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元国連大使・吉川元偉先生による講演会「パリ協定と日本の対応」を実施しました

2022.02.08
▲1月末日、元国連大使である吉川元偉先生の特別講演会を実施しました。

(講師紹介)
吉川元偉先生:1974年外務省入省。国際連合全日本政府代表部特命全権大使・常駐代表、在スペイン日本国大使館特命全権大使、初代アフガニスタン・パキスタン支援担当大使、経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部特命全権大使などを歴任。

▲パリ協定の署名で実際に使用したサインペンを持参された吉川先生。歴史的な瞬間を迎えた当時の気持ちを語って下さいました。

今回の講演会のテーマは「パリ協定※と日本の対応」。吉川先生は日本政府を代表してこのパリ協定に署名された方です。この協定に基づき、日本は2030 年までにCO2の排出量を26%(2013年度比)削減することを目標としています。今回は外交の第一線で活躍された元国連大使からお話を伺うことができる貴重な機会。オンラインでの参加も可能な中、会場には直接足を運んだ学生たちの姿もありました。

 

※パリ協定…2015年12月フランスのパリで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において採択された、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組み。

▲講演会の参加者には春から大学で環境経済学を学ぶ予定の学生も。編入学を目前に控えた今、吉川先生の講演会を大学での学びに役立てます。

講演会ではパリ協定に対する各国の意見文書を学生たちに和訳してもらう場面も。国連で勤務されていた吉川先生だからこそ知り得る、地球温暖化に対する各国の多角的な視点やさまざまな意見。「国内メディアでは日本側の主張や考え方が報道されることが多いため、今回さまざまな国の意見を知ることができて勉強になった」と学生たち。将来国際社会で活躍したいと願う彼らにとって、地球規模の問題に対する各国の考えを英語で読み解く時間は貴重な経験となりました。

▲「CO2削減のために日本は原発の再稼働をするべきか。」日本が直面する大きな問題に悩みながら答えを出す学生たち。意見は真っ二つに分かれます。

世界各国の意見にふれつつ「では地球温暖化を抑制するために日本は何ができるだろうか」と学生に問いかける吉川先生。そして議題は、日本のCO2削減を考えるうえで避けて通れない「原発の再稼働問題」へ。これは学生たちにあらかじめ自分の意見を明確にしておくよう指示した事前課題でもあります。日本が掲げるCO2削減の目標を実現するには、発電時にCO2を排出しない原発の再稼働は最も現実的な方法です。国際的に活躍できる人材になるためには、現在日本が抱えている問題をしっかり理解しておくことが不可欠です。それができてはじめて、国際交渉の場で各国とどのように折り合いをつけていくのかを考えることができます。

地球温暖化に対する各国の意見だけではなく、世界の問題に携わるうえで必要なマインドを今回学ぶことができた学生たち。将来世界を舞台に活躍したいと願う若者へ吉川先生からアドバイスが贈られました。

 

―吉川先生より―

国際交渉で「独り勝ち」はありません。自分たちが望むものを得るためには、他の国々が望むものを譲らなければならないことが多いです。多くの議題や課題が山積みの中で、日本にとって最も大切なことは何か、逆に何が重要度の低い問題なのか。つまり優先順位づけをすることが大事です。そして国際的な仕事に携わるのであれば、やはり外国語の運用能力は必要です。英語ともう一つの外国語ができるといいですね。あとは自分の得意なことを見つけること。例えばそれは勉強でもいいし、スポーツや音楽でもいい。特技をもつことで引き出しの多い幅広い人間になれますし、交友関係も広がりますよ。

講演会後には、スーパーのレジ袋などの身近な環境問題について吉川先生と学生が意見交換する場面も。世界が共通して直面している問題の解決には、一人ひとりがライフスタイルを変えていくことが何よりも重要です。しかし現実はこのような国際規模の問題に対して「自分にはできることがない、自分には関係がない」と考える人が大半です。それをいかに自分の解決するべき問題としてとらえて、自身の行動に落とし込むことができるか。それこそが世界が抱える問題を解決に導くために最も必要な資質なのかもしれません。