神田外語大学同窓会

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語学を生かすなら学ぶべし!

こんにちは、2002年に英米語学科を卒業した井上桂と申します!私は2005年1月から現在に至るまで、京都本社の人力車観光業である「えびす屋」(http://www.ebisuya.com/)で働いています。ご乗車頂いたことのある方もいらっしゃると思いますが、北は小樽店から西の湯布院店まで全国10店舗ほど展開しており、私自身は主に鎌倉、浅草の2店舗に長く携わっています。

勢いで始めた人力車のアルバイト

就職活動で受けた外資航空会社の採用試験で、最終選考まで残ったものの結果は不採用でした。理由は、社会経験の少なさと英語力のレベル不足です。悔しさもあり、リベンジするためにさっそく英語を使うサービス業でアルバイトをする事に決めました。

最初は大学にも近く、英語での接客も期待できた東京ディズニーリゾートでチャレンジスタートです。「ショーキャスト」という、舞台出演者たちの運営業務を担当することになりますが、そこは多国籍の出演者、言語が飛び交う場所ということもあり、スキルアップにはもってこいの環境でした。コミュニケーションを図ることでステップアップだけでなく、自分にとって大きな武器につながったことはいうまでもありません。

2年ほど勤務した後、たまたま求人雑誌で見つけた浅草にある人力車のアルバイトに目が釘付けになりました。これまで培ってきた武器がまさに役立つ!と勢いでディズニーリゾートを辞め、人力車の道へ進むことにしたのです。

由布院での一コマ

海外志向が強すぎた私に人力車の仕事が与えた衝撃

学生時代はただ海外志向が強く、国内旅行はおろか日本文化にさえ興味がありませんでした。ところが新たな環境では衝撃的な毎日です。乗客を2人乗せて一日中走り回るだけではないのです。どんなに疲れていても目の前のお客様に楽しんでいただかなければいけません。乗車料金は決して安くないので、相応のおもてなしが求められるわけです。

おもてなしといっても礼儀正しさだけではなく、今まで脇に置いていた「日本文化の魅力」や周辺のスポット情報を伝えることも大切なおもてなしです。日々歴史や文化、最新情報などをしっかりと頭にいれ、ご乗車いただいたお客様にご案内することで、楽しんでいただかなければいけないのです。

2005年の入社当時は「インバウンド」なんて言葉は社会的に知れ渡っていませんでしたし、殆どのお客様が国内の方がほとんどでしたので、英語のガイドの需要がほとんどありませんでした。ところが2015年以降、政府が掲げた「ビジット・ジャパン」による観光客誘致策が功を成し、外国人のお客様が急増したことで、俥夫※(しゃふ)は日常的に海外のお客様をもてなす機会が増えてきたのです。

単に日本の良さを伝えるといっても、日本人に伝える日本と、外国人に伝える日本は全くアプローチの仕方が違います。今までご案内してきた日本の名所も、外国人の立場に立ったら感じる事や、好奇心の方向が全く異なるため、改めて日本の常識・非常識を勉強する必要性を迫られましたが、これはこれで非常に良いきっかけになりました。

※俥夫とは、人力車をひくことを生業(なりわい)とする人のこと。

京都 八坂の塔を背景に

本格的にインバウンド戦略始動

時代の流れに遅れをとらないよう、えびす屋も積極的にインバウンド市場にアンテナを張って色々試みてきました。私自信、従業員の英語教育や、FacebookやInstagramなどのSNS配信、「トリップアドバイザー」など口コミサイトの積極的な導入に力をいれながら、プレーヤーとして様々な外国人のお客様へのおもてなしを磨いてきました。

その甲斐もあり、幸いなことに名だたる高級リゾートでのVIP待遇や、観光庁などの日本紹介動画作成の依頼を頂いたりと、対訪日客の方に向けたお仕事を多く頂くようになったのです。本格的に日本文化を全世界の方へ伝える「英語漬け」のスタイルへと変化を遂げました。

倉敷美観地区もお任せです!

世界のAmazonから声が掛かった!

忙しい毎日を過ごす2017年のことです。突然シアトルのAmazon本社からえびす屋に声がかかりました。内容は、「オンラインを通じて世界中をリアルに観光しながら、買い物もできる」という、世界で初めて開始された「Amazon Explore」というプロジェクトに初のエージェントとしてパートナーシップを結び、コンフィデンシャルの元、プロジェクトを進めることが決まったのです。

もちろん本格的なサービス展開までは他言できませんから、大変でしたが、何とか試行錯誤の末、2020年の9月にいよいよ販売開始となりました。

(2021年11月現在β版[テスト中]はこちらからご覧いただけます。※Amazonのウェブサイトへ移動します)

現在は人力車を引く傍ら、毎日Amazon Exploreでアメリカのお客様に対し、オンラインを通じて浅草の魅力を伝え、お買い物を楽しんでいただいています。オンラインでのご案内はリアルなお客様とのやりとりとは全く異なりますが、画面を通じて日本の「今」を切り取ってお届けするので、カメラワークや、フォトジェニックのみならず、最後まで飽きさせないトーク技術や抑揚のつけ方等が必要不可欠なんです!今は徹底的に最先端のデジタルによるおもてなしを味わっていただくために日々の練習が欠かせません。

小樽での一コマ

大学時代の私やってよかったこと・やっておけばよかったこと

学生時代に私が学んだことで今でも力になっていることは挙げればキリがないですが、一番は様々な第二外国語をとったことです。世界中の言葉に興味があったのでヨーロッパ言語から中東、アジア諸国、様々な言語を選択しました!それが現在、諸外国のお客様に自分のご案内を楽しんでもらえる一番のスパイスになっていることは確かです。

一方で、いまとなっては「あの時やっておけば良かった」ではないですが、せっかく日本の文化を世界中に発信する仕事についているので、当時豊富に用意されていた「日本文化関連」の授業を多くとっておくべきだったと思う場面に多々出会います。世界を相手に活躍している方は案外同じ思いをしているのではないでしょうか。

今後の私の夢と使命

人力車と言うちょっと珍しいキャリアの中で私自身が行きついた一つの夢は、古近現代に関わらず日本という国が作り出す限りない文化の奥深さをさらに識ること、そしてその魅力を全世界に伝えていく事です。

日本人として、日本に誇りを持ち、その魅力的な文化を存分に表現するプレーヤーはまだまだ多くありません。私の使命は神田外語大学で学んだ語学とコミュニケーションを生かして、日本人のみならず、全世界の方に改めてこの国の魅力を伝えていくことと捉えて、今後も精進していきたいと思っています。

2002年
英米語学科卒
井上 桂

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