神田外語グループのいしずえを築いてきた人々

第5回 対談:宇佐美志都(書家)×佐野隆治会長『今を捨て、次に踏み出す勇気』

日本の文化と意見を持ちながら英語を学ぶ。
日本人に合った語学教育ができると信じています。

宇佐美:イギリスに留学していたときは、大学の寮で生活していました。様々な文化慣習を知り合うことの連続で楽しくもありました。着物も持っていったので、着ることもありましたよ。着物も日本人のアイデンティティを示せるものですね。

佐野:着物で外国の街を歩くと、みんな振り返りますものね。うちの学生さんにも日本人としてのアイデンティティを持たせてやりたいと思っています。

宇佐美:神田の学生さんたちは、会長のそういったお考え方を感じていらっしゃるでしょうね。

佐野:でも、難しいのは個人としてのアイデンティティを強く持つと、外国ではよいのだけれど、日本の社会では難しいことになる。

宇佐美:会社や組織では、目立ちすぎると好まれない時がありますね。

佐野:そうなんですよ。それが難しい。

宇佐美:ただ、これからの時代は神田の卒業生が社会の旗振り役になっていく時代になっていくのではないでしょうか?

佐野:そうだとしても、100年はかかるでしょうね。

宇佐美:100年の計ですか。

佐野:10年ほど前から、そんなことを考えるようになりましたね。それまでは、どうにか自分の代で大きく変えられると思っていました。でも、世の中って、そう変わるもんじゃない。気長にやっていきながら、後まで続く人間を育てていけば、そのうちどうにかなるだろうと思うようになりました。文科省が小学校の5年、6年で英語を学ばせる決断をしたから、少しは変わるでしょう。

僕は日本人に合った語学教育ができるはずだと信じています。国際社会のグローバル化のなかで、日本の文化や日本人としての意見をきちんと持ちながら、英語を学ぶ教育というものがね。ただ、これはまだ研究もされていない。みなさんに、やってほしいと言い続けているんだけど、なかなか進まないですね。

宇佐美:壮大な展望ですね。

佐野:日本人が外国語を学んで、外国人と交流して、平和な世界を創っていくには、宗教も絡んできます。三大宗教というものがありますね。キリスト教、イスラム教、仏教。このうちキリスト教とイスラム教は、「一神教(いっしんきょう)」です。

宇佐美:ひとつの神様を崇める宗教、唯一神ですね。

佐野:そうそう。同じ源流から分かれた宗教です。ただ、一神教だと他の宗教を許さないから必ず戦いが起きてしまう。その点、仏教は緩くて、あらゆるものに神が宿ることを認めています。とにかく、本当の平和を考え出したら、宗教を改革する必要がある。それは、数百年の単位の話ですから。

宇佐美:東アジアはもともと「八百万(やおよろず)の神」が基本で、森羅万象を愛でる。神はひとつではなく、すべてに宿る。一神教の地域とは違います。漢字にもその心が表れています。

ちょうど今朝、夏に発表する原稿を書いておりまして、節電の「電」という漢字を題材にしていました。電という字は、「雨かんむり」と「申」というつくりで成り立っています。この「申」という漢字は、「神」を意味します。今は、電気は作るものですが、かつては天から稲妻として降りて来る神だったのですね。

日本人にとっては、すべてが神のようなありがたい存在で、物の大小を問わず、生きとし生けるものが尊い。漢字をたどっていくと、日本人の価値観や西洋人と比べてどこかのんびりしている要因も紐解けるのだな、と感じていたところでした。(4/6)

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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