神田外語グループのいしずえを築いてきた人々

第4回 アントン・グディングス神田外語学院第4代学院長『課題と向き合い、言葉を育む』

「どこからですか」と聞くと、公一先生は
「それはあなたが考えてくれ」とだけ言いました。

私は相変わらず臨時講師のまま働いていました。学院には週に2日、来るようになっていましたが、残りは葉山で釣りをしていましたね。あるとき、公一先生に呼ばれたんです。1972年(昭和47)頃のことだったと思います。

公一先生は、「法律が改正されて、専修学校を認定する制度が始まる。ついては、うちも認定を受ける準備をしているんだが、専修学校になるときちんとした資格を持った先生が必要になる。外国からそういう教員を雇うことはできないのかね」と質問されたんです。

私は、「雇えないことはないと思いますよ」と答えました。すると、公一先生は、「君、調べてくれないかね。語学を教えるにはどういう先生がいいかを」と依頼してきたんです。これはおもしろそうな仕事だと思いました。私自身が日本語を学ぶのに苦労した経験がありましたから。英語を母国語としない日本人に、英語を教える教育というものに興味を覚えたんです。

ただ、責任も重大です。臨時講師とは立場が変わるし、私自身が専修学校で教える資格を持っていなければ、きちんとした調査もできないと思ったのです。日本の教育法についても勉強しなければなりません。当時、文部省が専修学校制度の開始にあたって指定していた講座があって、それを受けに行きました。当時は事務長だった佐野隆治会長と一緒にです。1年間ぐらい、仕事の後にふたりで専修大学に通って授業を受けました。それで、教員の資格を取得したわけですよ。

私と佐野会長がきちんとした資格を取得したことで、専修学校としての申請が現実的なものになってきました。ただ、課題はやはり資格を持った外国人の先生を集めることです。調査をしてみると、アメリカや英国の大学には、外国人に英語を教える課目があることが分かりました。いわゆる、第二外国語としての英語教育ですね。そういった大学に手紙を出して問い合わせると、「この科目ではABCも分からない人に英語を教える方法を教えている。英語の専門学校なら、そういった専門家を雇ったほうがいいでしょう」という回答が返ってきました。

調査の結果を公一先生に報告すると、「これまでは日本にいる外国人を雇って教えさせてきた。専修学校にするのなら、きちんとした資格者を教師として雇わなくてはいけない。君、集めてくれるかね」と言うのです。私が、「どこからですか」と聞くと、公一先生は「それはあなたが考えてくれ」とだけ言いました。

公一先生が出した教員採用の条件はふたつだけでした。ひとつは、第二外国語としての英語を教える資格を持っていること。もうひとつは、あまり年齢が高くない、ということでした。年齢が高いと、結婚していて、子どもがいる場合があるので、手続きが面倒になるし、費用も大幅にアップしてしまう。独身で身軽に日本に来られる人がいいというわけです。

私は英国とアメリカの大学を回りながら教員の採用を開始しました。ふたつの国では卒業のタイミングが違うので、何度も行かなければならない。公一先生は私には授業を持たせずに、教員採用の仕事に専念させてくれました。こうして、神田外語学院では1974年(昭和49)から、外国からの教員採用が本格的にスタートしたのです。(4/9)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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