第4回 敬語を使い分ける ~日本人社員との「距離感」の縮め方~

私は現在、日本語教務として、外国籍社員向けの日本語研修プログラムの作成や指導を担当している。コロナ禍で日本語研修はすっかり様変わりした。日本で働く外国籍社員もほとんどが在宅勤務となり、レッスンも9割以上がオンラインに切り替わった。仕事で話す機会が減り、自身の日本語力や発音に不安を感じるケースが増えている。それとは裏腹に、メールやチャットを書く機会が増え、ビジネス文書(ライティング?)のトレーニングを求める声が多くなっている。この傾向はまだ当分続きそうだが、外国人学習者にとって、変わらず難しいのが「適切に敬語を使う」ことであるように思う。

敬語習得については、この「適切に」という点がポイントである。いつ敬語を「使い」、いつ「使わない」か。日本人は、相手との関係性や状況から、この2つを自然に使い分けることができるのだが、外国人にはこの使い分けが難しく、どちらか一方になる傾向がある。タイプとして2つに分けられる。常に丁寧体の「です」「ます」を文末につけるタイプ(タイプA)、もしくはタメ語とも言われる普通体で友達のように話してしまうタイプ(タイプB)である。タイプAの印象としては、丁寧だがよそよそしく、親しみが感じられない。タイプBはなれなれしい、失礼、という感じだろうか。

以前、私はタイプAとBの学習者を同時に教えることになった。国の大学で日本語学科を卒業し、敬語が得意なタイプAの彼女は同僚にも「です」「ます」で話すのだが、友達がなかなかできない、とこぼしていた。一方、日本の大学に通い日本人の友人も多いタイプBの彼は敬語が使えないことが課題だった。授業では敬語の練習を行った。

「どのタイミングで『です』『ます』を取ったらよいですか?」というタイプAの彼女の質問にきちんと答えられなかったことがずっと気になっていた。私は、答えを求め、大学院の門をたたいた。そこで敬語を使うということは相手との距離を作ることであるということに気づかされた。そこから相手と親しさを表したい時、距離を縮めるために日本人は「です」「ます」をどのようにはずしているかも見えてきた。

外国籍社員がビジネスの場面や職場で、伝えたい内容をどのような印象で伝えるかは非常に重要で、画面上の相手となれば尚のことである。丁寧さを保ちつつ、かつ親しみも感じてもらえる。学習者がそんな話し方ができるようになるためには何が必要か、そしてどうアドバイスできるかを日々考えている。

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