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先生たちの語学勉強法

2022/05/19

語学を学ぶことにゴールはありませんので、外大の教員もまた、日々学び続けています。その意味で、教員も学生同様、語学の学習者なのです。

外大で教えている先生方は、どんなふうに語学を学んできたのでしょうか。気になりますね。

今回は4名の先生に、これまで&現在の語学勉強法について教えていただきました!

【吉田京子先生】グローバル・リベラルアーツ学部

【英語&アラビア語】

 

私が英語が好きだったのは、イギリスロックに昔ハマっていたからで、音楽を聴いて英語ができるようになりたい!と思っていました。

その次はイギリス文化にハマり、BBCのMystery やCostume Drama(シェークスピアではありませんが)が好きになり、夢中で観ていました(今もです)。

それからアガサ・クリスティ、ジェーン・オースティン、エリザベス・ギャスケルとドラマのオリジナルを原書で読みたいと思うようになり、夢中で読んでました(今もです)。

要するに、私の英語学習は勉強ではなく趣味でした。

専門のアラビア語については「勉強」という意識が強く、なかなか進みません(今もです)。

しかし、現在ではネットという楽しいツールのおかげで、かなり効率よく楽しく「一気に」学習ができます。趣味として「英語のBBCドラマ」を英語で観つつ、アラビア語字幕を書きとると、ドラマを楽しみながら英語とアラビア語の学習になります。YouTube にアップされているイランのシーア派聖職者の英語講演をアラビア語字幕を確認しつつ視聴すると、本命の研究の参考になりつつ、英語も学習、ついでにアラビア語も勉強になるという三重のお得感があります。

【植村麻紀子先生】アジア言語学科中国語専攻

【中国語】

 

とにかく音読!

中国語は発音で意味が全然異なります。

「希望」も「失望」もカタカナで書いたら同じ「シーワン」です。

(ですから、とりあえずカタカナでメモ、は無理ですね)

「リエンシー」も「リエン↓シー↑」と下がって上がれば「練習する」

「リエン↑シ」と上がれば「連絡する」、になるからです。

 

大学1年生の時はまだ真面目だったので授業外でNHKラジオ講座も聞いていました。

まだインターネットラジオもなく、窓辺に短波ラジオ置いて聞く時代ですからね…。

皆さんも、歯磨きをしながらでも着替えをするときでも、とにかく音を流しておくと良いですよ。

いつかふわっと「あれ?わたし聞き取れるようになってる?」って思う日が来るまで、諦めずにね。

加油!

【飯島明子先生】イベロアメリカ言語学科

【ドイツ語】

 

私は本学では珍しい、自然科学系の教員です。教えているのは生物学と環境科学、それから研究演習などです。船橋市にある東邦大学理学部の生物学科で学びました。

私が大学生だった頃は、全国どの大学の理学部でも、英語の他に第二外国語としてドイツ語が必修でした。その昔、日本の自然科学の研究にドイツの影響が強かった頃の名残です。そのドイツ語学習について、ちょっと思い出話をさせてください。

大学に入学した春休みのことです。「受験も終わって、これで4月までのんびりできるぞ」とホッとしていた私のところへ、母が満面の笑顔でやってきました。

「春休みの間に、ドイツ語の文法の勉強をしよう♪」

母の片手には独和辞典、もう片方の手には彼女が作ったドイツ語文法の教科書が……。私の母は、とある大学のドイツ語教師だったのです。

「いや、ちょっと待ってよ、お母さん。春休みだよ? ゆっくりさせて?」

私の弱々しい抗議を、母はイイ笑顔でぶった切ります。「語学っていうのはね、毎日少しずつやると定着するのよ。積み上げが大事。必修科目だし、今のうちにやっときましょ、ね?」

めちゃくちゃ嬉しそうな母のごり押しを、どうして断れるでしょうか……。その日から着々と、母によるドイツ語個人授業が始まりました。文法の教科書を1課ずつ毎日進めて行きます。一緒に買い物に出かけている時も気が抜けません。

母「人称代名詞の格変化、言ってみようか!」

私「はぁ〜、勘弁してくださいよ本当に……、ich, meiner, mir, mich, du, deiner, dir, dich, er, seiner, ihm, ihn……」

ドイツ語には格が4つあって、定冠詞も人称代名詞も全部律儀に変化します。

「格変化表なんかは覚えるしかないけれど、こうやって歩きながら口ずさむといいのよ」と、母。

40年近くたっても、私はこの格変化表をそらで言えます。それが何故なのか、現在では分かります。学習する時に身体の複数の機能を使うと、記憶への定着が格段に良くなるからです。口に出す、その言葉を自分の耳で聴く、しかも歩きながらリズムをつけて ─ 。これを繰り返していれば、覚えない訳がないのです。

母が亡くなってもう10年以上になりますが、こんな話をしたかったなぁ、と時々思います。きっと癪にさわるくらい得意満面の笑顔で言ったでしょう。「ほうら、みなさい。一緒にやっといて、良かったでしょ?」と。

【Gustavo Meireles先生】イベロアメリカ言語学科ブラジル・ポルトガル語専攻

【日本語】

 

日本語を勉強はじめた頃は、漢字を勉強するのが好きでした。私が最初日本語に興味をもったのは日本のポップカルチャーに影響されたというよりも、言語に魅力を感じたからです。私の母語であるポルトガル語の文字に比べたら、日本語の文字の豊かさがとても面白く見えました。

さらに、漢字の練習をしているうちに、同じ文字を繰り返し書くだけでリラックスできるのがわかったので、暇があれば漢字を書き続けていました。例えば、大学時代はインターンをする機会がありましたが、休憩時間にインターン先の書庫で、漢字練習帳にひたすら漢字を書き込んでいました。

このように、学んでいる言語を使って「楽しい」や「面白い」などと思えるようなことを見つけると勉強が楽になります!

最後に

先生方の勉強法を見ていると、いい意味での「ながら勉強」を活用されていますね。

歩きながら口ずさむ、生活しながら聞き流す、ドラマを楽しみながら言葉も学ぶ、セラピーのように(!)書く練習をするなど、参考になります。

勉強と思わず、楽しみつつ続けていくことが習得への第一歩なのですね。

 

勉強法はいろいろありますが、「これが唯一の語学の必勝法!」というのはありません。

あるとすれば、「あなたに合う勉強法」です。

実践して模索しつつ、あなたにピッタリの勉強法を見つけていきましょう。

 

文 奥田若菜(ブラジル・ポルトガル語専攻教員)