越境フィールドワークin新潟県上越市高田

2018.10.31

9月15日から17日にかけて、国際ビジネスキャリア科の学生と私立関根学園高等学校(新潟県上越市)の生徒による「越境フィールドワークin上越市高田地区」が開催されました。
このフィールドワークは、神田外語学院の高専連携教育の一環として今年度からスタート。国際ビジネスキャリア科・池田政隆ゼミナールでは、今春から学生たちが主体となって新潟県上越市高田地区の歴史や特色を調査してきました。今回は、学生たちが現地に3日間滞在し、地元の方へのインタビューを通じて街の魅力を発掘。グループで町おこしやPR戦略のための施策を練り、11月に上越市で報告会を行います。

日本最古級の現役映画館「高田世界館」を見学

調査2日目の16日、学生たちがまず足を運んだのは、高田地区にある「高田世界館」。1911年の開業から、今もなお現役で上映が行われている日本最古級の映画館です。

NPO法人・街なか映画館再生委員会の岸田國昭さんに、館内を案内していただきました。

洋館風の建物は老朽化が進んでいたため、2009年に一度は閉館しました。しかしその後、NPO法人・街なか映画館再生委員会が中心となって、再建に向けて動き出しました。地域住民の方々を中心に1人1席1万円で募金をつのり、客席を整備。それぞれのシートに、募金者のネームプレートが刻まれています。

2階の映写室には、50年以上も稼働し続けている35mmフィルムの映写機が。劇場公開している映画のほぼすべてがデジタルに移行した現在、フィルム上映の技術は希少なものになりつつあります。学生たちは一人ずつ映写室の中を見学し、歴史ある空間ならではの重厚な雰囲気を味わっていました。

 

「募金や上越市の補助金など、さまざまな方に協力してもらいながら、手づくりで再建してきました。お金をどうやって生み出すかは、アイデア次第なんです」と岸田さん。映画館への愛情がこもったお話の中に、町おこしのヒントが隠されていました。

高田地区を代表する町家建築「旧今井染物屋」へ

▲関根学園高校の金田先生(左から5番目)と池田先生(右)といっしょに。学生たちが考えた「お米ポーズ」

続いて訪れたのは、江戸時代後期に建てられた町家建築「旧今井染物屋」。高田地区の商店街は、「雁木」と呼ばれる雪よけの屋根が有名です。屋根の傾斜が緩やかなところも、建設当時の町家の形態をよく表しています。

吹抜けが非常に高く、縦横に組んだ木造の太い梁も特徴的。かつてここで丁稚奉公していた若者たちが寝泊まりしていたという屋根裏も、ほとんど当時のままの形で残されています。学生たちは広々とした茶の間に座ったり、2階から空間を見渡してみたりと、思い思いに町家建築の空間を体験しました。

▲梁に興味津々の荒川さん(右)

「実際にこうした町家建築の中に入れていただくのは初めてなので、貴重な体験です」と語るのは、国際ビジネスキャリア科2年の荒川裕輝さん。前日には、高田地区で住民の方4名にインタビュー調査を行いました。
「自宅に招いていただいたり、知り合いを紹介していただいたりと、どの方も本当に親切でした。高田地区の方々のあたたかい人柄や、人と人とのつながりの強さを感じます」

歴史ある着物店「きものの小川」でインタビュー

個性的な雁木が並ぶ商店街の中を歩き、向かったのは「きものの小川」。1階の店舗から、かつて居住スペースだったという2階までつながる高い吹き抜けが目をひきます。店主の小川善司さんは、戦後間もなくこの家に生まれ、高田地区の歴史と変遷を見届けてきました。

かつて茶の間として使用していたスペースには、円形のちゃぶ台が置かれていました。当時は小川さんの家族9人が輪になって夕食時を過ごしていたのだそうです。学生たちは小川さんを囲い、その語りに耳を傾けます。

 

「昔は冠婚葬祭を家で行っていたので、ここ(2階)で結婚式も行っていたんですよ」と小川さん。5人兄弟の長男として生まれた小川さんは、子どもの頃から雁木が遊び場だったそうです。その後、家を出て丁稚奉公として数年働いたあと、実家に戻って着物屋を受け継ぎました。

「やはり、着物を着ると式に重みがつきます。そうした伝統を次の世代にも伝えていきたいですね」と小川さん。現在は高田地区の町おこしにも積極的に参加し、イベントなどを通じて地域を盛り上げています。

「この土地には昔から、『みんなに分け与える』という精神性が根付いています。かつて上越でワイン醸造に適したぶどうの開発に尽力したサントリー創業者・鳥井信治郎氏も、その技術をひとり占めせず、上越の農家に還元してくれました。厳しい豪雪地帯だからこそ、助け合いの心が育まれたのかもしれません」(小川さん)
学生たちは熱心にメモをしたり、質問したりしながら小川さんのお話を聞いていました。高田地区の人々に根付く「助け合いの精神」のルーツも知ることができ、非常に有意義なインタビューとなりました。

600年以上の歴史を誇る「春日神社」を取材

午後からは、学生それぞれが個人で地域の方にインタビューや取材を行いました。国際ビジネスキャリア科2年の小島万里菜さんが向かったのは、この土地で600年の歴史を持つ春日神社。かの上杉謙信公の時代から、長きに渡って地域の方々から大切にされてきた神社です。

 

「歴史を知れば、町の人たちの内面も見えてくるはず」と、取材を前に意気込む小島さん。幸運なことに、宮司を務める風間常樹彦さんに取材を快諾していただきました。風間さんは春日神社の宮司として、七五三のお祓いや病気治癒のお祓い、また高田地区で600年以上前から続く伝統行事「春の例大祭」を執り行っています。

風間さんからは、春日神社の宮司の家系に生まれた幼少期の話から、関根学園高校で教員を勤めていた頃の話、そして今日までの春日神社の変遷の話まで、非常に濃密な内容のお話を伺うことができました。小島さんも熱心に質問しながら、お話に耳を傾けます。

 

「この周辺に住んでいるのは、みんな100年以上も家族ぐるみで付き合いを続けている人たちばかり。プライベートには干渉しませんが、いつもお互いの様子を気にかけて挨拶をしあったり、冠婚葬祭に呼んだりと、ゆるやかに連帯しながら暮らしています」と風間さん。人情味が厚く、ご近所づきあいを大切にしてきた高田地区の人々の暮らしぶりを垣間見ることができました。

取材の最後には、春日神社で上杉謙信公が必勝祈願に訪れた際に座っていたとされる場所にも案内していただきました。境内の静謐な雰囲気に触れ、積み重ねられてきた歴史の重みを体感することができました。

 

「想像以上に内容の濃いお話が聞けました。今日までさまざまな人にインタビューしてきましたが、どの方もとても親切で、学生の私たちにも誠実な姿勢で話してくれます。こうした地域の人々のあたたかさこそが、高田地区の魅力だと思います」
3日間のフィールドワークを終えたあとは、東京に戻ってグループごとに調査の成果を分析し、具体的なPRの施策を練っていきます。
「全国の人に高田地区の魅力を知ってもらえるような提案をしたいです!」と小島さん。

 

関根学園高校の生徒たちをはじめ、地域の方々の協力を得て、非常に実りある内容となった今回のフィールドワーク。国際ビジネスキャリア科の学生たちから、どんなアイデアが生まれるのか。11月に行われる報告会に向けて、期待が高まります。