神田外語グループのいしずえを築いてきた人々

第2回 井上和子神田外語大学第2代学長『新しい試み、その可能性にかける』

学生のモティヴェイションを高める環境がある。
その気になったら、放っておいても勉強しますよ。

神田外語大学には学生のやる気を引き出す環境が整っています。外国語の勉強を机上の空論にせずに、文化的な背景まで整えて学生に提供するなんて、とても贅沢な教育です。7号館の多言語コミュニケーションセンター、そしてブリティッシュヒルズには本物の外国の環境があります。

語学の勉強はつまらないことも多いのも事実です。パターンプラクティスといって、何度も繰り返したり、置き換えたりして言葉を覚えていきます。そんな勉強に疲れたとき、外国の環境を再現した空間のなかでふっと息を抜き、学んだ外国語を口にしてみる。その雰囲気のなかで言葉が出てきたら、「あ、自分のものになったな」って体感できるのです。それが学生のいいモティヴェイションになる。学生はその気になったら、放っておいても勉強しますよ。

佐野隆治会長はそこをきちんと理解されています。やる気を出させるテクニックを持っている。現場で働く教員の方々には、そういった経営者の考え方を徹底させなければならない。非常勤の先生方も含めて、きちんと理解して、その理念のもとに作られた神田外語大学の環境を教育に活用してほしいですね。学期初めのオリエンテーションで白河のブリティッシュヒルズに行きます。ある人が「こんな贅沢するんだったら、授業料を安くしたほうがいい」と言っていました。その方は何も分かっていない。とんでもないですよ。外国語の学習では、学ぶ環境、とりわけ外国の言葉が自発的に出て来る環境づくりが非常に大切なんです。

神田外語ももうすぐ創立25周年ですね。卒業生は広い分野で活躍されている。卒業後に海外へ留学した人も多くいるでしょう。そういった卒業生をもっと巻き込んでいけば、大学はもっとよくなる。外からの視点が大切なんです。それと学生が講義を評価することも大切。海外の大学では当たり前のことですよ。私が学長のときは先生方の反対で実現しませんでしたけど。大学が自らを省みる機会を持つことが、成長につながっていくと私は思いますね。

ここまで神田外語大学でやってきて、本当によかったと思います。この縁をくださった小川芳男先生は、あんなに病気をしていたのに無理をしながらも一生懸命やっておられました。それはきっと神田外語の理念に賛同されて、こういう外国語大学ができたらいいなと思われたんですよ。そういった方々の想いの上に成り立っている神田外語グループですから、これからの50年もぜひ頑張っていただきたいですね。(5/5)

井上和子(いのうえかずこ)
大正8(1919)年大阪府生まれ。津田英語塾を卒業後、高校の非常勤講師を続けながら、公費留学でアメリカの大学で学ぶ。昭和39(1964)年にミシガン大学で言語学博士号を取得。国際基督教大学、津田塾大学で教鞭を執った後、昭和63(1988)年に神田外語大学教授に就任。平成2(1990)年〜平成9(1997)年は第2代学長を務める。学長退任後も言語科学研究センター顧問として大学院教育に力を注ぎ続けている。平成29(2017)年5月永眠。享年98歳。

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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