通訳から広がった世界

私は英国留学後、社会人になってから通訳学校に通いはじめ、通・翻訳者としてはじめて建設業界に入りました。もちろん最初は通訳や翻訳業に徹していたのですが、徐々に建築の知識が深まり、携わらせていただいたプロジェクトがテーマパークや客船、鉄道と大きな規模だったこともあり、通訳や翻訳だけではなく、業者や顧客への交渉や工事管理、資材調達業務など仕事の幅が広がっていきました。
カタールの鉄道プロジェクトでは情勢の変化により、それまでのようにスムーズに資材を得ることが困難になりました。工事に大きな遅れが出ないよう、資材業者や工場を1つ1つ回り、納期を確認したり、早期に納品してもらえるよう交渉をしなくてはいけませんでした。非常に困難な業務ではありましたが、同時に自分で仕事を進める大きな達成感もありました。

海外スタッフとの信頼関係構築における工夫

他社で通訳として働いていた際、フジタの業務のサポートをさせていただいたことがあり、縁があってフジタに入社することになりました。
フジタは総合建設業として全国展開しており、もちろん国内工事を行っている会社ではあるのですが、海外への事業展開も幅広く行っています。現在、私は国際本部で、通訳・翻訳業務の他に、現場のIT化を担当しており、海外のシステム業者、現場スタッフや顧客と協議しながら現場で運用できる様々なシステムの構築、導入を推進しています。
海外のスタッフとコミュニケーションをとる時は、Ice Breakingの時間をできるだけとるようにしています。会議の際など、いきなり本題からスタートするのではなく、仕事以外の話をして空気を温め、お互いに本音が言いやすい関係を構築するよう心がけています。簡単な雑談でも、もちろんいいのですが、相手の文化、宗教観、政治情勢なども理解、尊重してコミュニケーションがとれるとさらに深い信頼関係を構築することができると思います。

語学力があるからこそできること

特に今のコロナ禍においては、積極的にコミュニケーションを取るよう意識しています。日本企業で働く外国人スタッフは、やはり言語の壁があり、受け取る情報が限られ、疎外感を持ってしまうことが多くあると思います。そのようなことが原因で優秀な人材を失ってしまうことがないよう、できるだけ多くの情報をタイムリーに共有し、信頼関係を構築できるよう心がけています。少しでも安心してフジタで働いてもらえると嬉しいです。
フジタでは、新入社員の方でも海外で活躍できる機会があります。国内での経験を積んでからになりますが、会社としては積極的に若いうちに経験させるという考えがあると思います。
海外で生活をすると、日本では考えられないような出来事が沢山起こります。私は留学した時、自分が外国人になり、社会のマイノリティになるということを人生で初めて経験しました。その結果、物事をより多角的に考えることができるようになりました。最初は色々な新しいことに戸惑うこともあると思いますが、徐々にその場で臨機応変な行動も瞬時にとれるようになってきます。このような柔軟性は何歳になっても、どんな場面でも必ず生きてくると思います。

“想像する”ことは全てに繋がる

私は学生時代からプレゼンテーションや人前で話すことが大の苦手でした。しかし社会人になると、会議や商談など全てが小さなプレゼンテーションになり得ます。そのような場面で心掛けているのは、イメージすることです。例えば、会議の前には、どのような方向に話を持っていきたいかゴールを設定し、そこに向かってどうアプローチしていけば相手が納得、理解しやすいか、又は相手の懸念点を払拭できるかを具体的に想像します。特に母国語でない言葉で相手に何かを伝える際は、最初に話のゴールを示すことで、相手に聞く準備をしてもらうこともできます。たとえそれが相手にとって好ましくない回答、内容であっても、その後のバックアッププランを自信持って説明できれば、相手も納得しやすくなります。
全国学生英語プレゼンテーションコンテストでは、あまり英語の間違いを心配せず、ゆっくり、自信を持って、そして何よりも楽しんでもらいたいと思います。事前の準備の方法は一人ひとり異なると思いますが、スピーチ原稿を一語一句決めてしまうと、間違いにとらわれてしまい、緊張も増してしまいます。その緊張はオーディエンスにも伝わってしまって、せっかく用意した素敵なプレゼンテーションが聴く人に届かなくなってしまいます。伝えたい内容を箇条書き程度にまとめ、オーディエンスの反応をみながら、その場に応じた表現ができると、説得力にも繋がると思います。

学生の皆さんへのメッセージ

このようなコンテストに参加するのは非常に有意義なものになると思います。欧米の学校ではPublic Speakingの授業があるくらい、学生でも人前で話す機会が多く、プレゼンテーションにも慣れています。私はイギリスに留学していた頃、人前で話すことに慣れておらず、プレゼンテーションが怖くて仕方なかったです。日本の大学では、このような機会は少ないと思うので、スピーチコンテストは、発表の内容だけでなく、話し方やプレゼンテーション能力を鍛える非常にいい機会になると思います。
過去のコンテストで学生の皆さんが発表されているのを拝見しましたが、完成度の高さに非常に感心しました。きっと何度も練習をして相当準備されるのだと思います。そこまで練習していたら、あとは自分を信じて、とにかく楽しんでいただきたいと思います。頑張ってください。