高校や大学で中国語を習って、中国語検定を取った(取ろうと考えている)皆さんの中には、こんな疑問を持っている方も少なくないでしょう。
結論から言うと、中国語検定は就職に有利になります。中国進出している日系企業や日中間で取引のある企業など、中国語人材を必要としているところは数多くあり、中国語能力の証明となる中国語検定は就職活動でも有用です。
具体的には、「中国語の基礎中の基礎ができている」と言えるレベルの中国語検定3級以上なら、履歴書に書いたときに目に留めてもらえるでしょう。
この記事では、神田外語学院アジア/ヨーロッパ言語科中国語コースをはじめとする各教育機関・企業の中国語講師、翻訳者、通訳案内士としても活躍する金子真生先生のお話を交えながら、
などを解説していきます。
好きなところから読んで、就職活動に役立ててみてください。
神田外語学院アジア/ヨーロッパ言語科中国語コース講師。高校や専門学校、大学、企業、社会人講座などで、これまで2,000人以上に中国語を教える。ソーシャルゲームやニュースなどの翻訳も手がけるほか、テキスト教材の音声吹き込みも担当。全国通訳案内士。著書に『基本文型が身につく!中国語音読』(ナツメ社)。
目次
1.中国語検定は就職に有利になる
中国語検定は、日本国内において中国語の学習成果を測る指標として最も多く利用されている資格試験です。準4級から1級までレベルは6段階ですが、3級以上を取っていれば就職の際に有利になると考えてよいでしょう。
1-1.中国語検定が就職のとき有利になる理由
中国語検定が就職に有利になるのは、様々な業界の企業が中国語を話せる日本人人材を求めているという理由に尽きます。
企業が中国語人材を必要としている理由には、以下の背景があります。
背景1 中国の市場が世界最大規模だから
中国の経済成長は頭打ちと言われていますが、それでも中国の各分野の市場規模は世界最大レベルです。
景気や経済成長の指標となるGDPを見ると、中国は日本の約2.6倍で世界第2位です(2018年時点)。中国市場に参入するために中国語人材を求めている日系企業は今なお数多くあります。
因みに、中国に進出している日系企業は1万3685社(2019年5月時点)*です。今後も日系企業が中国語人材を必要とする状況は長く続くでしょう。
*出典:帝国データバンク
背景2 中国語を話せる日本人人材が少ないから
そもそも日本社会全体で人材不足が叫ばれる中、中国語スキルのある人材は圧倒的に不足しています。急増する中国語需要に対応するために、社内で講座を開いている企業も少なくないようです。
こうしたことから、企業は「できることなら入社時点で中国語が使える人材が欲しい!」と思っているのです。
2.中国語検定を就職に役立てるなら「3級」から
1章でも触れていますが、就職に役立つのは少なくとも3級からです。
就職に活かすなら、4級では文法力・語彙力が足りません。中国語の「基礎中の基礎」である3級が、接客業などで使える最低限の水準と言えます。(※単語量の目安 4級:500~1,000語、3級:1,000~2,000語)
就職のアピール材料として活かせる中国語検定3級以上のレベルと、できることの目安について、詳しく解説していきます。
2-1.「3級」は中国語を多少使う仕事ができる
3級は「基礎中の基礎ができている状態」です。基本的な文章の読み書きができ、食事の注文や駅での切符購入など、簡単な日常会話ができるレベルです。
合格に要する学習時間は200~300時間程度とされており、大学の第二外国語として2年間学んだ程度(自宅での予習・復習も含む)です。独学の場合は、1日1時間勉強するとして半年~1年程度を見込んでおきましょう。
接客販売など、ある程度相手の意図が推測できる場面でのコミュニケーションは概ね問題なくできるレベルです。
※3級のレベルの詳細や勉強法はこちらの記事をご覧ください。
2-2.「2級」はやや高度な仕事もできる
2級は「基礎が完成した状態」です。新聞などのやや高度な文章もある程度理解することができ、日常的な話題での世間話などができるレベルです。
中国語を学ぶ学生にとって関門の級位で、合格に要する学習時間は人によって大きく異なります。日常的に勉強している場合でも、少なくとも1年半~2年弱を見込んでおきましょう。
仕事においては、中国語を使ったやや高度な業務にも挑戦できるでしょう。接客業などで何かトラブルが発生したとしても対処できるレベルです。就職活動の際の大きなアピール材料として、堂々と履歴書に書いてください。
2-3.「準1級」は仕事の即戦力にもなれる
準1級は「中国語を使う実務にすぐに従事できる状態」です。新聞や文学作品など高度な文章を理解することができ、生活に必要な会話がスムーズにできるレベルです。
成語(四字熟語のようなもの)など幅広い知識が問われるほか、会話・スピーチ試験も導入されているため、合格にはそれなりの時間を要します。このレベルになると一概に言えませんが、最低3年程度は必要でしょう。
分野ごとの単語や表現を勉強すれば、商社の海外貿易担当など、仕事でも即戦力になれるレベルです。中国語のプロフェッショナル(通訳・翻訳・講師)を目指すスタートラインの級と言えます。
2-4.「1級」は中国語を駆使する仕事もできる
1級は「中国語を自在に駆使できる状態」です。難度の高い文章を読解でき、講演や会議など複雑な内容の翻訳・通訳ができるレベルです。1級に合格すると全国通訳案内士試験(中国語)で、外国語筆記試験が免除になります。
1級保持者はビジネスの現場でも高度なプロフェッショナル人材と言えます。通訳者・翻訳者でも合格する人がなかなかいない高レベルの級です。
3.中国語検定はこんな仕事の就職で活かせる
中国語検定は以下のような仕事で活かせるでしょう。
3-1.旅行・観光業
外国語が活かせる職業として最初に想像するのは、航空業界やホテルなどの旅行・観光業界でしょう。3級くらいのレベルから仕事に役立ちます。
2019年の訪日客3,188万人のうち、中国や台湾から来た訪日客は約1,450万人でした。つまり、訪日客のうち少なくとも約45%が中国語を話せる旅行者だと言えます。訪日客が必ず利用する航空会社やホテルでは、中国語を活かせる機会はほぼ毎日あります。
出典:日本政府観光局 月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)
宿泊業
ホテルや旅館で中国語が必要となるのはイメージが湧くと思います。フロント業務で使うだけでなく、食事の内容や周辺の観光案内などを中国語で尋ねられることも少なくありません。
ちなみに筆者は中国人の知人から、「日本のホテルの枕の寝心地がよかったので、どのブランドのものか知りたいが、中国語が通じない。代わりに問い合わせてほしい」と頼まれたことがあります。
中国人に人気のある北海道や沖縄を中心に、中国語人材は全国的に必要とされています。
空港・航空業
日本を訪れる外国人のほとんどは空港を利用します。宿泊施設と同様、成田や羽田などの主要空港だけではなく、地方空港でも中国語が必要とされるシーンが非常に多くなっています。
客室乗務員やグランドスタッフのほか、案内カウンターや免税店、入国管理局の通訳など、空港で中国語を活かせる仕事は多数あります。
通訳案内士 ※準1級レベル~
訪日外国人に向けて日本の案内と通訳業務が同時にできる、いわゆる通訳ガイドの国家資格です。準1級レベルの力がないと難しいでしょう。2級を取れば通訳案内士の試験対策を始められる準備が整ったと言えます。2章でも触れていますが、中国語検定1級に合格すると、全国通訳案内士試験(中国語)の外国語筆記試験が免除されます。
社員として旅行会社で働くだけでなく、フリーランスの通訳案内士として活躍する人も少なくありません。
このほか、駅や百貨店、飲食店など、あらゆる場所で中国語を活かす機会はあるでしょう。
3-2.商社・貿易会社
日本の最大の貿易相手国は中国です。中国企業と頻繁に取引をする商社や貿易会社で中国語を活かせるのは間違いありません。2級くらいからが活用できる目安です。
例えば最大手総合商社の伊藤忠商事は、社内で中国語話者を育成するプロジェクトを2015年度から始めました。つまり、需要があるのに中国語人材が不足していたということです。
他社でも同じように、中国語人材は広く求められていると言えます。
3-3.中国系企業の日本採用
スマートフォンやドローン、電気自動車など、様々な分野で中国企業が躍進しています。こうした中国企業が日本市場を狙って進出し、日本人向けの求人を出すことも増えてきました。
日本支社で採用された場合は、中国語が話せなくても採用されるケースが多いようですが、2級レベルの中国語ができればより幅広い仕事を任せてもらえるようになるでしょう。
4.就職における中国語検定とHSKの違い
中国語の能力を測る試験としては、中国語検定のほか、HSK(漢語水平考試)も有名です。
4-1.HSK概要(中国政府公認の資格)
HSKは中国政府教育部の直属機関が主催する中国政府認定の資格です。118の国と地域で実施され、世界的に認知されています。
1級から6級まであり(6級が最上級)、試験はリスニング・読解・作文の3つのパートに分かれています。
試験の性格が異なるため、中国語検定と単純に比較することはできませんが、HSK6級は中国語検定2級相当、HSK5級は中国語検定3級~2級相当のレベルと考えられています。
4-2.就職における中検とHSKの違い
どちらも日本企業への就職希望者には適しています。このほか、中国語検定は中国企業の日本採用を目指す人向け、HSKは中国企業の現地採用を目指す人向けの資格と言えます。
中国語検定は、中国語の読解・聴解能力のほか、日本語の翻訳能力を問うものです。日本語と中国語を両方使う環境に適しています。
一方HSKは、中国語の設問に中国語で答えることが求められており、「中国語でのコミュニケーション能力」を測る資格と言えます。翻訳能力は問われていません。ちなみに、中国の大学へ留学する場合にはHSK4級~5級程度が求められます。
将来の進路を考えて、中国語とHSKどちらの取得を優先すべきか考えてください。もちろん、余裕があれば両方取得するとよいでしょう。
5.中国語検定試験対策に効果的な3つの勉強方法
この章では、中国語の「基礎中の基礎レベル」と言える中国語検定3級合格を目指す勉強法を紹介します。大学の第二外国語で2年程度学んでいれば目標にできる級位なので、参考にして挑戦してみてください。
ディクテーション
中国語の音声を聞いて、その内容の通りに全て書き起こす勉強法です。耳と手でピンインを覚えるので、非常に効率的かつ高い学習効果が見込めます。
シャドーイング
音声を聴きながら、同時に発音を真似て復唱する勉強方法です。
自分が発音できない音を聞き取ることはできません。シャドーイングをすることで、耳と口で音を覚えましょう。音声素材はディクテーションで使ったものを使ってください。
過去問
中国語検定の公式サイトで過去問をダウンロードできます。3級はある程度出題パターンが決まっているので、過去問を繰り返し解くことが対策になります。自分の弱点を把握して、苦手分野の克服に役立てましょう。
※過去問はこちらでダウンロードできます。
試験問題・解答 | 中検 | 中国語検定試験
※詳しい勉強法はこちらの記事で解説しています。
6.中国語を勉強するなら神田外語学院
本格的に中国語を勉強するなら、神田外語学院がおすすめです。
6-1.2年間で中国語検定2級の取得を目指す
必修の中国語検定対策講座では、1年次は中国語検定3級、2年次は3級~2級の合格を目標に、問題の傾向を学び、対策していきます。
神田外語学院ニュース – 2年生2名が中国語検定試験2級に合格 |
6-2.声調・ピンインを一から学び、正しい発音を身につける
中国語は日本語や英語と違い、声調を間違えると通じにくい言語なので、発音は最重要です。神田外語学院の授業では、中国語の発音の基礎である声調とピンインを一からしっかり学び、確実に通じる正確な発音を身につけます。
MOVE多言語センター
学内には、先生や他の学生と交流できる「MOVE多言語センター」を設置しています。授業以外の時間でも会話の練習や、検定対策・学習計画の相談などが気軽にできます。
6-3.文化や伝統、最新事情に触れて中国語圏への理解を深められる
横浜中華街へのフィールドトリップ
授業の一環で横浜市の横浜中華街を訪れます。横浜中華街発展会協同組合から、横浜関帝廟や横浜媽祖廟などの代表的施設について説明を受け、中国の思想や宗教、歴史への理解を深めます。さらに、店員の方々と中国語で話すことで、授業で身につけた会話力を試すとともに、今後の課題を発見します。
中国・青島濱海学院 春季短期研修
一年次の春休みには、中国・山東省青島市の青島濱海学院での2週間の短期研修を毎年実施しています。大学のキャンパス内で学ぶため、大学内の施設を利用でき、現地の学生や他の国からの留学生と中国語で異文化交流できるチャンスもあります。また、太極拳や切り紙、書道、舞踊などの中国文化体験や青島市内の観光なども含まれます。
青島濱海学院は神田外語学院と教育交流の提携を結んでいるため、一定の条件を満たした学生は、神田外語学院卒業後に青島濱海学院の3年次に編入することもできます。
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神田外語学院にご興味をお持ちの方は、教育の特長について紹介している以下の記事もぜひご覧ください。
7.まとめ
この記事の内容をまとめます。
◆中国語検定は就職に役立つ
◆「基礎の基礎レベル」と言える3級から有用
◆中国語検定が役立つのはこんな業界
・旅行・観光業界
・商社・貿易会社
・中国系企業の日本採用
◆中国語検定とHSKは内容が異なるので、活かせる場面も少し変わる
やりたい仕事や行きたい業界を考えて、中国語検定の取得を目指してみてください。
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