マーケティング最前線!

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「絵本」みたいな韓国発『2Dケーキ』『コミックケーキ』ってなに?

2024.04.22

日本の女子高生の間で「これから流行しそうだと思う食べもの」の第2位にランキングしている韓国発「2Dケーキ」。その内容と人気の理由を紹介します。くわえて、「トゥンカロン」「クロッフル」「ストロベリーボンボン」など、韓国で次々に「映える」スイーツが誕生する背景も探ってみます。

高校生が「これから流行しそうだ」と思うお菓子第1位は「グミ」

「LINEリサーチ」が行った、(日本の)全国の高校生を対象に「これから流行しそうだと思う食べもの・飲みもの」調査(2023年3月実施)によると、1位は男女ともに「グミ」。

「グミ」はドイツ発祥のお菓子。「ゴム」を意味するドイツ語「Gummi」に由来。果汁などを、ゼラチンや砂糖、水あめで固めた、ゴムに似た弾力のある食感。製造で形や色を工夫しやすく、バリエーションが豊富で、見た目にもインパクトがあるため、SNS投稿に向いているのが人気の理由です。

グミといえば「地球グミ」(「トローリ プラネットグミ」)。地球を模した丸いデザインで、口で噛みつぶして開封する時の『パンッ!』という音がウケて、SNSで拡散され2021年からブームとなりました。

「グミ」の次に女子高生に人気の「2Dケーキ」

さて、ここで注目したいのが、女子高生の間で第2位にランクインした「2Dケーキ」「コミックケーキ」です。「2Dケーキ」「コミックケーキ」ってなに???こうした反応をする読者の方は少なくないと思います。

「2Dケーキ」(ツーディーケーキ)とは、写真に撮ると、2次元/平面(two-dimensional)、つまり、絵本のように見える韓国発祥のケーキのことです。マンガやイラストで描かれるケーキのようにも見えるため「コミックケーキ」とも呼ばれています。

ケーキやフルーツの境目を、着色したクリームやチョコレートなどで縁取ると、立体的(3D)なケーキが平面(2D)のように見えます。マンガで、よく、くっきりした黒線でキャラクターの輪郭が描かれますが、そこが縁取った「2Dケーキ」と似ているのです。この「2Dケーキ」は、SNS映えが理由となり、韓国で大人気となり、日本に上陸した「不思議なスイーツ」です。

「絵本」のような「2Dケーキ」

SNS上では「まるで絵本の世界に飛び込んだみたいでかわいい」「チョコペン一つで映える!」といったコメントが散見されます。ちなみに、チョコペンとは、クッキーやケーキなどに文字やイラストを加えるためのデコレーション用の製菓材料。宛名(Dear~、〜ちゃんへ)や「happy birthday」などのコメントを「チョコの文字」で書いたり、花やキャラクターなどのイラストを描いたりするために使うものです。

VR(仮想現実)を活用した立体型映像「3D」(3次元)や、(振動・香りなどの)体感型映像「4D」(4次元)が注目されている現在、ケーキであるとはいえ、なぜ、「2D」(2次元)が女子高生に注目されるのでしょうか?

第1の理由は、SNSなどの画像「映え」です。マンガみたいで可愛いという「平面」効果は、「3D」「4D」時代だからこそ、逆に「差別化」されて、インパクトが強くなるのです。

第2は、(上記1の)SNS映えに関係していますが、画像を見たときの「錯覚」によって、閲覧者の注意を引く効果です。レシピサイト「クックパッド」によると、立体であるにもかかわらず、「奥行きが感じられず」に平面に見える「2Dケーキ」を見た人からは「脳がバグるようだ」とのコメントが多数寄せられ、注目が集まっているようです。

「2Dケーキ」を見ると「脳がバグる?」

「脳がバグる」とは、「トリックアート」(だまし絵)を見たときの「うまく理解できない」「錯覚を起こす」などの不思議な感覚を持つことを意味します。「バグ」(bug)は、英語で「虫」の意味で、コンピューターのプログラムの誤りや欠陥を表す用語。若者たちが、それを日本語的に動詞化したのが「バグる」。なお、コンピューター用語の語源は、米国において、1940年代の初期のコンピューターの中に、実際に「虫」が入り込んで故障したことにあるそうです。

第3が、「2Dケーキ」作りの手軽さです。「2Dケーキ」は、始めからケーキを手作りしなくても、市販品を上手に使って作れるのです。もちろん、最初から「手作りケーキ」を作ってチョコレートで輪郭を足すことも可能ですが、ふだんケーキ作りに慣れていない人は、市販のロールケーキやショートケーキを使い、表面に生クリームを塗って、チョコペンで線を書けば2Dケーキが出来上がります。

高校生たちは、チョコペンで輪郭を描き、「手作りの可愛らしさ」を演出し、『自分らしさ』を表現/アピールすることを楽しんでいるという分析もあります。

 トゥンカロン、クロッフル、ストロベリーボンボンは「映える」!

ここで紹介した「2Dケーキ」を含め、日本でも人気になっている韓国スイーツは数え切れません。

「太っちょなマカロン」という意味を持つ「トゥンカロン」。シンプルに美味しい味、新食感と映えるトッピングの「クロッフル」(「クロワッサン」×「ワッフル」)。大粒のイチゴが入ったパフェ「ストロベリーボンボン」。紙カップに入った「映える」ティラミス・・・

そもそも、どうして、次から次へと、新しい韓国スイーツが日本に上陸し、高校生を含むZ世代から絶大な支持を獲得しているのでしょうか?

「SNS映え」と、韓国社会の「高い美意識」

その最大の要因は、「SNS映え」だと、考察されています。日本で人気の出る韓国スイーツの大きな特徴は、思わず「カワイイ!」「他人に見せたい!」「ちょっと自慢したい」「面白い」と気分が上がってしまうような見た目のものが多く、そうしたビジュアル要素がSNSでバズり、「#韓国スイーツ」などのハッシュタグを介してブームになっていく点にあります。

(次の疑問として)それでは、どうして、韓国で「映える」スイーツが次々に誕生するのでしょうか?その理由を、食トレンド研究家の渥美まいこ氏がわかりやすく解説しているので、紹介しましょう。

その大きな理由が、韓国社会における「高い美意識」にあります。韓国の美意識に関しては、就職活動(履歴書の写真)、韓国コスメ、美容法や美容整形などのエピソードが日本のメディアでもよく取り上げられます。また、韓国の縦スクロール/フルカラー漫画ウェブトゥーン(Webtoon)の作品『外見至上主義』(累計閲覧数52億回以上)のヒットからも韓国社会の美意識が読み取れます。

韓国コスメを例にとれば、低価格(プチプラ)だけでなく、パッケージのカラフルさと可愛らしさを理由に、日本の若者に高い人気です。そうした商品の特性も、高い美意識に影響を受けているとされます。

韓国スイーツの「玩具感」

渥美氏は「韓国スイーツも韓国コスメも、日本市場なら躊躇してしまうぐらいの玩具感があって、それがインスタ映えするという定義で受け入れられて」いる、と分析しています。

日本の場合、「映え」効果を狙って「食べ物で遊ぶのは不謹慎」といったネガティブな反応が、特に年齢の高い顧客層から出る可能性は否定できません。そうした点に配慮し、スイーツの作り手側が「やりすぎかもしれない」と自己抑制してしまう傾向があるそうです。

一方、韓国社会には、そうした自己抑制のブレーキにはつながらない、圧倒的な「高い美意識」が存在し、その目的に対して迷いなく前進するという考えがあるとされます。そうした風潮は、コスメやスイーツ開発の底流にも流れています。

言い換えるなら、コスメもスイーツも「美しく映える」ためならば、これまでの「常識」あるいは「既存のライン」をダイナミックに軽々と突破することを躊躇しない傾向が強いのです。これが、渥美氏の考察です。

韓国カフェ競争の手段としての映え系スイーツ開発

くわえて、ネット上などで紹介されていますが、韓国で映え系スイーツが次々に誕生するもう一つの理由は、国内での「カフェ間の激しい競争」です。韓国は、日本以上に「カフェ文化」が発達しており、10万軒近いカフェが存在するそうです。韓国農水産食品流通公社の統計によると、2023年の韓国国内1人当たりの年間コーヒー消費量は405杯で、グローバル平均(152杯)をはるかに上回っています。

韓国ドラマで、主人公たちがカフェで過ごすシーンが数多く登場するのも、発達した「カフェ文化」がその背景にあるようです。

韓国における「カフェ文化」浸透の背景には、第2次世界大戦後に駐留した米軍の文化的な影響や、不況下でも個人事業として少ない資金で開業しやすいこと、高学歴社会に備える学生たちの効率的な勉強場所などの要因があるとされます。

そうした多くのカフェが競争するにあたって、オリジナリティーあふれる、美味しくて「美しい」スイーツを提供するという流れがあり、それがビジュアル面で目立つ「映え系」スイーツの継続的な開発につながっていると分析されています。

「2Dケーキ」から派生した「モノクロスイーツ」

さて、レシピサイト「クックパッド」によると、昨年(2023年)の後半からは、「2Dケーキ」から派生した「モノクロスイーツ」も注目されています。

「モノクロスイーツ」とは、黒ゴマやブラックココアパウダー、竹炭パウダーなどの黒い食材と、生クリームなどの白い食材を組み合わせて、見た目を「白黒」(モノクロ)に仕上げたスイーツです。

彩りよくカラフルに仕上げる従来のスイーツに対して、その逆を行くことで、見た目がびっくりするスイーツ。韓国では、現在、「シンプルで無機質なトーン」のカフェが流行っていて、全身モノトーンコーデでSNS映えを楽しんでいるカップルや女性が多いそうです。「モノクロスイーツ」もそうしたトレンドの延長線にあるといえます。

そういえば、昨年(2023年)の秋、日本のスターバックスでも、すべてのフラペチーノ商品にビターな「ブラックキャラメルソース」をプラスできるハロウィン限定の「真っ黒」な「Booooo カスタマイズ」というサービスが提供され、大きな話題になりました。「お化け」が人を驚かせるときに発する「Boo!」(ブー)という英語表現にかけているそうです。

いずれにしても、2024年の日本で、どのような韓国スイーツが新たなブームを作り出すのか、多くの人が楽しみにしていることでしょう。


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