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平成11(1999)年からELI教員を務めた方に、ルーシー・クッカー先生(現・ノッティンガム大学教授)がいました。クッカー先生は、ヨーロッパの外国語教育ではSALC(Self-Access Learning Center:自律学習センター)という施設が効果を発揮しているという事例を私たちに紹介してくれました。SALCは、語学を学びたい学生が自ら訪れ、常駐するラーニング・アドバイザーが学び方を助言し、自律的な学びを促していくというものです。
この画期的な考え方は神田外語大学が目指す英語教育にも通じるということから、まず、4号館の2階にあったふたつの教室をひとつの大きな空間に改築し、最初のSALCを立ち上げました。ラーニング・アドバイザーが常駐し、ELI教員によるさまざまな英語学習支援が受けられるSALCは学生たちにも非常に好評で、利用率もぐんぐん伸びていきました。初代のラーニング・アドバイザーは、現在、立命館アジア太平洋大学で教授を務めているカッティング美紀先生です。
平成15(2003)年には6号館が完成し、SALCとELIを含む教育施設SACLA(Self-Access, Communication, and Learner Autonomy)が誕生しました。神田外語大学では、SALC のさらなる推進を図るために、クッカー先生が書いた論考を基に、当時、学事部長を務めていた伊藤晋二さんが書類を作成して文部科学省に申請し、「平成15年度 特色ある大学教育支援プログラム」に「英語の自立学習支援の新システム」が採択されました。
当時、英米語学科の学科主任(現在の学科長)を務めていた私は、SALCの取り組みを全面的に支援するとともに、神田外語大学の特徴として学外にも発信していきました。
SALCは、6号館のSACLAから現在の8号館(KUIS8)へと発展し、神田外語大学の大きな特徴となっていきますが、その発端はひとりの教員の発案であり、わずかふたつの教室だったのです。そのアイデアを職員が一丸となって実現した。伊藤さんは自身もTESOLの修士号をお持ちで、教育的な視点をしっかりお持ちの実務家でした。教育のイノベーションは、教員と職員のコラボレーションからしか生まれないと実感しました。
その後、8号館には「学習者オートノミー教育研究所:Research Institute for Learner Autonomy Education(RILAE)」が設立され、今や神田外語大学は学習者オートノミー教育研究の中心となっています。ここではオンラインで学習アドバイザーの養成も行い、世界中から注目を集めています。また、後述する大学院TESOLプログラムでは「Learner Autonomy(学習者オートノミー)」や「Advising in Language Learning(言語学習アドバイジング)」といった科目を設置しており、これも神田外語大学ならではの特徴となりました。