仲代表の「グローバルの窓」

仲代表の「グローバルの窓」

第57回 Why is i-mode selling so well in Japan but not overseas? This question is the answer.(なんで日本であんなに売れてるiモードが海外では売れないの?その質問こそが答えだよ)

2023.12.21

次の iモードは台湾

 2.5Gの携帯端末をリリースして海外市場に再参入した我々は、更にiモードの2.5G携帯端末をもリリースし、一般とiモードの二系統の2.5G端末を拡販することになりました。iモード端末は私の上司が交渉して、オランダから大口受注を勝ち取りましたが、その後、ハチソン向けの3G端末の話が本格化し、上司は3Gのビジネスに注力することになったため、私がiモードと一般の2.5G端末の両方を推進する役割を担うことになりました。

 オランダに次ぐiモードのターゲット市場は台湾でした。NTTドコモからの納期要求は厳しく、私は欧州出張から帰国するや、すぐに事業本部のソフト開発責任者と打ち合わせを持ちました。ローンチする前にフィールドテストが必要なので、台湾には数十人の技術者が張り付きました。私もローンチの1か月前から張り付き、フィールドテストの進捗状況をNTTドコモに何度も説明しました。ミーティングでは性能改善へ向けての厳しい追及があり、毎回その対策と説明に追われる日々でしたが、ついにターゲットのローンチ日に間に合わせることができ、オランダに次ぐ2番目のiモードビジネス開始に漕ぎつけました。

日本の iモードと海外の iモードとは違う!?

 オランダ、台湾で苦労した甲斐があり、その後のiモード機のローンチはフランス、ドイツ、イタリアとスムーズに投入できました。これもNTTドコモの厳しい要求に食らいついていったからだと思います。さらにオペレーターでは最大の加入者数を持つスペインのテレフォニカ社にも納入を果たし、NTTドコモが資本投下した各国のオペレーターすべてに供給することができました。他の日系端末ベンダーはほとんど対応できず、海外のiモード市場の端末はほぼNECだけとなりました。日本のiモード市場はNECとパナソニックで二分していましたが、海外では我々NECがほぼ独占するかたちとなりました。

 ところが、日本であれだけ売れているiモードが海外では思ったほど売れませんでした。オランダでは20万台の大口受注を獲得し、一括納入しましたが、売れ行きは芳しくなく、オペレーターの在庫となって、なかなか掃けません。日本で最強ペアのNTTドコモ(携帯サービスオペレーター)とNEC(端末ベンダー)でしたが、海外ではなぜか売れないのです。

周りの人からは、「なんで日本であれだけiモードが売れているのに海外では売れないの?売り方が悪いんじゃないの?」とよく言われました。しかし、理由は明白でした。日本でのビジネスは、携帯サービスオペレーターであるNTTドコモが実質すべてを取り仕切っていました。端末ベンダーとコンテンツプロバイダーはNTTドコモの要求とおりに開発、供給すれば、あとは全部NTTドコモが売ってくれるのです。また、生産した分はすべて購入してくれるので在庫リスクは端末ベンダーに発生しません。

 しかし、海外では端末を売る責任はNECにあり、売上計画はもちろんのこと、販売促進や宣伝広告、在庫管理もすべて端末ベンダーが行う必要がありました。端末販売の主体はあくまで端末ベンダーの責任なのです。当たり前と言えば当たり前なのですが、日本市場ではサービスと端末販売を一体化し、NTTドコモが売っていたため、市場へのアピールは強烈でした。海外はその一体感がなかったため、iモードの認知度が上がりませんでした。さらにNTTドコモの日本市場での販売投資金額に比べ、我々が海外市場に販売投資する額は微々たるものでした。数値的には2桁違っていたのです。

日本市場での成功体験という罠

 周りからの「なぜ日本で売れるのに海外で売れないの?」という質問に対し、私の答えは「その質問こそ答えです。日本で売れるから海外で売れないのです」というものでした。端末やコンテンツはiモードでしたが、ビジネスモデルはiモードとは違っていたのです。日本市場での成功体験がそんな肝心なことを覆い隠していたのです。日本市場での成功体験という大きな罠に我々は嵌ってしまったのでした。


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