異文化理解の先駆者たち

第1回 古田暁神田外語大学名誉教授『異文化コミュニケーションの夜明け』

アメリカとカナダでの教育と研究の日々
異分野の専門家との共同研究で受けた刺激

平成14(2002)年に博士号を取得した私は、アメリカ東部のペンシルべニア州にあるアーサイナス大学の講師になりました。異文化コミュニケーションと医療分野のヘルスコミュニケーションの講義を担当しましたが、日本語のクラスも教えました。日本人だから日本語を教えられるだろうと依頼されて引き受けたのですが、それはとても大変でした。講義を終えて帰宅すると食事も取らずにベッドに倒れ込むような日々。まさに修行のような3年間でしたね。

日本語は日頃何げなく使っていますが、アメリカ人の学生には理論的に説明しなければ教えられません。動詞の活用がこうだから接尾語や接頭語はこうなる、といった規則性をテキストで覚えて学生に説明するのです。「は」や「が」といった助詞に規則性があることも初めて知りました。振り返ってみれば、おもしろい体験でしたね。

平成17(2005)年の1年間は、カリフォルニア大学バークレー校のエド・ロバーツ障害学フェローになりました。奨学金が支給され、自由に研究できる立場です。バークレー校は公民権運動で知られていますが、障がい者運動のメッカでもあるのです。キャンパスには日本では考えられないような重度の障がい者が通っています。私は障がい者の学生たちにインタビューをしながら研究をして、障がい者とセクシャリティーについての論文を書きました。バークレー校のあるサンフランシスコはヒッピーやニューエージの発祥地。すごくリベラルな街で、ヨガやオーガニックなどの文化も盛んです。楽しい1年間でしたね。

バークレーの後は、カナダのアルバータ州です。アルバータ大学のフェローなのですが、カナダ政府が助成金を出して異なる分野の研究者を雇用し、共同で研究を行うプロジェクトに参加しました。テーマは、「障がい者と高齢者のコストと貢献」です。経済学、人口学、作業療法、ソーシャルワーク、そしてコミュニケーションの専門家である私がチームを組んで研究を行いました。

専門分野の違う研究者との仕事は刺激的でした。自分だけで研究をしていると、どうしても文献や資料が偏ってしまいます。でも、他分野の専門家が紹介してくれる文献は私が日頃接しないものですし、それぞれの専門家の仕事も具体的に理解することができました。(5/9)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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