異文研キャンパス・レクチャー・シリーズ

第62回
異文研キャンパス・レクチャー・シリーズ

「日本的企業経営の真髄
-持続的成長の原動力と内在する倫理的課題

講師
西藤 輝 (中央大学総合政策学部招聘講師)
司会
ギブソン松井佳子 (本学英米語学科教授・当研究所所長)
日時
2010年1月10日(金) 17:00~19:00 (開場:16:30~)
場所
神田外語大学(千葉・幕張)
7号館(2階 クリスタルホール)
講師からのメッセージ

グローバル経済を背景にして今のわたしたちが抱く率直な疑問は、「なぜ、ある国は豊かで、ある国は貧困なのか?」「豊かさと貧困の相違をもたらす要因は一体何なのか?」という問題である。東洋の島国で天然資源にも恵まれず、覚醒を促す異文化・異文明との接触が「鎖国」を含め歴史的には稀有であった日本が、なぜ1970年代以降約40年にわたり米国に次いで世界第二の経済大国になり得ているのだろうか?この不思議な現象こそ、池上映子が著書 THE TAMING OF THE SAMURAIで指摘する日本の謎(the enigma of Japan)であ る。本講演ではそうした日本経済発展の「謎」、そしてマクロ経済を支える日本企業の持続的成長の原動力を(1)創業精神・経営理念、(2)日本的経営、(3)伝統的遺伝子の継承と異文化遺伝子受容の三つの視点から分析し、日本的経営の「真髄」を考察することにしたい。多くのみなさんと活発な意見交換ができれば幸いである。

講師紹介

元中央大学大学院総合政策研究科客員教授、元住友商事株式会社理事。ロシア(旧ソ連)、インドネシア、ドイツ、イラン4カ国に通算12年駐在。日本経営倫理学会常務理事(国際研究交流)。米国経営倫理学会会員。
共著:Bushido, Encyclopedia of Business Ethics and Society, SAGE Publishers, California, U.S.A. 2007、他 多数。
論文:The Japanese Model of Corporate Management、2007年8月米国経営倫理学会年次発表大会で発表、他 多数。

講演会報告
(奥島美夏、異文化コミュニケーション研究所)

元住友商事株式会社理事である講師は、ロシア(旧ソ連)、インドネシア、ドイツ、イランの4カ国に通算12年間駐在していた。現在は日本経営倫理学会常務理事(国際研究交流)も務め、近年の断続的な不況に伴って叫ばれるようになった企業の社会的責任(CSR: Corporate Social Responsibility)や説明責任(Accountability)などの指導に取り組んでいる。

現代のグローバル経済下では端的に「なぜ、ある国は豊かで、ある国は貧困なのか?」「豊かさと貧困の相違をもたらす要因は一体何なのか?」などを疑問視したくなる。天然資源に恵まれず、異文化・異文明との接触が「鎖国」を含め歴史的には非常に限られてきた日本が、なぜ1970年代以降、約40年にわたり米国に次ぐ世界第二の経済大国であり続けたのかを、池上映子はTHE TAMING OF THE SAMURAI(Harvard University Press,1997)で「日本の謎(the enigma of Japan)」と指摘した。講師はそうした日本経済発展の背景と日本企業の持続的成長の原動力を、(1)創業精神・経営理念、(2)日本的経営、(3)伝統的遺伝子の継承と異文化遺伝子受容、の3つの視点から分析した。

(1)は住友商事やトヨタ自動車などにみるように、主要国内企業の多くがかつての武家・商家などに典型的な家訓から店則・社訓へと発展した経営指針をもっており、原則として今日に至るまで貫いている。次に、これらの企業が持続的に成長するためには、(2)にあたる創業精神・経営理念などの共有、愛社精神、運命共同体としての認識と結束力が不可欠であるという。これらは終身雇用制や年功序列、企業内組合や入社式などという方法で維持されているが反対に過度な愛社精神や上下関係がヤミ残業や過労死、官製談合や天下りなどという問題となって表出してもいる。

こうした課題を解決するためには、(3)の良い伝統を維持・展開してゆくと同時に、コーポレート・ガバナンスやコンプライアンス経営の徹底によって透明性がより高く社員重視の企業へと進化してゆかなければならない。こうしたハイブリッドにして社会的責任能力の高い企業が21世紀の日本に求められているのである。


【参考】

Akira SAITO, 2007,
‘ Bushido,’ Encyclopedia of Business Ethics and Society. California; SAGE Publishers.

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写真撮影:塩澤秀樹
取材・文:山口剛

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