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実は開学当時、1・2年次英語カリキュラムは、教材や教授法などかなり確立していましたが、3・4年次の英語科目については、具体的なカリキュラム内容は決まっていませんでした。
英米語学科には文化人類学者であり、TESOLも学ばれたソニア・イーグル先生がいました。イーグル先生は、南カリフォルニア大学大学院で学ばれた内容重視の語学教育(Content-Based Instruction)を提唱されました。単に英語の技術を訓練するのではなく、英語を通じて知識を学ぶカリキュラムです。
英語力というと、4技能(読む・書く・聞く・話す)の訓練に目が行きがちですが、本当に重要なのは、これらの技能を使って何を理解し、自分の考えや思想をどのように発信するかという点です。 現在では、CLIL(Content and Language Integrated Learning:内容言語統合型学習)として普及していますが、当時は神田外語大学が先駆けだったと思います。
この言語教育アプローチであれば、ジョンソン先生の「3つのi」を実践することもできますし、英語を通じて教養も学べます。こうして内容重視の英語カリキュラムが、開学3年目の平成元(1989)年からスタートしました。
しかし、内容と言語を統合するというのは、単に教科内容を英語で教えればよいというわけではなく、教育方法にかなり工夫が必要です。英米語学科では、このカリキュラムのスタート以来、試行錯誤を重ねながら、言語学習と教科学習を融合させた形の英語教育を目指してきました。
そして、これが後の3・4年生対象の「英語総合講座III」や現在の「English for Liberal Arts」という内容中心英語科目へと発展していきます。この内容中心の英語教育こそが神田外語大学における英語教育の大きな特徴となっています。
話は開学4年目の平成2(1990)年に戻ります。その年、初代学長の小川先生が逝去されました。後任の学長に就任されたのは井上和子先生でした。
井上先生は着任されてすぐに、英米語学科の語学以外の「専門教育科目」と呼ばれていた科目(現在の「研究科目」に相当)のカリキュラムが体系的に専門知識を学べる構造になっていないことを指摘されました。そのご提言を受けて、早速、英米語学科内で「言語学」「比較文化」「国際関係」などの5つの「副専攻課程」を仮に立ち上げました。
この取り組みは、専攻語学科と4つの研究コース(言語研究、コミュニケーション研究、比較文化研究、地域国際研究)を核とする大学全体のカリキュラム(井上学長時の平成7(1995)年度スタート)や後の研究プログラム制へとつながっていった重要な第一歩だったと思います。
井上先生は、日本を代表する言語学の研究者でありながら、熱心な学生であればどのような学生に対しても献身的に指導を行い、育てていくという教育者としての真摯(しんし)な姿勢をお持ちでした。その姿勢にはいつも感銘を受けていました。本学卒業生の1期生である藤巻一真さん(現・神田外語大学英米語学科准教授)や上田由紀子さん(現・山口大学教授)は、井上先生の指導と薫陶を受けた代表的な存在です。