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「英語通訳ガイドと行く東京サイクリングツアー」研修

2021.12.09
(左:国際観光科1年生 山崎真里菜さん、右:国際観光科1年生 南杏梨さん)

国際観光科の1年生が、旅行会社「風カルチャークラブ」が運営するツアーブランド「サイクリングホリデー東京」が提供する「英語通訳ガイドと行く東京サイクリングツアー」に参加しました。

 

産学官連携プログラムの一貫として昨年スタートしたこの研修では、訪日外国人観光客から人気の高い「体験型観光ツアー」について学びます。アフターコロナを見据え、学生たちは「ガイド側」と「観光客側」の双方の視点を体験します。雑多な要素が混在する東京の街並みを見つめ直し、その魅力を再発見してほしいという狙いもあります。

今回の研修は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、いくつかの少人数グループにわかれ、2学期間実施されました。この記事では山崎真里菜さん(埼玉県立志木高校出身)、南杏梨さん(千葉県立千葉商業高校出身)の2人が研修に参加した時の様子をお届けします。

外国人にとって、不思議でいっぱいの「普段着の東京」

出発からほどなくして、ガイドさんが自転車を停めたのは立ち食いそばのチェーン店。
 
「日本食に興味がある外国人の方に、そばや天ぷらは人気です。でも、観光客向けのお店ってだいたい高級店なんですよね。高級なそばや天ぷらを食べたことがある人ほど、『なんでこんなに安いの?!』と、チェーン店に目を輝かせます。そばや天ぷらは、日本のビジネスパーソンや学生にとってポピュラーなランチなのだと伝えると、とてもおもしろがってもらえるんです」(ガイドさん)
 
自分たちにとって当たり前の街の風景が、外国人の目には不思議に映るという事実を知り、驚いた様子のふたり。再び自転車に乗り、秋葉原方面に向かいます。

秋葉原のディープな名所の一つだという自販機コーナーでも、ガイドさんから、「外国の街中には、あまり自販機はありません。理由は、すぐに壊されてお金を盗まれてしまうから。日本の至るところに自販機があるのは、治安が良い証拠ですね」と説明を受けてびっくり。

自転車だから可能な柔軟なコース設定。会話からニーズを探る

秋葉原の電気街を抜け、御徒町方面へ。日本で2番目に古い商店街と言われている佐竹商店街で、昭和の雰囲気を満喫します。
 
「訪日外国人観光客の方々は『オールドジャパンが東京都心にもあるんですね』と感動してくださるんですよ。」(ガイドさん)
 
そして、あえてガイドである自分は付き添わずに個人商店で買い物をしてもらい、地元の人との交流を楽しんでもらうこともあると聞き、「きっと忘れられない体験になると思います。私も、ロシアに旅行した時、地元のスーパーで買い物をしました。身振り手振りを交えて何とか店員さんとコミュニケーションがとれて、欲しいものが買えた時は嬉しかったな」と振り返る山崎さん。

商店街を抜け、小腹が空いてきたところで、南さんが和菓子屋さんを発見。自転車を停め、しばしのおやつタイムです。
「参加者が興味を示した場所にすぐに立ち寄れるのも自転車ツアーの魅力の一つ。会話しながら一人ひとりのニーズを探り、コースを組み立てています」とガイドさん。例えば、マンガやアニメ、ゲームといった日本のサブカルチャーが好きな人なら、秋葉原での滞在時間を長めに確保したりするのだそう。

歴史を知ると、街の表情が、よりくっきり見えてくる

甘いものでエネルギーを補給したら、浅草方面へ。仏壇・仏具店が軒を連ねる、通称・仏壇通りを抜けて、東本願寺に立ち寄りました。
 
「宗教的な道具を売る店が並ぶストリートというのは、世界的に見てかなり珍しいんです。また、日本では、仏壇と神棚のどちらもある家庭も多いですよね。日本人は、お正月には神社に行き、お葬式は仏教で行う。それどころか、クリスマスやハロウィンも楽しんでいます。この宗教に対するファジーさは、外国人には不思議なようです。お寺や神社のような宗教的施設に立ち寄る時は、多くの外国人にとって、宗教は非常にデリケートな存在なのだという意識をしっかり持って、説明や案内をしてくださいね」(ガイドさん)

平日にも関わらず、多くの人が行き交う雷門通りを注意深く走り、雷門で記念撮影。

隅田公園に立ち寄り、スカイツリーをバックに、隅田川と東京の深い関係について説明を受けます。

「文明が大河沿いに栄えたのと同じように、世界中の大都市も、多くが河川沿いにあります。ニューヨークのハドソン川、パリのセーヌ川、ロンドンのテムズ川、そして、東京の隅田川。 知っている河川が登場すると身近に感じるのか、喜んでもらえますね。江戸時代初期、隅田川には橋が一つしか架けられていなかったんです。なぜだと思いますか?」(ガイドさん)

ガイドさんからの問いに「敵に攻められないように?」と南さん。
 
「大正解です。隅田川は、江戸城の外濠の役割も担っていたんですね。でも、橋が一つしかなかったせいで、1657年に起きた明暦の大火において、たくさんの人々が逃げ遅れ、犠牲になりました。この事件がきっかけとなり、隅田川に掛かる橋が増えたんですよ」(ガイドさん)
 
唯一の橋であった千住大橋(せんじゅおおはし)に続き、江戸幕府によって、両国橋、新大橋、永代橋、吾妻橋が架けられました。現在、隅田川には30以上の橋が架かっており、このうちの27つの橋が徒歩で渡れるということも教えていただきました。

変化していく街の景色から読み取れるもの

青い空に映えるスカイツリーを堪能しながら、両国橋を渡り、日本橋方面へ。「大人気のパワースポットに立ち寄ってみましょう!」と、ガイドさんが方向転換しました。

ビジネス街の片隅に現れたのは、強運厄除の神様が祀られている小網神社(こあみじんじゃ)。関東大震災や東京大空襲で辺り一帯が壊滅する中、この神社だけ無事だったことから「不死身の神社」として有名になり、参拝客が絶えないのだそう。

大通りに復帰し、鎧橋(よろいばし)を渡ると、それまでの下町然とした景色が一変。高層ビルが立ち並ぶ官公庁街に入りました。
 
「この辺りは、江戸時代に武家屋敷街だったエリアです。今は、官公庁や大手企業が集中しています。川をまたぐと街の景色が変わる。このことを覚えておくと、街並みに隠された歴史がわかるようになりますよ」(ガイドさん)

美しく整備された広い道路を走り抜け、東京駅丸の内駅舎に到着。出発から2時間半が過ぎ、夕暮れ時の西日が赤レンガに差しています。記念撮影を楽しんだら、神田方面へ向かって北上。最後に、東京最古の酒舗に立ち寄り、出発地であった学校に戻ってきました。

所要時間約3時間、およそ15キロのツアーを終えて。

「特に印象に残ったのは小網神社です。関東大震災や東京大空襲を生き延びた神社だということを教えてもらわなければ、『小さい神社だな』としか感じなかったと思うんです。背景や歴史を学ぶと、その場所が魅力的に見えてくるんですね」(山崎さん・左)
 
「ガイドさんの豊富な知識に驚きました。私は東京のことを、知っているようで何も知らなかったんだなって。ガイドする相手との接点を探るために、東京の歴史はもちろん、海外の主要都市の歴史についても勉強したいと思いました」(南さん・右)
 
 
それぞれに、今回のサイクリングツアーで新たな発見があったようです。