マーケティング最前線!

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ハーバード大学も強い関心!フォロワー2.4億人の世界最強YouTuber『MrBeast』!

2024.05.21

フォロワー2.4億人の世界最強YouTuber『MrBeast』。彼の経歴、Netflixの人気ドラマ「イカゲーム」を再現した代表的な動画、慈善活動などを紹介し、その成功の背後にあるMrBeastの「エクスポネンシャル的思考法」に迫ります。

 「MrBeast」のYouTube登録者数2.2億人!

2023年10月15日。カンザス州出身のアメリカ人スーパーYouTuberの「MrBeast」(ミスタービースト)が、自分のメインYouTubeチャンネル登録者数(subscriber)が2億人を突破したことを発表しました。世界の人口が80.4億人、米国が3.4億人、日本が1.2億人なので、その規模の大きさがわかります。

前年(22年)7月28日、彼は、チャンネル登録者数1億人達成を祝うライブ配信を開催したばかりでした。彼の登録者数(フォロワー数)が2倍の2億人を超えるのに「15ヶ月」しかかかりませんでした。まさに指数関数的な急激な増加です。

「MrBeast」は、この瞬間、「X」を通じて、自分のファンに対して次のようなメッセージを伝えました。「チャンネル登録者数が200,000,000人(2億人)に達しました!タイムスリップして13歳の頃の僕にこのスクリーンショットを見せたとしても、彼がこれを現実だと信じる可能性はゼロです。でも、これは始まりに過ぎず、まだ何十年も残っています」

「MrBeast」(ミスタービースト)。「Beast」は「野獣」。本名は「ジミー・ドナルドソン」(Jimmy Donaldson)氏。1998年5月7日、(アメリカ国土のほぼど真ん中に位置する)米カンザス州ウィチタ生まれ(25歳)。職業はYouTuber/慈善家。イースト・カロライナ大学入学後2週間で中退。身長189cm。

ロゴマークの『青い豹』は闘志と決意を象徴

メインのYouTubeチャンネル「MrBeast」の登録者は2.2億人(2023年末時点)。さらに5つのYouTubeチャンネル「MrBeast Gaming」(ゲーム)、「MrBeast Shorts」(ショート動画)、「Beast Philanthropy」(慈善事業)、「Beast Reacts」(面白い他人の動画にリアクション)、そして「MrBeast 2」(セカンドチャンネル)を運営。

彼のロゴマークは、「青の豹」(パンサー)。目から赤い稲妻のようなラインが放たれている。「パンサー」は、強さと勇気のシンボルで、YouTuberとしての闘志と決意を表しているそうです。彼の推定年収は62億円(2021年)。

2020年と21年のストリーミー・アワードで「クリエイター・オブ・ザ・イヤー」を受賞。2022年11月、スウェーデン人(日本移住)の「ピューディパイ」(PewDiePie)を抜いてYouTube界で世界最多登録者数を誇るクリエイターになりました。

一方で、MrBeastは、2020年からハンバーガーデリバリー事業「MrBeast Burger」、翌22年1月からスナック販売事業「Feastables」を開始するなど、YouTube以外で自己のブランド力を活用したビジネスに乗り出しています。

「MrBeast」の名前の由来は、「Xbox」(Microsoft社のゲーム)のゲーマータグ。
彼はXboxが自動生成した「MrBeast」という名前を偶然見つけ、「MrBeast6000」を自分のゲーマーネームに決定。後に、自分のYouTubeのアカウントを作成するとき「6000」を削除し「MrBeast」を採用したのです。

 MrBeastが有名になった動画『10万まで数えた!』

MrBeastは、2012年、13歳のときにYouTubeの動画配信をスタートしましたが、最初から注目されたわけではありませんでした。

しかし、2017年1月9日にアップした動画で、突然、彼は脚光を浴びました。それが24時間にわたる動画『10万まで数えた!』(I Counted To 100,000!)。退屈を持て余していた彼が、ひたすら、カメラの前で「10万まで数え上げる」シンプルな内容。「10万」(one hundred thousand)を数え終わるまでの実際の撮影時間は40時間。驚くことに、この動画がアップされてから2ヶ月足らずで、なんと830万回も再生されたのです。

一般人からみると「くだらない(笑)」「何の意味があるの?」と思ってしまうことでも、それをやり遂げる「天才」が世の中には必ず出てきます。誰もが思いつき、やろうと思えばできそうなアイデアを、実際にやってのけるMrBeastの不屈の精神力や実行力に、逆に多くの視聴者が関心を持ち感動したのです。

たとえば、別の例ですが、米国人YouTuberのハンター・ホッブス(Hunter Hobbs)氏は、「Excel」(表計算ソフト)で、ショートカットキー(Ctrl+↓キー)を使わずただひたすら「↓」キーを押し続け、Excelの最終行までたどり着くことにチャレンジ。彼は9時間以上「↓」キーを押し続け最終行までたどり着きました。多くの人は「ばかげた挑戦」と笑うかもしれませんが、彼は、最終行まで「1,048,576行」あることを発見したのです。

MrBeast自身も、40時間かけて10万まで数え終わり、「自分でもこれをやり遂げたことが信じられない」とコメントしています。彼の精神力と実行力は敬服するに値します。

MrBeastの「エクスポネンシャル的思考」

MrBeastのようなある種の「ぶっ飛んだ思考」の持ち主には、「エクスポネンシャル思考」(エクスポネンシャル・マインドセット)が備わっていると示唆されます。1、2、3、4・・・8のような直線的(linear:リニア)な増加は「人間の直観」に従った漸進(ぜんしん)的な変化です。対して、「エクスポネンシャル」(exponential)は「指数関数的」変化を意味し、1、2、4、8、16、32、64、128と急激に増加していきます。こうした「指数関数的増加」は、デジタルビジネスやソーシャルディアの重要な特性の一つです。

経営学専門誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR、2016年7月27日)は、直線的変化を前提する考え方、つまり「漸進的な考え方(incremental mindset)は何かをより良くすることに集中し、指数関数的な考え方(exponential mindset)は何かを変えることに集中する。インクリメンタル(漸進的な思考)は10%で満足する。エクスポネンシャル(思考)は10倍を目指す」と解説しています。

たとえば、MrBeastのフォロワー数2.2億人の達成は「指数関数的」な拡散効果の結果にほかなりません。さらに、このあと紹介するMrBeastの発想やプロジェクトのスケールの大きさはまさに「エクスポネンシャル的な発想」にもとづいているといえます。

Netflix人気ドラマ『イカゲーム』の現実版を完璧に再現!

MrBeastは、2021年11月、YouTubeチャンネルで、Netflix人気ドラマ「イカゲーム(Squid game)」(『イカゲームを現実世界で再現してみた!』)に登場するセットを実際に再現し、参加者を募集し、生存ゲームを実施し動画で公開ました。セットの設営/製作コストが200万ドル(約2.3 億円)、賞金総額に150万ドル(約1.7億円万円)で、総費用350万ドル(4億円)。YouTube用の1本の動画費用として、そのスケールの大きさに驚きます。

そこでは、「イカゲーム」と同じように456人の参加者が集まって、賞金45.6万ドル(約5,239万円)をかけてゲームが展開されました。ちなみに「イカゲーム」内で頻繁に登場する「456」は象徴的な数字です。ゲームの参加者数も「456」人、最終的な賞金も「456」億ウォン(45.6億円)。

当初、Netflixの原作ドラマ制作者は、多くの人々が「100」という数字を最大限の数として認識し、賞金100億ウォン(10億円)あれば十分だという意味で、「100」を象徴的な数字として使用しようとしました。しかし、時間が経ち物価も上昇したため、100という数字はインパクトが弱く感じられ、456という数字に変更されたとされます。

そして、「456」には、「普通の中産階級が努力する生活」という意味もあります。1桁の数字を「123456789」と並べると、「456」の3つの数字は「中間グループ」となります。また、資本主義社会では、大多数(中産階級層)が「中間」を安全だと思って選択することが多いため、「同調圧力」をも示唆しているそうです。

企画者であるMrBeastが中継する形式という点をのぞいて、ほぼ全シーンがドラマと同じように展開されました。「だるまさんがころんだ」「型抜き」「ガラスの橋渡り」など。最終ゲームまで生き残った参加者は計6人。最後はイカゲームの代わりに椅子取りゲームに変更。最終的に79番の参加者が生き残り、MrBeastが用意した賞金45.6万ドルを獲得。

この動画は配信後2週間で1.6億回再生を達成。2023年末で5.5億回再生されており、MrBeastを代表する成功動画となっています。

 MrBeastによる「植樹」「海洋ゴミ削減」大規模プロジェクト

前述のとおり、MrBeastは「Beast Philanthropy」というチャリティ活動に特化したYouTubeチャンネルも運営しています。「私の広告収入、商品販売、スポンサーシップによる利益の100%は、世界をより良いものにするために使われる」と説明が付されています。2023年末で2,200万人以上のチャンネル登録者を獲得しています。

2019年5月、MrBeastは、「2000万人のチャンネル登録者を獲得した時には、お祝いとして2000万本の植樹をしよう」と動画で提案。人気ユーチューバーのピューディパイ(PewDiePie)、ジャックセプティックアイ(Jacksepticeye)、音楽プロデューサーのマシュメロ(Marshmello)、テスラ社CEOのイーロン・マスク(Elon Musk)氏らと協力し、アメリカの非営利団体である保護教育機関の「Abor Day Foundation」(アーバーデイ財団)とパートナーシップを組んで、10月25日に正式に「TeamTrees」プロジェクトが運営されることになりました。「arbor day」とは「植樹祭」という意味。同年の年末までにキャンペーンは目標の20,00万ドル($1/苗木)を集め、2,440万本以上の木が米国の国立公園に植えられました。

さらに、MrBeastは2021年に「TeamSeas」と名付けた同様のプロジェクトを発表し、「OceanClean」と「Ocean Conservancy」という組織のために3,000万ドルを集め、3,000万ポンドのゴミを海から一掃することを目標に設定。彼は、自身のメインチャンネルに「I Cleaned The World’s Dirtiest Beach #TeamSeas」と題した動画を投稿し、TeamSeasの宣伝と、チームとともにプラスチックで覆われたビーチを清掃した際の取り組みを詳細に紹介。MrBeastは再び多くの著名なコンテンツ・クリエイターと提携し、3,300万ポンド(1,500万キロ)以上のゴミを海から取り除きました。

くわえて、MrBeastは、目が見えないか見えかけているが手術を受ける余裕がない1,000人の白内障除去手術費用を負担しました。動画『1,000人の視覚障害者が初めて見ることができた』(2023年1月30日)は、2023年末で1.6億回再生されています。

彼は、慈善活動に関して次のように語っています。

“I’ll use my money to help people and I promise to give away all my money before I die. Every single penny.”

(私は自分のお金を人助けのために使い、死ぬまでに全財産を寄付することを約束します。1ペニーも残さずに。)

 MrBeastの成功の理由は、好奇心の刺激、真正性、実験/革新

ここで、MrBeastの成功の要因を整理しておきましょう。第1が、常に視聴者の好奇心を刺激する。彼の方程式として、まず前提を説明し、魅惑的な「フィナーレ 」を約束することで、動画の最初段階で視聴者を惹きつけます。彼は、重要な価値提案を早い段階で伝えることで、潜在顧客が最後まで興味を持ち続けるように仕向け、コンテンツに抗しがたい魅力を持たせ、視聴者に次の展開を期待させることに成功しています。

第2が、「真正性」と「本物感」。MrBeastは、ジーンズ、Tシャツ、パーカーに身を包み、無精髭をたくわえ、常に自分がリアルに興奮し続けている姿を視聴者に披露します。彼のオープンで純粋な「本物」の姿に、2億人超もの人々が関心を持ち、魅了されているのです。

第3が、常に、実験と革新にチャレンジしている点です。MrBeastのモットーは、限界に挑戦し、より大きくなることです。こうしたスタンスによって、彼のコンテンツは常に新鮮でエキサイティングなものとなり、視聴者を惹きつけてやみません。「守り」に入るのではなく、自己の「コンフォートゾーン」(快適で安全な空間)から一歩踏み出し、独自のアプローチを見つけ、革新性と卓越性を追求しているのです。

挑戦し続ける彼の姿勢は、次のような彼のコメントにも表れています。

“You have to have a never-ending thirst for learning.”

(人は、学ぶことに対して「果てしない渇望」を持たなければならない)

MrBeastは、常に、オリジナリティ、創造性、独自性を追求し、コンテンツ制作に自分の時間と思考を捧げています。金銭的な利益だけにとらわれず、より良いコンテンツを作ろうと彼の努力とそのパフォーマンスが、視聴者に永続的なインパクトを与えているのです。こうしたMrBeatの成功要因は、起業家が成功するための指針にもなると評価されています。

MrBeastのライバル/同業者であるYouTuberのひとりは次のように語っています。「MrBeastの面白いところは、可能な限り最高のビデオを作ろうとする絶対的な献身だと思う。彼がアップロードすると、人々はクリックする。彼らは、MrBeastのビデオをクリックするとき、それを本当に面白くするために、とんでもない努力が払われていることを知っている。」

MrBeastに対するこうした評価からも、前述の「彼のエクスポネンシャル的な思考」が読み取れます。

ハーバード・ビジネス・スクールでの特別講義

さて、2023年4月上旬、MrBeastは、経営大学院の超名門のひとつ、ハーバード大学経営大学院(HBS: Harvard Business School)の起業家養成コースで講義を実施。彼自身が以前同校で学んだ経験もあるそうです。MrBeastのオンライン・ブランド構築と慈善活動への活用の経験から貪欲に学ぼうとする熱心な学生たちが参加しました。

授業の中で、MrBeast先生は、ブランディング、ソーシャルメディア戦略、魅力的なコンテンツの作成などのトピックを学生と共有。彼の慈善活動へのアプローチや、植樹、飢餓への支援、地元企業の支援など、さまざまな慈善活動のために自身のプラットフォームを活用して数百万ドル以上を集めた方法も紹介。

MrBeastは、起業において強いビジョンを持ち、目標を設定し、計算されたリスクを取ることの重要性を強調。また、忠実なファンを作るためには、本物であること、そしてオーディエンス(ファン・顧客)との真のつながりを築くことの必要性を説きました。

大学入学後2週間で中退した経歴を持つMrBeast先生による、「名門経営大学院」でのスペシャルな講義。MrBeastのような、エクスポネンシャル思考的を持ち、型にはまらない影響力のある人物や起業家が、そのユニークな視点や事業への多大な献身、ビジネス界そして社会への多大な貢献によって評価されるという「新時代」に入って、彼の特別講義は、「経営学(ビジネス)の教育」の進化を示唆していると報じられています。

最後にMrBeastの名言をもうひとつ紹介します。

“You’re crazy until you’re successful, then you are a genius.”

(成功するまでは「クレイジー」(どうかしている)といわれるが、成功したとき、あなたは「天才」になる)

「MrBeast」の次の革新的なチャレンジを、世界の多くのフォロワーが熱望しています。

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