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神田外語大学の英語教育に関しては、「進化」というよりも「深化」していくことが重要だと考えています。これまで本学が推進してきた取り組みをさらに強化し、確実な成果につなげていくことが求められます。
まず、平成24(2012)年度から平成28(2016)年度にかけて、神田外語大学は文部科学省の「グローバル人材育成推進事業」に採択されました。その際に、英米語学科が重視したのが、アカデミック英語力の強化です。
アカデミック英語において求められるのは、「認知学習言語能力(Cognitive Academic Language Proficiency: CALP)」と呼ばれる力であり、アカデミックな内容のテキストの読解、講義の聴取とノートテイキング、内容の分析と要約、論理的な意見の発表やレポートの執筆など、教科学習に必要とされる高度な言語運用能力を指します。グローバルな舞台で活躍できる卒業生を育成するためには、教養に裏打ちされた高度な英語力、すなわちCALPの強化が不可欠です。
英米語学科では、このアカデミック英語力の養成を目的に、1年次に週2コマのEnglish for Academic Purposes(EAP)を必修化したほか、英語を教授言語とする講義科目(English-Medium Instruction: EMI)の増設や、「英語専門講読」科目の設置など、さまざまな教育改革を行ってきました。
今後は、これらの取り組みの成果を改めて検証し、教育方法や学習内容を精査したうえで、1年次から4年次までの英語カリキュラム全体におけるCALPの成長を、より体系的に評価・強化していくことが求められます。
学生のCALPが向上すれば、より多くの学生が交換留学制度を活用し、英語圏への留学を実現できるようになると考えています。また、学内においても、より質の高いEMI科目を提供することが可能となり、教育の質のさらなる向上が期待されます。
さらに、本学で学ぶ英語圏からの留学生とEMIの授業を共に受講することや、インターネットを活用して海外大学の授業と連携・交流を行うことなどにより、国際的な学びの場をさらに広げていく可能性もあります。
こうした試みを効果的に実現していくためには、教員間および科目間の連携が非常に重要だと考えています。EMI科目はその分野の専門家が担当しますが、学生は外国語である英語を通じて学ぶため、教授法には創意工夫が求められます。そこで、内容中心の英語授業(ELA: English for Liberal Arts)で用いられている手法などを効果的に活用することが必要です。
また、ELAの授業内容とEMIの内容を連携させることで、EMIにおける教科内容の学びがより深まることが期待されます。
現在、英米語学科ではELAと、英語研究・英語教育研究・英語圏地域文化研究の3つの研究プログラムとの連携を進めており、カリキュラム全体を通して、より深い教養と英語力の育成に取り組んでいるところです。
余談になりますが、EAPが始まった時期に入学した学生に真家崚さんがいます。1年次のころはあまり目立たない学生でしたが、2年次から本腰を入れて勉強し始め、交換留学でアメリカ東海岸のアイビーリーグ名門校、ダートマス大学で学び、大きく成長しました。
彼は神田外語大学を卒業すると、メリーランド大学で修士課程を修了し、ミシガン州立大学の第二言語学研究で博士号を取得しました。そして、帰国後は東京大学で教えた後、東北大学の大学院国際文化研究科の専任講師に就任しました。真家さんのほかにも、活躍している卒業生がたくさんいて、本当にうれしいですね。
ダートマス大学とのつながりは、同大学で教授を務められているジェームス・ドーシー先生です。私の親友でもあるドーシー先生は毎年、ダートマス大学から学生を連れてきてくれて、神田外語大学の学生と文化に関するディスカッションをして盛んに交流していました。そうしたカリキュラム以外で学生の英語を使ったコミュニケーションを活性化していきたいというのはありますね。