神田外語大学同窓会

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〜私たちが取り組んだSDGs〜草木染めに想いを込めて

初めまして。2022年にアジア言語学科インドネシア語専攻を卒業した香山奈菜です。大学3、4年生の時のゼミの活動に卒業後も注目していただき、今回執筆させていただくことになりました。

ゼミの研究活動から生まれたmögreben(ムグリーベン)

私は大学4年生の時にゼミメンバー10人と規格外農産物や捨てられてしまう野菜の皮を使用したハンドメイドの草木染め商品の販売を行ないました。ブランド名は「mögreben(ムグリーベン)」。この名前の由来はドイツ語の、

Möglichkeit(可能性)+英語のReborn(生まれ変わる)+ドイツ語のFarben(染める)

を合わせた造語です。

商品コンセプトやターゲットである同世代の女性から親世代まで、幅広い層に親しまれるようにと、メンバーと一緒に時間をかけて考えたブランド名で、私たちにとってとても愛着のある名前です。

試行錯誤を重ねながら土台を形成したゼミ1年目

私が所属した豊田ゼミナールでは、自分が関心のある分野と経営を掛け合わせた実践型の演習を自ら企画して活動します。そこで私が考えた企画が「食べ物×経営」でした。どんな演習をやりたいか、具体的に考えている中で他のゼミメンバーが農家に焦点を当てた企画を考えていることを知り「規格外農産物×経営」という企画に辿り着いたのです。

大学3年生の時に企画した演習は「規格外農産物を使用したお菓子や飲み物を浜風祭で販売する」というものでした。活動内容は、規格外農産物を提供していただく農家さんを探してアポイントを取ることや、メニュー開発をして日持ちしない食材を浜風祭で販売できるようにする方法を考えることで、日々知恵を絞って検討を重ねました。

残念なことに、2020年の浜風祭はコロナ禍真っ只中のため中止となり、企画倒れを余儀なくされました。しかし、アポイントを取っていた農家さんとの関係をこのまま終わりにしたくない、そして、もう一度違う形で「規格外農産物×経営」の演習を実現させたい、という思いから、ゼミナールのSNSで農家さんへのインタビュー内容や食品ロスに関係する投稿を発信することにしました。

発信していくことによって、同年代からの食品ロスに対する反応があったり、他の農家さんのお話を聞いたりするきっかけにもなりました。そして、何よりも私たち自身が食品ロスや規格外農産物について深く学ぶ場となったのです。

その中で、学生が食品を手作りして販売するリスクや、規格外農産物よりもスーパーなどに出荷される途中や店頭で傷がついてしまう食材の方が多いことなども学びました。そして、大学3年生の1年間にさまざまな形で蓄積された知識や繋がりを踏まえて、食品ではなく、ハンドメイドの草木染め商品の販売を大学4年生の時にスタートしました。

メンバーの想いが一つになったmögreben 始動

当初から、メンバー全員が、食品ロスを皆様に身近な問題と感じてほしい、という想いを持って活動していました。ですから、mögrebenでは、私たちの商品を手に持っている時だけでも「食べ物を残さず食べよう」「商品は手前から取ろう」「表面だけが傷付いていても中身は変わらない」ということを頭の片隅に置いてお出かけして欲しい、という想いを込めて商品を一枚一枚作りました。

mögrebenでの活動を振り返ってみると、まず、草木染めのハンドメイドを始めると決めてはみたものの、全てが一からのスタートでした。私を含めたコアメンバー3人で草木染めのやり方を調査し、実際に何度も試作品を作りました。どの食材、繊維が染まりやすいか等、試行錯誤を重ねて、約3ヶ月後にようやく商品販売に至ったのです。

試作過程では、ゼミの他のメンバーや農家さん、近隣のレストランから野菜の皮や規格外農産物を提供していただき、10種類以上の食材で試し染めを行い、商品化する食材を選びました。また、食材とお湯の割合や媒染液の量の微妙な違いでまるで違う色に染まるため、同じ色の商品を複数作ることに苦戦しました。

商品化させる野菜の皮や規格外農産物を決定してからは、定期的に食材を提供していただくことができるレストランや農家さんを探しました。ありがたいことにたくさんの方が快く承諾してくださり、私たちは無事に商品を作成することができる段階にまで辿り着きました。

実際に商品を作成する段階でも苦労がありました。一枚のバッグが染め上がるまでに最低3時間かかるため、バッグだけでなくいろいろな種類の商品を一枚一枚丁寧に作るとともに、幅広い年代の方に手に取っていただくことを考えながら商品制作を行なっていました。

商品制作以外にも力を入れたのが、販売サイトとSNSでの宣伝です。一度、コロナ禍で失敗したこともあり、商品の販売はオンライン販売を中心に行うことを決めていました。しかし、ハンドメイド商品のオンライン販売はリスクも大きく、難易度が高いと言われています。そこで、宣伝方法には工夫が必要であることを踏まえ、商品の色やサイズ感がリアルに近い状態で伝わるように写真や使用感を交えた動画を作成し、SNSに投稿しました。

SNSで拡散する方法やフォロワーの増やし方は、一年目の活動でSNSを使用した際、投稿のたびに失敗と改良を繰り返しながら学習してきた経験がとても役立ちました。その結果、大学外の方にも目を向けてもらえる機会が増え、商品も多くの方に手に取っていただくことができました。

そして、エプロントとしまエコミューゼタウンでの店内販売や豊島区の野外イベントに出店させていただくことができ、念願の対面販売が実現しました。また、活動の総まとめとして、学内発表会を開催。期間は1週間で昼休みに活動内容の展示や私たちが作った商品を販売しました。

ーSNSの具体的な活用方法についてお伺いした内容をまとめました。こちらからご覧いただけます。

私たちが今も伝えたいこと

豊田ゼミナールに入って、自分たちの想いを“もの”にのせて伝えていく楽しさと大変さを学びました。時には寝る間を惜しんで商品制作をした日もありましたが、それでも楽しさやワクワク感の方が勝っていました。

ここまで活動できたのは、豊田先生や応援してくれた友だち、農家さん、レストランの方々、ムグリーベンの商品を好きになってくれた方々のおかげです。本当に感謝しきれないほど贅沢な学びの場を得ることができただけではなく、在学中の学びの立場だからこそできることがたくさんありました。

現在は、飲食業界で働いていますが、廃棄してしまう食材を減らすにはどうしたらいいのか、飲食店の側から解決したいと思い日々働いています。この記事を読んで、今日一日だけでも「残さず食べよう」と食品ロス削減に協力してくださる方が出てくることを願っています。

一番左が筆者

 

2022年卒業
アジア言語学科インドネシア語専攻
香山 奈菜

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