異文化理解の先駆者たち

第5回 クリフォード・クラーク『日本人とアメリカ人、その懸け橋として』

日米の文化を兼ね備えた会社には、
最高の満足度と効率性を実現してほしい

単一文化での事業経営のモデルを超えて、異文化コミュニケーションの方法論を応用し、新たなる2文化の経営スタイルを構築する。P&Gのプロジェクトでは、ふたつの文化を等しく経営に反映し、その相乗効果を組織の個性として集約する。それが私たちの目標だったのです。2年間の業務が終わると、P&Gは私たちの仕事をこう評価してくれました。

「この工場は、紙おむつ部門において世界でトップの業績を上げている。生産性、品質、安全性の高さ、そして廃棄率の低さのどれをとってもトップである。製品販売に向けた工場の立ち上げではスケジュールを18カ月も前倒しできた。さらに、海外からの転勤者は1人を除いた全員を予定よりも2年早く帰国させられた。立ち上げの18カ月分の費用、そして11人の海外転勤者と家族が日本に滞在する費用を抑えられたのである」

P&Gは2年間に55万ドルを私に支払ってくれましたが、会社としては1800万ドルのコスト削減に成功しました。それは投資額のおよそ34倍に相当します。

P&Gとの契約が終了すると、同社は契約を延長して、新たなプロジェクトでの契約を依頼してきました。それは、その後18年間にも及び、毎年、新しい異文化コンサルティングのプロジェクトと研修プログラムを行いました。事業はどんどん拡大し、会社のスタッフは15年間で10人から60人まで増えました。P&Gでの仕事の評価が、日本とアメリカのビジネス界で口コミによって広がり、他の企業からコンサルタント業務を依頼されるようになりました。モトローラ、IBM、デュポン、富士ゼロックス、本田技研工業、日立製作所など、クライアントの数は、1980年代から90年代にかけて、日米合わせて300社に上りました。私の会社には、本社と海外支社の企業文化を融合させるうえで、いくつもの成功モデルに関する直接的な経験があり、それに基づいてクライアントを支援できる強みがありました。さらに、生じうる失敗についての見識があり、いかに失敗を防ぐかについてもノウハウがあったのです。

ビジネスの世界に身を置きながらも、私の使命は12歳のときから変わっていません。日本人とアメリカ人がともに働き、ともに学ぶ場に平和をもたらすことが自分の仕事であるとずっと感じてきました。どちらの国も理解し、その良さも知っているからこそ、互いの国の人々が、相手の国の良さを発見することでワクワクしてほしい。日米の文化を兼ね備えた会社には、最高の満足度と効率性を実現してほしい。教育分野での交流プログラムに関わっていた時代も基本的な想いは同じでした。それこそが私が仕事を続けてこられた原動力です。(7/9)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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