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先生たちの語学勉強法【第二弾】

2022/07/11

イベロアメリカ言語学科ブラジル・ポルトガル語専攻教員の奥田です。

さて、「先生たちの語学勉強法」第二弾をご紹介します!

今回は、アジア言語学科韓国語専攻の林先生と、ベトナム語専攻の岩井先生に教えていただきました。

【林 史樹先生】アジア言語学科韓国語専攻

私の場合、現地(韓国)で韓国語を習得しました。ですので、恥ずかしながら、文法を体系的に習ったことはありません。ただ、外大でもない一般の大学(学部)を卒業後、韓国に半年ほど語学留学したことで、コミュニケーションに対する自信だけは少しずつついていったように思います。韓国に行く前に自主講座で簡単な文法程度は勉強しましたが、神田の学生と比べると、勉強したとはいえないレベルでした。それでも韓国語を使わなければ、食べ物にありつけない状態だったので、嫌でも覚えていったのです。

そのような中、私が心がけたのは、耳に残ったフレーズを何度も繰り返し声にだすことでした。これこそが、私にとって韓国語を身につける一つの学習法でした。下宿にテレビはなく、街角で聞いたり、テキストにでてきたりしたフレーズを一人でブツブツと繰り返していたので、周囲で聞いている人は気味悪がったかもしれません。

その他、私の怪しげな韓国語に付き合ってくれる韓国人のお兄さん、お姉さんたちの存在も上達の一助となりました。私のつたない韓国語に根気よく付き合ってもらえたのは、「何とか通じる」という自信につながりました。

もう一つ興味深いのは、帰国後も韓国語のリズムが耳に残っていたことです。それだけ現地で韓国語を「聞いた」ことになるのでしょうが、日本で韓国語の単語を覚え、その単語を用いて適当に文章を口にしたとき、「聞いたことがある」と感じられたときは、およそ文法的にも合っており、「あまり聞いた記憶がない」と感じられたときは、およそ間違っていました。

とにかく聞いてリズムを覚える、そして後は一人でブツブツ、これが私の語学学習法といえそうです。

【岩井 美佐紀先生】アジア言語学科ベトナム語専攻

フィールドワーカーのベトナム語習得

これから私のベトナム語学習法について紹介したいと思います。私の専門性とも大きく関わってきますが、今振り返れば、大きく3つの段階(ステップ)でより深くベトナム語を学んでいったと思います。

まず、第一段階である基礎編。大学に入って初めて声調言語に触れ、美しいサウンドに魅せられた反面、その勉強の大変さに苦労しました。というのも、私がベトナム語を学び始めたころ、ベトナムはまだドイモイ(1986年末以降の開放経済政策の施行)前で、日本との外交・経済関係もあまり活発ではなく、ベトナム語の教材もほとんどありませんでした。ベトナム人ネイティブの先生との会話はなかなかはかどりませんでしたが、辞書を引きながら、文献を読んだりすることで、結構楽しく学んでいました。それで、大学院に進学しようと決めたのです。

次に、第2段階であるブラッシュアップ編です。博士論文を書くために1992年に首都ハノイに留学し、合計2年半滞在しましたが、その前半の1年間にあたります。留学当初、自分が学んだベトナム語がベトナム人とのコミュニケーションにほとんど役に立たなかったことにショックを受け、情けなくなるやら、悔しいやら、複雑な気持ちになりました。そこで初めて、教科書で学んだベトナム語会話は全く通用しないことが分かったのです。例えば、「ありがとう」とか「ごめんなさい」という挨拶は、実際の会話ではほとんど使われませんでした。それでも、都会の人たちは、外国人に比較的慣れているせいか、こちらが理解できなければ、別の表現を使って説明してくれたので、それをメモ帳に書き取って、語彙を増やしていきました。当時、ベトナム人の家庭にホームスティをしていたので、家族関係に関わる多様な表現を学べたのも大変役に立ちました。

最後に、第3段階、フィールドワーカーとしての実践編です。農村の人びとは、都会の人たちのように理路整然と話してくれませんので、外国人に対して全く容赦がありません。私も、よそ者ではなく、ムラの娘として調査村に住み込み、生活したおかげで、教科書では決してお目に掛かれない表現をたくさん学びました。村の人びとが話すベトナム語は、方言の他、スラング(特に下ネタ)や罵り言葉など、それはそれは多彩で、語学の上達というよりもディープな文化に適応できるかどうかがカギとなってきます。私は、村の人たちにからかわれながらも、多くを学び、そのおかげでベトナム語もかなり上達したのではないかと思います。今でも、お世話になったご家族とは仲良くさせてもらっています。やはりコミュニケーションの上達には、お互いの信頼関係が大切ではないでしょうか。

ということで、私の経験から語学勉強法を紹介してきましたが、まずは基礎をしっかり学んだ後は、知的好奇心と勇気を持って、その世界に飛び込んでみることをお勧めします。単に語学の上達に限らず、自分の固定観念を打ち破り、新たな自分と出会う貴重な機会でもあるのです。

今回は、林先生と岩井先生に現地での経験を含めて、がっつりと語っていただきました。

うまく通じない時があろうとも現地で実践を続けていくことが何より大事なのですね。私も一人でぶつぶつとポルトガル語をつぶやきながら歩くことがよくありました(今もです)。ブラジル人と話したあと、「うまく伝えられなかった」とか「もっといい表現があったんじゃないかな」と反省したとき、一人二役でその会話を再現してみていました。そうして自分なりの「完璧な会話」をつくることで次に備えていました。

ブラジル留学当初、ポルトガル語を外国人クラスに教えていた先生から言われた言葉が印象に残っています。

「あなたたちが言い間違いをしたとき、周りの人は思わず笑うかもしれない。でもそれは、あなたを笑っているのではなく、あなたと笑い合いたいと思っているんだよ」と。

一緒に楽しもうという姿勢に、間違うことへの恐れが和らいでいきました。

皆さんも先生方の経験談にヒントをもらいつつ、自分に合った語学勉強法を見つけてみましょう!

 

奥田若菜(ブラジル・ポルトガル語専攻教員)