神田外語グループのいしずえを築いてきた人々

第14回 佐野隆治 学校法人佐野学園会長『大学生の本気を引き出す環境づくり』

人と人のつながりは、時が経つごとに醸成されていく
それはきっと平和な世界を創るはずです

僕はね、日本人のための語学教育を根本的に作り上げたいんですよ。小学校から英語がカリキュラムに入るようになりました。僕は小学校から高校までを通じた英語教育で、日本人の思考と文化、考え方や芸術をきちっと外国人に説明できる語学教育を作り上げたい。かつて欧米諸国は、植民地支配した人々に英語やフランス語、ドイツ語を教えた。そういった外国語教育ではなく、日本人が日本の文化を本気で伝える英語教育が必要だと考えています。あとどれだけ生きられるか分からないけれど、そういった教育を作り上げることをライフワークにできたらいいかなと思いますね。

神田外語大学には、日本研究所もあれば、語学研究所もある。そして異文化コミュニケーション研究も行っている。そういう研究所が力を合わせれば、日本人のための英語教育ができる。それができれば、小学校から高校までの教科書に神田外語メソッドが反映されるでしょう。それぞれの研究所が教科書を作っていくうえでの重要な研究機関になれば、神田の学生たちは大学の教員にもなれる。おもしろいと思うんですがね。本気になれば、文部科学省が支援してくれなくたって、自力でだってできますよ。

何年も前から言っているけれど、日本の大学は入試制度の根本的な改革が必要だと思います。高校を卒業したら、海外で2年間ぐらいボランティア活動をさせて、それを大学への入学試験とすればいい。海外でさまざまな経験を積み、言葉で苦労し、現地の人々と交わる。そこから得るものは、単なるボランティア精神でも、キャリアでもない。その2年間で出会った人々は自分の仲間になる。同じ苦労をした仲間が世界にいて、30年後にそれぞれの世界で活躍していれば戦争なんて起きやしませんよ。

アメリカとソ連が対立していた冷戦時代の戦争は分かりやすかった。西か東か、それだけでしょ。でも、最近は違いますよね。小さな紛争が世界のいたるところで起きている。状況が複雑になっているからこそ、言葉と文化を深く学ぶ必要性があるんですよ。

高校3年生が100万人いたとして、1年100万円かかったとして、2年間で総額2兆円。30年後に日本がどれだけ力をつけているかを想像してください。政府は国を守るために武器を買う。どれほど強力な武器を買おうと、武器は買った瞬間から劣化が始まる。でも、人と人のつながりは時が経つごとに醸成されていく。それはきっと平和な世界を創るはずでしょう。今こそ、「言葉は世界をつなぐ平和の礎」という佐野学園の建学の理念の意味を、もう一度問いかける時だと僕は思います。(8/8)

(次号に続く)

佐野隆治(さのりゅうじ)
昭和9(1934)年東京生まれ。慶應義塾大学法学部中退。昭和38(1963)年、神田外語学院の前身であるセントラル米英語学院の経営に参画、以来、神田外語グループの発展において中心的な役割を果たす。昭和63(1988)年に学校法人佐野学園の第3代理事長に就任。平成22(2010)年、理事長を退き、会長に就任する。平成29(2017)年3月永眠。享年82歳。

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取材・文:山口剛

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