結論から言えば、中国語検定3級のレベルは「中国語の基礎中の基礎が完成している」程度です。必要な学習時間は1日1時間の勉強で半年~1年(合計約200~300時間)ほどで、合格率は平均で約4割です。
確実に中国語検定3級に合格するためには、傾向をおさえた効果的な学習が必要です。この記事では、神田外語学院アジア/ヨーロッパ言語科中国語コースをはじめとする各教育機関・企業の中国語講師、翻訳者、通訳案内士としても活躍する金子真生先生の監修で、
- 中国語検定3級の傾向と対策
- 中国語検定3級合格のための効果的な学習方法
を紹介します。この記事を読んで、中国語検定3級の合格を目指してみてください。
目次
1. 中国語検定3級のレベル・難易度
1-1.中国語検定3級のレベルは「基礎中の基礎」
中国語検定は準4級から1級までの6段階に分かれており、3級は下から3番目の級位です。中国語の初心者マークを外せる段階といえます。
試験を運営する日本中国語検定協会は、3級の認定基準を「自力で応用力を養いうる能力の保証(一般的事項のマスター)」としています。これは、
◆基本的な文章の読み書きと、簡単な日常会話ができる。
◆1,000~2,000程度の常用語の発音(ピンイン)と意味がわかり、複文の日本語訳・中国語訳ができる。
くらいのレベルです。3級を取っていれば、「中国語の基礎中の基礎はできている」と考えて差し支えないでしょう。
(参考) 一般財団法人日本中国語検定協会 認定基準
就職活動でのアピール材料として履歴書に書いて問題ありません。英検3級の場合は履歴書に書いてもメリットは見込めませんが、中国語検定は英検に比べて取得者が少ないのでアピール材料になります。
仕事においては、飲食店や小売店での接客対応など、ある程度状況が推察できる場面でのコミュニケーションは可能なレベルです。しかし、商談や会議などが中国語でできる水準には達していません。
※詳しくはこちらの記事をご覧ください。
中国語検定を就職に活かすなら何級?有利になる業界と目標級を解説
因みに、中国語の能力を測る試験としては、「HSK(漢語水平考試)」も有名です。性格が異なる両試験を単純に比較することはできませんが、中国語検定3級はHSK4級~5級相当とされています。
1-2.中国語検定3級合格までの勉強時間は約200~300時間
3級合格までに要する学習時間は200~300時間程度とされています。これは、大学の第二外国語として2年間学んだ程度(自宅での予習・復習も含む)です。独学の場合、1日1時間勉強するとして、半年~1年程度を見込んでおきましょう。
1-3.中国語検定3級の合格率は約43%
2017年6月(第92回)~2020年11月(第101回)までに実施された直近10回の合格率は以下のようになっています。
平均すると約43%で、一つ下の4級の合格率(約55%)と比べるとやや低くなっています。
1-4.中国語検定3級の試験概要
3級の試験概要は以下の通りです。
日程 | 年3回。3月・6月・11月の第4日曜日 午前10時から |
会場 | 全国各都市(全都道府県ではない)、海外(北京・上海・深セン・台北・シンガポール) |
受験料 | 郵送申込5,200円、インターネット申込5,000円 (税込み) |
出題内容 | リスニングおよび筆記(マーク式・一部記述式) |
試験時間 | リスニングパート30分、筆記70分 |
合格基準点 | リスニング・筆記各100点満点中65点 |
合格基準点は各回の平均点によって調整される場合があり、直近10回中8回は基準点が5点~10点引き下げられています。
2.中国語検定3級の試験内容
中国語検定3級の試験内容は、リスニングパートが20問、筆記パートが41問程度です。2つのパートの内容について、それぞれ解説していきます。
2-1.リスニングパート
リスニングパートは大きく2つに分かれます。それぞれの出題内容と解答のために必要なポイントは以下の通りです。
具体的な問題例を見ていきます。
大問1(全10問)
大問1では、基本的な動詞や形容詞の発音と意味を理解しているかが問われます。
中国語で読まれる問いに対して、中国語で読まれる4つの選択肢から最も適当なものを選ぶ問題(5問)
例題
(スクリプト) 你朋友说中文说得怎么样? 1.我朋友没去过中国。 様態補語の「得」を理解していれば解ける問題です。正解は4です。 |
2人の中国語の対話を聞いて、それに続く言葉として最も適当なものを中国語で読まれる4つの選択肢から選ぶ問題(5問)
例題
(スクリプト) A:铃木,那个中国电影你看过吗? 1.我也是。那个中国电影怎么样? 経験を表すアスペクトの「过」(~したことがある)を理解しているかが重要です。また、Bの「没有」がこの文脈では「見たことがない」という意味だとすぐ理解できるかもポイントです。正解は2です。 |
大問2(全10問)
大問2は、対話問題と長文を聴く問題です。どちらもやや長い音声なので、重要な動詞などのキーワードを判断できることが必要です。
2人の中国語の対話を聞き、中国語で読まれる5つの質問に対して、中国語で読まれる4つの選択肢から最も適当なものを選ぶ問題(5問)
例題 ※サンプルのため、対話は通常よりもやや短いやりとりになっています。
(スクリプト) A:喂,小李,你吃午饭了吗? 他们在哪儿见面? 1.地铁站 Aが電話でB(小李)を食事に誘っています。全体を通して会話の場が想像でき、「怎么样」が勧誘表現だと気づくことができるでしょうか。会話の中盤でBが「那我在大学东门等你」と発言しているので、正解は3です。 |
中国語で読まれる長文を聞き、質問に対して中国語で読まれる4つの選択肢から最も適当なものを選ぶ問題(5問) (例題は省略します) 300字前後の文章が読み上げられ、その内容に対する質問に答える問題です。 |
全ての問題は1題ごとに2回ずつ放送されます。
2-2.筆記パート
筆記パートは大問1~5に分かれます。それぞれの出題内容と解答のために必要なポイントは以下の通りです。
第99回(2019年11月24日実施)で出題された実際の問題を見てみましょう。
過去問出典:試験問題・解答 | 中検 | 中国語検定試験
大問1. 声調・ピンイン問題(全10問)
大問1では、単語の正確な声調とピンインを理解しているかを問われます。
示された単語と声調が同じものを4つの選択肢から選ぶ問題(5問)「季节」は4声+2声(jìjíe)です。選択肢の声調はそれぞれ、「打针」が3声+1声(dǎzhēn)、「住院」が4声+4声(zhùyuàn)、「时刻」が2声+4声(shíkè)、「放学」が4声+2声(fàngxué)で、正解は4です。 |
示された単語の正しいピンインを4つの選択肢から選ぶ問題(5問)「经济」の発音は(jīngjì)なので、1が正解です。「-ing」と「-in」の発音の違いは日本人にとってはなじみが薄いので、正確にピンインを覚えておく必要があります。 |
-ngと-nの判断の方法
書面の場合、その漢字の日本語の音読みを知っているとすぐ区別できます。音読みが「ン」で終わる場合のピンインは「–n」、「イ」または「ウ」で終わる場合は「–ng」です。
例:
漢字 | 日本語音読み | ピンイン |
音 | オン | yīn |
英 | エイ | yīng |
王 | オウ | wáng |
大問2. 適語選択問題(全10問)
大問2では、助詞や量詞、接続詞などの意味を理解していて、適切に使えるかを問われます。
文中の空欄を埋めるのに最も適当な単語を4つの選択肢から選ぶ問題(10問)適切な副詞を選ぶ問題です。「今日は時間がなくなったので、明日( )話しましょう」という文で、正解は3の「再(また)」です。2の「又」も「また」という意味がありますが、「又」はすでに発生した過去の事象に用いる副詞のため不適切です。 |
大問3. 文法問題(全10問)
大問3では、基本的な文法事項や文型を理解しているかを問われます。
日本語の意味に合う中国語の文を4つの選択肢から選ぶ問題(5問)典型的な文法問題です。主語(我)+動詞(看)+目的語(电视)という基本的な文法がわかっていれば、すぐに2に絞り込めます。また、「一个小时」などの時量は動詞の直後に付くという知識でも判断できます。 |
日本語の意味になるように中国語の4つの単語を並べ替える問題(5問)A+比+B+[差分](AはBより~)という文法と、数量を表す補語は動詞の後ろに付くという原則を知っておく必要があります。並べ替えると「我比去年胖了三公斤。」で、正解は2です。 |
大問4. 長文問題(全6問)
大問4は長文問題ですが、大半は長文中の空欄に適語を選択する問題です。しかし、読解問題も1問含まれるので、文全体を理解できるかも問われます。
本文中の空欄を埋めるのに最も適当な単語を4つの選択肢から選ぶ問題(5問)「不管~还是…」(~だろうと…だろうと)という副詞の呼応を知っていれば解ける問題です。正解は2です。 |
本文の内容と一致する(または一致しない)文を4つの選択肢から選ぶ問題(1問) (例題は省略します) 長文の内容と一致する(または一致しない)文を4つの選択肢から選ぶ問題です。 |
大問5. 中訳問題(全5問)
大問5はマーク式ではなく、記述式の問題です。基礎的な文法事項を理解して日本語を中国語に訳せるか、それを簡体字または繁体字(選択可)で正確に書けるかが問われます。
日本語を中国語に訳す問題(5問)「没~过」(~したことがない)という文法を知っているかが大きなカギです。簡体字(または繁体字)も正確に書けるようにしましょう。訳文例は「我没吃过她做的菜。」です。 |
3章・4章では、リスニングパートと筆記パートに分けて、それぞれの効果的な勉強法を紹介していきます。
3.中国語検定3級 リスニングパートの効果的な学習方法
3-1.ディクテーション(听写)で、耳と手でピンインを覚える
ディクテーション(听写)とは、中国語の音声を聞いて、その内容の通りに全て書き起こす勉強法です。耳と手でピンインを覚えるので、非常に効率的かつ高い学習効果が見込めます。
★まずは過去問などの音声を用意してください。最初は問題を解こうとせず、ピンインと声調を全て書き起こします。
★次に、書き起こしたピンインを辞書で確認したり、スマートフォンに入力したりして、正しい文になるかチェックしてください。
★作った原稿を解答と照らし合わせ、全て合っていたらそれを音読しましょう。音読は最低でも30回は必要です。
★そして最後に音声をもう一度聴いて、耳で覚えましょう。ここまでが1セットです。
上記の手順を3セットくらい繰り返すと良いでしょう。時間をおいて繰り返すのが効果的です。
音節表でピンインを正しく理解する
ピンインを理解できていない(正しくディクテーションできない)場合は、教科書などについている音節表をしっかり覚えることから始めましょう。
例えば、「feng」の音を「fong」と書いてしまったりしていませんか? 「fong」というピンインは現代中国語には存在しません。そのような間違いをしてしまった場合、ピンインを正しく理解できていません。
※音節表はインターネットでも確認できます。
CHLANG中国語データベース|中国語音節表
3-2.シャドーイングで、耳と口でピンインを覚える
シャドーイングとは、音声を聴きながら、同時に発音を真似て復唱する勉強方法です。自分が発音できない音を聞き取ることはできません。シャドーイングをすることで、耳と口で音を覚えましょう。音声素材はディクテーションで使ったものを使ってください。
4.中国語検定3級 筆記パートの効果的な学習方法
4-1.単語だけではなく、例文を覚えて使い方を身につける
単語帳で「単語だけ」を覚えるのは効果的とは言えません。文中で単語がどのように使われるかを合わせて理解することが必要です。
単語帳を使って勉強する場合は、例文を覚えることで単語を頭に入れましょう。介詞などの虚詞を適切に使う感覚も身につきます。
4-2.中訳記述対策は過去問を繰り返す
大問5の中訳記述問題対策です。問題のパターンはある程度決まっているので、過去問を使って学習しましょう。
★まずは3~5回分くらいの過去問を入手し、何も参考にせずに解いてみてください。
★答え合わせをしたら正しい文を書きます。それを持ち歩いて毎日確認し、頭に入れましょう。
★数日後にまた同じ問題を解いて、また解答例を数日覚える、という作業を繰り返しましょう。
このとき、間違えた答案は捨てないでください。正しい文が書けるようになるまでの過程を確認して、自分の弱点を把握することが大切です。過去問と解答例は中国語検定公式サイトでダウンロードできます。(試験問題・解答 | 中検 | 中国語検定試験)
4-3.おすすめの参考書
キクタンシリーズ
キクタン中国語【初中級編】中検3級レベル(アルク)
定価:2,200円(税込)
聴く中国語
月刊聴く中国語(HSJ株式会社)
定価:1,499円(税込)
Why?にこたえるはじめての中国語の文法書
Why?にこたえるはじめての中国語の文法書(同学社)
定価:2,500円(税別)
5.中国語を勉強するなら神田外語学院
本格的に中国語を勉強するなら、神田外語学院がおすすめです。アジア/ヨーロッパ言語科中国語コースは、中国語を学んだことがない初心者が対象。ピンインや声調、母音・子音の発音など、中国語を一から学べます。
5-1.2年間で中国語検定2級の取得を目指す
必修の中国語検定対策講座では、1年次は中国語検定3級、2年次は3級~2級の合格を目標に、問題の傾向を学び、対策していきます。
神田外語学院ニュース – 2年生2名が中国語検定試験2級に合格 |
5-2.声調・ピンインを一から学び、正しい発音を身につける
中国語は日本語や英語と違い、声調を間違えると通じにくい言語なので、発音は最重要です。神田外語学院の授業では、中国語の発音の基礎である声調とピンインを一からしっかり学び、確実に通じる正確な発音を身につけます。
MOVE多言語センター
学内には、先生や他の学生と交流できる「MOVE多言語センター」を設置しています。授業以外の時間でも会話の練習や、検定対策・学習計画の相談などが気軽にできます。
5-3.文化や伝統、最新事情に触れて中国語圏への理解を深められる
横浜中華街へのフィールドトリップ
授業の一環で横浜市の横浜中華街を訪れます。横浜中華街発展会協同組合から、横浜関帝廟や横浜媽祖廟などの代表的施設について説明を受け、中国の思想や宗教、歴史への理解を深めます。さらに、店員の方々と中国語で話すことで、授業で身につけた会話力を試すとともに、今後の課題を発見します。
中国・青島濱海学院 春季短期研修
一年次の春休みには、中国・山東省青島市の青島濱海学院での2週間の短期研修を毎年実施しています。大学のキャンパス内で学ぶため、大学内の施設を利用でき、現地の学生や他の国からの留学生と中国語で異文化交流できるチャンスもあります。また、太極拳や切り紙、書道、舞踊などの中国文化体験や青島市内の観光なども含まれます。
青島濱海学院は神田外語学院と教育交流の提携を結んでいるため、一定の条件を満たした学生は、神田外語学院卒業後に青島濱海学院の3年次に編入することもできます。
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神田外語学院にご興味をお持ちの方は、教育の特長について紹介している以下の記事もぜひご覧ください。
6.まとめ
この記事の内容をまとめます。
■中国語検定のレベルは「基礎中の基礎」
※仕事では接客業などで活用できる
■試験内容はリスニングと筆記(マーク、記述)
■ディクテーションやシャドーイングが効果的な学習法
効果的な学習方法で合格を目指し、就活などに役立ててください。