マーケティング最前線!

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「イチゴのテスラ」と呼ばれる「Oishii Farm」の高級イチゴがアメリカで大人気!!

2023.04.25

「Oishii Farm」の高級イチゴが、アメリカで大人気!

アメリカのビジネス情報サイト「Fast Company」(ファスト・カンパニー)が発表した「2022年最も革新的な食品会社10社」で、「Oishii Farm」(以下「Oishii」 https://oishii.com)が第5位にランキングされました。「Oishii」社は、日本人の古賀大貴氏(Koga, Hiroki, UCバークレーMBA)が起業した「アメリカで日本品種のいちごを栽培・販売するスタートアップ」です。設立は2017年。

もちろん社名の「Oishii」は「美味しい」に由来します。一般的に、スタートアップ(Startup)とは、革新的なアイデアで短期的に成長する創業2〜3年の企業のことを指します。

Oishii社が提供するブランドイチゴの「Omakase Berry」(おまかせベリー)は、1パック8個入りで50ドル(約6,500円)という高級品。でも、アメリカでひとたび店頭/オンラインで売り出されれば、購入希望者が殺到。ニューヨークなどの星付きレストランのシェフの間では、「幻のイチゴ」として知られているようです。最近、第2弾ブランドイチゴとして「KOYO Berry」(1パック6個入り15ドル、「高揚」に由来)も発売されました。

「Omakase Berry」は、ハリウッド女優「グウィネス・パルトロー」の「推し」!


「甘くてクリーミーな食感と、強く濃密な果実の香り」をもつ「Omakase Berry」。モデル・タレントのクリッシー・テイゲンやハリウッド女優グウィネス・パルトローなどのアメリカのセレブの間でも、熱狂的な人気を集めています。「Oishii」社の公式インスタグラムには、アカデミー賞授賞式でこのイチゴが提供されたことを示唆する画像もアップされています。

この「Omakase Berry」が日本の高級イチゴと異なる点は、「植物工場」で生産されているということです。つまり、農業(Agriculture)と技術(Technology)を組み合わせた「アグリテック」(AgriTech)ビジネス由来の商品であるということです。

「イチゴのテスラ」と呼ばれる理由も、その高い技術性にあります。ちなみに、「テスラ」(Tesla)とは、2003年に、イーロン・マスク氏によって設立された米国シリコンバレーを拠点とする高級電気自動車メーカーです。簡単にいえば、Oishii社は、シリコンバレー型のハイテク「イチゴ生産・販売」企業なのです。

 Oishii Farmは60億円の資金調達に成功!


そのOishii社は、2021年3月、資金調達ラウンド「シリーズA」で5,000万ドル(約60億円)という、大型の資金調達を実施しました。「シリーズA」とは、「投資家が企業に対して投資(出資)をする段階」のうち、「事業が本格的にスタートし、顧客が増え始める段階」の資金調達を意味します。

「世界最大の植物工場を作り、未来の『食』を救う」という同社の壮大なミッションのもとに、多額の投資資金が集まりました。つまり、Oishii社の事業成長の基盤が整ったということです。

垂直農業では、高い建築物を利用して農産物を生産


Oishii社は、従来の栽培方法とは異なり、農薬が不要で環境負荷が少ない「垂直農業」にもとづき、日本品種のイチゴを米国内で栽培・販売しています。

「垂直農業」(Vertical Farming)とは、(垂直方向に高さのある)建築物や傾斜面をつかって農業を展開することをいいます。従来の平らな畑や(平家型)温室などで野菜を栽培する手法の反対の概念です。一般に、垂直農業では、主に都会の高層ビル、輸送用コンテナ、使われなくなった倉庫などが利用されます。つまり、「工場」で農産物を生産する方法です。

垂直農業のメリットは次のとおりです。(1) 天候に関係なく 1年中農作物を生産できる、(2)フードマイレージの削減(生産地と消費地を近づけ輸送にともなう二酸化炭素排出量の削減)、(3)水や光などのエネルギー消費を最小限に抑えることが可能(水の使用は従来の10分の1程度)、(4)害虫が発生しない環境で育てられるため、農薬使用量を減らせる、(5)農業従事者のリスクを回避(自然環境での危険な虫や野生動物との接触、大型農業機械の事故)。

 世界のアグリテック市場は、年17%で成長中!


デメリットとしては、(1)施設の建設コストがかかる、(2)経済的な実現可能性や投資性が十分に証明されていない、(3)ミツバチなどの虫がいないため自然受粉が困難で、生産コストが増加、(4)テクノロジー依存型のため電力供給が遮断されれば、事業運営(生産活動)が困難になる、などがあげられます。

さて、アグリテック市場規模(2021年)は、世界が196億ドル(2.6兆円)で、北米(アメリカとカナダ)が75億ドル(約1兆円)と推計されています。年平均17.3%の成長率で、2030年には、世界市場が464億ドル(6兆円)に達すると予測されています。

米国におけるOishii社の「高級イチゴ」ビジネスの躍進。その活躍ぶりを知ると、日本の他の農業関連企業の米国アグリテック市場への参入にも期待が膨らみます。


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