科に進むと4年制大学卒業に相当する「学士」の学位が得られます。この場合、就職活動において大学卒として扱われる場合があり、受けられる企業が増えます。
地元での就職に有利になる場合がある
多くの短大では、地元の自治体と協力して人材の育成に取り組む「地域連携教育」を行っています。このため、地元での就職に有利に働くことがあります。
短大のデメリット
そもそも学校の選択肢が少ない
専門学校は全国に2,805校あるのに対し、短大の数は326校だけです。首都圏・主要都市以外では、各県1~5校ほどしかありません。
さらに、学ぶ分野によってはさらに選択肢が絞られます。例えば、ヘアメイクや服飾を学びたい場合、専門学校なら地方も含め数多くの学校がありますが、短大の場合は基本的に主要都市に行かなければならないでしょう。
(データ)文部科学省 令和元年度学校基本調査
(参考) ナレッジステーション 短大 都道府県別学校数(令和元年度)
自己管理できないと置いていかれる
自己管理が苦手な人には短大はおすすめできません。短大では高校の担任のように、日常的にあなたを管理してくれる人がいません。講義を何回休んだとしても、ほとんど干渉されることがないのです。そのため、一度さぼり癖がつくと、そのままずるずると退学してしまう人もいます。
周りが女子ばかり
1-12で説明しているように、短大生は女子が8割以上を占めます。そのため、男女問わず「女子ばかりの環境は苦手」という人にとっては居心地が悪いかもしれません。ちなみに、教員の男女比も大学に比べると女性の割合が大きくなっています。
2-2.専門学校のメリット・デメリット
専門学校のメリット
専門的なスキルが身につき、仕事の即戦力になれる
専門的なスキルが身につき、仕事にすぐ活かせます。国家資格を目指すカリキュラムもあるので、在学中に取得できればさらに将来に役立てられるでしょう。
同じ夢を持った仲間に出会える
例えば製菓学校ならパティシエ、航空系の学校なら客室乗務員と、同じ夢や目標を持った学生が大勢います。その仲間たちと情報交換しながら、日々切磋琢磨して頑張れます。
行きたい学校に行きやすい
短大に比べれば入試のハードルが比較的低く、ほとんどの場合は行きたい学校に行くことができます。但し、公立の看護専門学校など、やや難易度が高い学校もあります。
専門学校のデメリット
専門以外の分野を学ぶ機会が少ない
専門分野の知識とスキルを身につけることが目的のため、その他の分野について学ぶ機会があまりありません。幅広い知識を身につけたいという人にとってはデメリットと言えます。
進路変更が難しい
専門分野のスキルを身につける教育という性質上、入学後に進路を変えたいと思っても、簡単にはできません。
例えば、美容系の学校に入ったけれど、何らかの理由で美容に興味がなくなってしまった……。そんな場合でも、美容に関する授業を毎日受けながら、新たな進路について考えなければいけません。
休日が少なく、スケジュールがタイト
1-13で解説したように、専門学校の年間休日は短大の約半分です。しかし、卒業所要単位は短大と同じなので、必然的に専門学校の方がスケジュールの余裕が少なくなります。ただ、勉強に没頭したい人にとってはメリットになるでしょう。
3.短大に向いている人・専門学校に向いている人
3章では、2章で紹介したメリット・デメリットを踏まえて、短大に向いているタイプと専門学校に向いているタイプを解説します。
3-1.こんな人には短大がおすすめ
幅広い分野の知識を身につけたい人
社会で幅広く使える知識を身につけたい人には短大がおすすめです。短大では、専攻分野だけでなく一般教養も学べるからです。
将来の夢がはっきり決まっていない人
将来の夢がまだ決まっていないという人には短大がおすすめです。短大では一般教養も学び、多方面に応用できる知識を得られます。そのため、入学後に将来の方向性を考え始めても遅くありません。
教員免許を取りたい人
小学校・中学校・高校の教員免許を取りたい人は、教職課程を履修できる短大を選びましょう。2-1でも触れたように、専門学校では原則的に取ることができません。
3-2.こんな人には専門学校がおすすめ
やりたい仕事が明確で、専門的なスキルが必要な人
将来が明確な人にとって、専門学校は夢への近道になりえます。それは、特定の仕事に必要なスキルを身につけられる教育課程だからです。
例えば映像制作なら、カメラや編集機器の使い方からロケーションの手配までプロの現場で学び、業界の人とのつながりを就職に活かすこともできます。こうした実践的な経験は、短大ではなかなか積むことができないでしょう。
休日数は最小限で構わない人
ひたすら勉強に没頭したいという人にも専門学校をおすすめします。専門学校は休日数が比較的少なく、必然的にモチベーションが保たれます。途中で失速せずに充実した2年間を送れるでしょう。家で勉強する習慣がつけられないという人にも、休日数が少ない専門学校がおすすめです。
自己管理が得意ではない人
セルフマネジメントが苦手な人には専門学校がおすすめです。専門学校は高校のようなクラス制をとるところがほとんどで、時間割も管理されています。多くの場合は担任がいるため、過度な遅刻や欠席がある場合は個人面談が設けられることもあります。さぼり癖が心配な人は専門学校を選んだ方がよいでしょう。
4.まとめ
この記事の内容をまとめます。
■短大と専門学校は教育内容や修業年限だけでなく、卒業後の進路などにも違いがある
■短大・専門学校それぞれにメリット・デメリットがある
■こんな人は短大がおすすめ
・幅広い分野の知識を身につけたい人
・将来の夢があまり明確ではない人
・教員免許を取りたい人
■こんな人は専門学校がおすすめ
・やりたい仕事が明確で、専門的なスキルが必要な人
・休日数は最小限で構わない人
・自己管理が得意ではない人
短大と専門学校の違いをしっかり把握して、自分に合った進学先を目指しましょう。
大学と専門学校の違いを知りたい方はこちらの記事をご覧ください。 |