第3次ドーナツブーム <その2>「生ドーナツ」が主役!

「I’m donut ?」などの「生ドーナツ」に牽引されている日本国内における「第3次ドーナツブーム」を、ドーナツの歴史、日本のドーナツ文化、ドーナツが好まれる理由の視点から考えてみます。 

イギリスの清教徒が、ドーナツをアメリカに持ち込んだ!

もともと、「ドー」+「ナッツ」は、生地を意味する「Dough」(ドウ)と「Nuts」(ナッツ)から名付けられたといわれています。ドーナッツの起源は、オランダのお菓子「オリークック」までさかのぼるそうです。「オリークック」(Olykoek)は、オイルケーキ。小麦粉、砂糖、卵で作った甘い生地を、イースト菌を加えてふくらませ、ボール状にしてラードで揚げた菓子。 

迫害を受けたイギリスの清教徒たちが、メイフラワー号で新大陸(北アメリカ)を目指す途中に立ち寄ったオランダで、あるお菓子に遭遇。それが、円形の揚げ菓子の上にクルミがのせられたオリークックという名前の揚げ菓子。 

その後、「オリークック」は、新大陸アメリカに渡ります。一説によると、現在のドーナツの形は、この揚げ菓子を作る際に、ナッツ(クルミ)の代わりに中心に穴を開けて作られたことに由来するといわれています。また、19世紀頃のアメリカの船長グレゴリー氏が幼少期に母親に作ってもらった揚げ菓子の火の通りが悪かったため、中心に穴を開けて作ってもらったという説もあります。 

 日本のドーナツ文化定着に「ミスタードーナツ」が大きく貢献!

日本にドーナツ文化が定着するにあたっては、「ミスタードーナツ」が果たした役割がかなり大きいと分析されています。「ミスタードーナツ」(Mister Donut)は、アメリカの有力ドーナツチェーン「ダンキンドーナツ」の共同経営者が1956年に独立開業したのが始まり。その後、アメリカに存在したミスタードーナツはダンキンドーナツ(現「ダンキン」)に吸収合併されました。 

アメリカ発祥のドーナツチェーン店「ミスタードーナツ」は、日本では清掃事業大手のダスキン社が運営しています。同社の主要事業は、清掃用品や衛生用品の定期レンタルと販売事業です。ミスタードーナツ(ファンによる通称「ミスド」)は、2023年3月時点で、日本国内に1,000店舗を展開しています。 

ダスキン社が運営するミスタードーナツは、1971年に大阪府の箕面市に1号店を開店しました。オープン当時24時間営業を採用したことでも話題となりました。日本人の口に合うドーナツの開発や日本市場向けのプロモーションに力を入れ、アメリカ市場とは対照的に日本市場ではミスタードーナツ「一強」状態になっていきました。 

「ドーナツには、ケーキ生地を揚げて砂糖をかけたものだけでなく、ブリオッシュ生地もある、グレーズをかけたものもある」。

1971年に日本に上陸したミスタードーナツによって、その美味しさとバリエーションの豊かさを、子どもから大人まで幅広い世代が知ることになったのです。

 

 21世紀になって、現在、3度目のブーム到来!

ミスタードナッツの影響などで、20世紀後半、日本にドーナツ文化が定着。そして、21世紀に入ってから、現在、3度目のブームを迎えているといわれています。 

21世紀に入っての1回目のドーナツブームは、2006年に訪れました。それが、「クリスピークリームドーナツ」(Krispy Kreme Doughnuts)の上陸。アメリカ発のこのチェーン店は、カラフルなグレーズと、その美味しさ、甘さという点で、ミスタードーナッツとは別の「ドーナツの世界」を日本人に提示したことにより、一挙に人気が集まりました。 

同社は2006年の日本上陸以降急拡大するも、2016年には大量閉店に至り、人気の勢いが削がれてしまいました。後退の一つの要因が、同社の高カロリーのドーナツと、人々の間の「健康志向」のミスマッチ。しかし、2022年に入って、同社は、復活の兆しを見せています。

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たとえば、2022年8月には国内最大の店舗面積を有す東京国際フォーラム店をオープン。新店舗では看板商品の「オリジナル・グレーズド」を店内で製造。その過程をガラス越しに見学できる「ドーナツシアター」を備えるほか、イートインでしか味わえない店舗限定商品を販売するなど、大きな話題を提供しています。 

21世紀に入っての2回目のドーナツブームが、コンビニによるドーナツ提供。2015年、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートの大手コンビニ3社で「コンビニドーナツ」の本格展開が始まり、「コンビニドーナツ戦争勃発!? 」などと話題になりました。コンビニドーナツの現在の状況は、3社とも、オールドファッションやフレンチクルーラーといった定番のドーナツは残しつつ、季節ごとに一部を入れ替えるなどして人気をキープしています。 

 3回目のブームは、「生ドーナツ」などの「新食感」!

そして、現在、3回目のドーナツブームが起こっています。今回のブームの立役者が、「新たな食感のドーナツ」で、その中心にいるのが、「I’m donut ?」などの「生ドーナツ」。 

現在の3回目のブームには、外国のドーナツも貢献しているようです。たとえば、韓国発のドーナツ「クァベギ」。これは、屋台などでも売られている韓国の定番のおやつ。生地にはもち米粉を使い、モチモチしているのが特徴です。 

さらにスペイン発祥の人気ドーナツブランド「ラ パナデリーア ドッツ」(LA PANADERIA DOTS)も日本に2018年に上陸して注目されています。モチモチ食感と甘さ控えめが大きな特徴。一番の売りはカラフルさで、人工着色料は使っていないのが重要なポイント。 

さらに、時代の流れに沿って、SDGs(持続可能な開発目標)に関連したドーナツも販売されています。流通の過程で、どうしても汚れや傷などにより正規品として販売できないバナナ。その規格外バナナを使った焼きドーナツ「バナナーナ」を販売しているのが、洋菓子「アンリ・シャルパンティエ」を展開している株式会社シュゼット・ホールディングス(本社:兵庫県西宮市)です。 

なぜ、ドーナツは日本人に人気なのか?

前述したとおり、1971年以降、ミスタードーナツの事業拡大などで、ドーナツが日本の家庭に根付いていきました。 

それ以前も、オーブンを使わなくても作れる手軽さで、中流家庭でよく作られるおやつの一つだったそうで、そうした状態は昭和後期ぐらいまで続きました。そのときに作られたのが、砂糖をかけただけ、あるいは何もかけないシンプルなドーナツ。そもそも、ドーナツは、小麦粉に砂糖、牛乳、卵など、その材料がとてもシンプルです。 

現在は、自宅でドーナツを揚げる家庭は少ないかもしれません。時代の変化で、揚げ物自体を、一から作る人が減っているといわれています。その一方で、さまざまなドーナツのバリエーションを楽しめる環境が整っています。ちなみに、世界のドーナツ市場規模は2022年に163億ドル(2.3兆円)と推定され、2028年には200億ドル(2.9兆円)に到達すると予測されています。この期間の年平均成長率(CAGR)は3.4%。 

では、こうしたドーナツがどのような理由で日本人に好まれているのでしょうか。 

第1の理由が、その多様性に富んでいることと、そのバリエーションの豊かさだとされます。サクサク食感「オールドファッション」はもとより、ハワイの定番のふんわり軽い「マラサダ」、バンズのかわりにドーナツを使う斬新なハンバーガー「ルーサーバーガー」(ドーナツ・サンドイッチ)、通常のドーナツに衣をつけて2度揚げした「台湾ドーナツ」、韓国のねじり揚げドーナツ「クァベギ」など多彩なドーナツが存在します。 

第2の理由が、「差し入れ」しやすい手軽さから年齢を問わずに楽しむことができるスイーツであること。仕事をしながらでも片手で食べることのできる気軽さ、量も大きさも「ちょうど良い」ことで一気に人気スイーツへと上り詰めたのです。 

特に、コロナ禍でドーナツ人気が再燃したのも、その手軽さにあるといわれています。ドーナツはテイクアウトが簡単にできるおやつという特徴を持っているのです。 

そして、気軽にプレゼントできます。シェアしやすい点も魅力的です。ケーキとなると、お皿とフォークなどを用意する必要があり、金額も高くなります。一方のドーナツはそこまで金額は張らないし、歩きながら、仕事しながら、片手でつまんで食べられます。 

 ドーナツなどのスイーツがもたらすリフレッシュ効果や幸福感

一般に、スイーツを食べると、ブドウ糖が身体に入り、エネルギーが十分になると脳の働きが活発になります。その結果、脳のパフォーマンスが向上し集中力が高まる、リフレッシュできるなどポジティブな効果が期待できます。 

また、ドーナツなどの甘いお菓子を食べることで、多幸感が得られ元気にしてくれる効果もあります。つまり、甘いものを食べると、快感ホルモンである「β-エンドルフィン」や「ドーパミン」が分泌されます。これらの物質は、幸福感や気分の高揚、鎮静作用、ワクワク感をもたらしてくれます。 

「I’m donut ?」などの「生ドーナツ」が牽引する21世紀の第3次ドーナツブーム。そのドーナツは、集中力アップ、ストレス解消、幸福感などのポジティブな効果を私たちにもたらしてくれます。今、美味しくて多様性に富んだドーナツを多くの人が楽しめる素晴らしい環境が生まれているのです。 

Donuts may look small, but one should never belittle their power. 

一つひとつのドーナツは小さく見えるかもしれません。でも、ドーナツが持つパワーを過小評価してはいけないのです。